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溺愛ハッピーエンドが欲しくて頑張ったのに、なぜか彼氏はヤンデレ化した  作者: ChaCha


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幸せになるための選択

家の門をくぐった瞬間、ふっと肩の力が抜けた。


「……ただいま」


誰に向けたでもない声が、静かな玄関に溶ける。

いつも通りの帰宅。

なのに、胸の内側だけが、少しだけ忙しい。


自室に戻り、扉を閉める。

ベッドに腰を下ろした途端、今日一日の光景が一気に押し寄せてきた。


ベルンハルトの手。

背中に添えられた体温。

離れた瞬間の、あの落ち着かなさ。


(……近かったな)


両手で顔を覆う。


「~~~~っ」


恥ずかしさをごまかすように、手で顔に風を送った。

パタパタ、パタパタ。


(最近、距離が近すぎる……)


でも、嫌じゃない。

それどころか――安心する。


(……だめだめ、考えすぎ)


私は大きく息を吐いて、机に向かった。

引き出しから取り出すのは、見慣れたメモ帳。


攻略対象者メモ。


前世で何度も書き込んだ、あのノート。


「……せっかく、素敵な恋人がいるんだから」


ぽつりと呟く。


「デート、しなきゃだよね」


学園内は、危険だ。

好感度は上がらなくても、イベントは容赦なく踏む。


だから――

お家デートか、お外デート。


安全第一。


私は、ノートを開き、改めて目を通す。


王子枠・エリック。

特進クラス。

学園のカフェ、図書館、生徒会室、裏庭のガボゼ。


(……この辺は封印)


遊び人枠・ライル。

隣のクラス。

廊下、食堂、調合室、保健室、屋上。


(全部、避けよう)


騎士枠・エルンスト。

廊下、訓練所、中庭、食堂、噴水広場。


(……うん、特に注意)


ペンを置いて、腕を組む。


「うーん……」


不思議だ。


前世の私は、

今ほど騒がしくない。


最初は、

頭の中にもう一人いるみたいで、

二重人格になった気分だったのに。


今は――

馴染んできた。


全部を思い出せるわけじゃない。

断片的で、曖昧で。

でも、それでいい気がしている。


私は、ページをめくった。


そこに、書いてある名前。


ベルンハルト。


指先で、そっとなぞる。


「…………」


胸が、きゅっとなる。


また顔が熱くなって、

思わず、さっきより強めに手で風を送った。


パタパタ、パタパタ。


(……ほんと、最近おかしい)


あのガボゼで流した涙。

ベルンハルトの、あの顔。


もう泣かせたくない。


私は、彼の名前を赤丸で囲んだ。


「……よし」


小さく頷く。


目標は、はっきりしている。


卒業式を、無事に。

ベルンハルトと一緒に。

溺愛ハッピーエンド。


(……そのためなら、ちゃんと考える)


ノートを閉じた瞬間、

胸の中に、静かな決意が落ちた。


翌朝。


馬車の中で、並んで座る。


いつもの距離。

いつもの体温。


私は、勇気を出した。


「……ね、ベルンハルト」


「どうした」


視線が向く。

逃げない目。


「週末、デートしよう」


少しだけ、間を置いて。


「……行きたい場所、あるか?」


その声が、優しくて、

胸の奥があたたかくなる。


「美味しいデザートが出るカフェ、かな」


一瞬、驚いた顔をしてから。


「くす」


小さく笑う。


「……わかった」


その一言で、

胸が、ふわっと軽くなった。


(……大丈夫)


今度は、ちゃんと選ぶ。

ちゃんと、幸せになる。


そう思いながら、

私は彼の隣で、そっと微笑んだ。


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