プロローグ 潮騒の学園
――50年前。
世界は沈んだ。
原因は突如始まった大規模地盤沈下。
大陸は割れ、都市は海へ呑み込まれ、島国は次々と水没した。
高層ビル群は海面から墓標のように突き出し、かつて道路だった場所には魚が泳ぎ、人々は陸を捨て、船の上で生きる時代へと変わっていった。
だが。
人類を本当に絶望へ追い込んだのは、沈没ではない。
深海から現れた怪物――《マリンモンスター》。
巨大な魚類にも、甲殻類にも、深海生物にも似た異形の存在。
それらは海を渡る船を襲い、浮遊都市を破壊し、人々の生活圏を次々と奪っていった。
銃も。
ミサイルも。
戦艦すら。
海を支配する怪物たちには通用しなかった。
世界は分断された。
人類は海を恐れた。
誰もが、もう終わりだと思っていた。
――そんな時だった。
海の上に、“少女たち”が現れたのは。
海面を滑るように駆ける少女たち。
波しぶきを纏い、潮流を操り、怪物を打ち砕く存在。
島の魂を宿した少女たち――《島娘》。
彼女たちは突如として世界各地に現れ、人類が太刀打ちできなかったマリンモンスターを次々と撃破していった。
少女たちは海を駆け、人類の希望となった。
そして今。
広大な大海原の中央に、一つの廃校が存在する。
《島海学園》。
かつて海上学校として使われていたその場所は、今では島娘たちの拠点となっていた。
一階は海と繋がり、波が校舎へ流れ込む。
二階や三階の廊下には水路のように水が張られ、少女たちはそこを滑るように移動する。
潮風が吹き抜ける教室。
波音が響く廊下。
夕焼けに染まる水面。
そこは学校であり。
秘密基地であり。
帰る場所だった。
今日も島娘たちは笑い合う。
今日も島娘たちは海を駆ける。
世界を守るために。
仲間を守るために。
そして――自分たちの居場所を守るために。
これは。
海に浮かぶ廃校で暮らす、島娘たちの日常と戦いの物語。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




