≪四章≫連理の枝 ~邂逅~
夢をみていた。
ヒトを映す以外はほとんどが白で統一された、もの悲しいユメだ。
ここは魔術師だけが集められた場所。
“原初の門”を開くため、『転生体』をいかに効率よく使用できるかを研究している。
子供たちはまだ物心つくかつかないかくらいの年齢がほとんど。
両親に会えなくて泣きじゃくる子供たちに情など与えない大人たちは、全員が“原初”に至るための研究をしていた。
己の身体は使わず、使い捨てるためだけに連れてきた魔術師の子供たちを使って、ありもしない理屈を並べて、無駄な犠牲を延々と繰り返していた。
白い部屋に幽閉されている女の子は、とある少年が連れていた『転生体』だった。
少年は言った。
「自力で“原初”に至るなど、凡人には不可能だ。もっと効率的な方法を教えてやろう。簡単なことだ。
“魂”を暴発させ、“原初”に繋がる『門』を揺るがせばいい。
『転生体』という器を失った“魂”は“原初”へ帰還する。
その時に『門』を開かせてしまえば、己を犠牲にせずとも“原初”に届く。
ただし、殺してはならない。単純に肉体を壊すだけでは“魂”は暴発しない。
壊すのはヒトとしての精神だ」
大人たちは誰ひとりとして迷うこともなく了承した。
それからだ。
女の子の精神が崩壊するように、目の前で惨殺を始めたのは。
女の子と面識を持たせた子供をわざと活かすように殺したのも。
すべては女の子の人格を破壊して“魂”を暴発させるためだった。
けれどどれだけ子供たちを犠牲にしても門は開かず、女の子は生き残ってしまった。
大人たちは落胆したが、女の子を連れてきた少年はこう言った。
「さらに深い繋がりを創りあげよう。あの娘が真に心許した相手を虐殺しよう」
だから……男の子と女の子は出会ってしまった。
心を閉ざし、部屋に閉じこもった女の子に、その陰謀を知る方法はない。
大人たちの道具として育てられた男の子は命令されるがままに、女の子に近づいた。
ありとあらゆる知識を与えられ、あたかも施設外から連れてこられたと装って。
自分も被害者なのだと偽った。
当時、まだ十歳にも満たない女の子に、邪推するなどという考えはなかった。
そもそも、この時すでに心を殻で覆っていた女の子には、他人について考える余裕すらなかった。
気づけるわけがない。
男の子はあまりにうまく嘘を突きとおし。
女の子はあまりにも他人に無関心すぎた。
次回は12/2
22:00投稿予定です。




