表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
子猫になった気弱魔導士は猫嫌いの氷の宰相に愛される  作者: はんぺん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
53/200

53話

お読みくださりありがとうございます!

 使用人たちがアイカのいる部屋になだれ込む少し前。


 精霊たちから大勢の人間がやってくると知らされたアイカは、分厚いカーテンの影で小さな体を丸め、震えながら身を潜めていた。


 果たして、それからしばらくすると、バタバタと複数の足音が近づいてきた。緊張で身を固くした彼女が、外から聞こえる音に耳をそばだてていると、とぎれとぎれに話し声が聞こえて来た。


「猫‥‥‥魔法‥‥‥捕ま‥‥‥褒美を‥‥‥」

「でも‥‥‥悪女‥‥‥反撃‥‥‥され‥‥‥」

「その時‥‥‥殺して‥‥‥喜‥‥‥」

「猫‥‥‥縊り‥‥‥たやす‥‥‥事‥‥‥」


 会話の端々に恐ろしい言葉が含まれている事を知って、彼女の顔が真っ青になる。


(この人たちは、私を捜しに来たのではなくて、殺しにきたのだわ)


 精霊たちは、この部屋にやって来るのは公爵家の使用人だと言っていた。見ず知らずの彼らから殺意を向けられる理由がわからず、彼女の心の中は困惑と恐怖で一杯になっていた。


『まさか、彼らも聖女の仲間なのかしら?だから私を殺そうとしている?それなら、彼らの主である宰相様も実は聖女側の人間で、学院長やリーラさんを裏切っていたという事なの?』


 その疑問に答えようと、一斉に精霊たちがしゃべり出した。


『あのねー、れいざっくは味方だけど、味方じゃないのー』

『あいかのこと、まだ少しだけ疑ってるのー』

『だから、きーるが怒ってるー』

『れいざっく、は宰相様の事よね。きーるは誰の事なのかしら?』

『きーるは、れいざっくの守護精霊なのー』

『あいかの事、すごく心配してるー』


 どうやらキールとは、レイザックのそばにいた白い子狐の精霊の名前のようだ。


『でも、今ここに来るあいつらは違うのー』

『あいかの事、悪い魔導士だと思ってるのー』

『子猫なら簡単にやっつけられるっていってるのー』

『だからあいかをやっつけて、お金をもらおうとしてるのー』


 どういう経緯でかはわからないが、ここへやって来ようとしている使用人たちは、子猫の姿に変えられたアイカが、この部屋で匿われている事を知ったらしい。そのため、巷に流れている彼女の悪評を信じ込んで襲いに来たようだ。


『だから、逃げなきゃだめなのー』

『あいか、早く逃げようよー』

『わ、わかったわ。でもどうやったら逃げたらいいのかしら?』


 扉も窓も閉まっているこの部屋から脱出する方法が思いつかない。


(やっぱり扉が開けられた瞬間に飛び出すしかないのかしら。でも大勢の人の間を、この体で上手くすり抜けられるかどうか)


 それに、もし仮にうまくいったとしても、この小さな体では全力で走ってもすぐに追いつかれてしまうだろう。アイカが焦っていると、不意に精霊たちが呼びかけてきた。


『あいか、心配ないよー』

『僕らにおまかせー』

『一緒に逃げるー』


 次々と姿を現した無数の精霊たちが、アイカを取り囲む。自分が一人ではない事を思い出し、彼女は少しだけ落ち着きを取り戻した。


『窓から外に出られれば良いのだけれど、きっとこの体で体当たりしても、びくともしないだろうし‥‥‥』

『そんなことしたらだめー。あいかの体、壊れちゃうー』

『僕らがあいかを外に連れてくからー』

『ちょっと待っててー』

『みんな、いっせーのせで、こわすよー』

『はーい!』


(壊すって、一体何を?)


 アイカが疑問に思っていると、無数の精霊たちが姿を現して、すいすいと窓へ向かって飛んでいく。すると、パキリと何かが割れたような音がした。


『みんな、今の音はなに?』

『結界こわしたのー』

『お外に出るのに、じゃまだったのー』


(結界を壊してしまうだなんて――宰相様に怒られないかしら?)


 得意げな精霊たちを見て不安に思っていると、今度は彼女の体が浮き上がった。


『きゃっ!』


 宙に浮いた子猫の体が、閉め切ったままの窓に向かってふわふわと運ばれていく。自分のすぐ目の前に窓が迫り、焦ったアイカが声を上げる。


『みんな、ちょっと待って!みんなは精霊だからすり抜けられるけれど、私の体では無理だわ!このままだとぶつかっちゃう――』


 制止が間に合わず窓に衝突する直前、アイカはぎゅっと目をとじて身構えた。だがいくら待っても体がぶつかる衝撃は来なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ