↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
溺愛ハッピーエンドが欲しくて頑張ったのに、なぜか彼氏はヤンデレ化した  作者: ChaCha


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/145

私服が、眩しすぎる

カフェの扉を押した瞬間、甘い香りがふわりと鼻先をくすぐった。

焼き菓子と珈琲の混ざった匂い。

落ち着いた木調の内装に、柔らかな光。


(……人気があるって言ってたけど)


なるほど、これは確かに。


「ここ、素敵だね」


そう言いながら、私は――

無意識に、隣を見ていた。


ベルンハルト。


ローブを着ていない。

学園では当たり前だった黒の外套も、今日はない。


代わりに、身体の線がはっきり分かる私服。


さりげなく主張する胸板。

動くたびに浮かぶ、腕の筋肉。

襟元から覗く首筋。


(……あ)


視線を逸らそうとしたのに、逸らせない。


整った横顔。

さらりと流された髪。

そして――唇。


(……あの唇が)


いつも、私に触れていた。


触れる前の、ほんの一瞬の間。

吐息が近づく感覚。


(……っ)


心臓が、跳ねる。


バチッ、と視線が合った。


「~~~~~っ!」


思わず、勢いよく俯いた。


なにこれ。

なんでこんなに恥ずかしいの。


「……気に入ってくれて、なにより」


低くて、落ち着いた声。


「えっ?」


顔を上げると、

ベルンハルトは涼しい顔をしていた。


「このカフェは、人気があるらしい」


そう言いながら、椅子を引く。


(……え、今の)


気づいてた?

私が、見てたこと。


(……気のせい、だよね)


席に着くと、ベルンハルトは自然な動作でメニューを手に取った。

その仕草すら、妙に洗練されている。


(前からこんなだったっけ……)


学園では、ローブに隠れていたもの。

今は、全部、目に入る。


視線を落としても、

存在感が消えない。


(……落ち着け、私)


「何にする?」


「え、あ、えっと……」


メニューを見るふりをして、深呼吸。


(デザート。そう、デザートを楽しみに来たんだもん)


ベルンハルトは、私の様子を見て、ほんの少しだけ口元を緩めた。


「甘いものがいいんだろう?」


「……うん」


当てられて、余計に恥ずかしい。


注文を終えて、少しの沈黙。


カフェの中は賑やかで、

でも、私たちの席だけが、妙に静かだった。


(……変だな)


さっきまで楽しかったのに。

今は、ドキドキの方が勝っている。


ベルンハルトが、私を見ている。


じっと。

逃げ場のない視線。


(……見ないで、とは言えない)


だって、恋人だから。


「……さっきのことだが」


不意に、声が落ちる。


「さっき?」


「迷子の子」


私は、思い出して、微笑んだ。


「無事でよかったね」


「ああ」


ベルンハルトは、少し間を置いてから、続けた。


「……お前は、優しいな」


その言葉が、

胸の奥に、じんわり広がる。


(……褒められると、弱い)


「そんなこと、ないよ」


そう言ったけれど、

彼の視線は、変わらない。


むしろ、

さっきより近い。


(……あれ?)


距離、こんなに近かったっけ。


気づけば、

テーブル越しなのに、存在感が迫っている。


穏やかな時間。


なのに――


胸の奥に、

小さなざわめきが残っていた。


理由は、分からない。


でも。


ベルンハルトの視線が、

さっきより、離れない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。