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18話

17話の前にこちらの18話を投稿してしまったので、再投稿です。

完全に寝ぼけていました‥‥‥申し訳ありません‥‥‥

 疑問はそれだけではない。



 一応自分は彼の命の恩人であるはずなのだが、先程から彼が感謝しているような様子は一切無く、話している間中ずっとこちらを睨みつけてくるのは一体何故なのか。



(やっぱり、私の悪評を聞いていて、不愉快に思っているのかしら?)



 アイカは彼と視線が合わないように必死に目を逸らしながら、体を小さくした。



「さて今回、君が王都の危機に立ち向かった者たちの命を救ってくれた事については、俺も陛下も大変高く評価している」


「畏れ多い事でございます」


「そこで君には褒美として、わずかだが褒賞金を授与する事になった」



 それから先は、感情を挟まない事務的なやり取りがしばらく続いた。時間にしてみればほんの数分のはずだったが、アイカにとってはもっとずっと長い時間であったかのように思えた。



「これからも王国のために励むように」



 レイザックが口上を締めくくり、褒賞金が手渡される段になったのを見て取ったアイカは、ようやくほっとして息をついた。



(良かった、これでやっと終わるのね)



 だがその時、無意識に顔を上げてしまった事で、彼女はうっかり目の前にいるレイザックと視線を合わせてしまった。



(っ‥‥‥!)



 氷のような視線に射抜かれた恐ろしさで、体が震えるのを必死に堪えながら、彼女はどうにか彼の手から褒賞金を受け取った。



 その時、レイザックは何か言いたげにしていたが、彼女は見なかった事にしてすばやく彼から離れると、俯いたままひたすら視線を合わせないようにしていた。



 明らかに自分が避けられている事を悟って諦めたのか、レイザックは彼女に何も言わないまま、モルドに向き直って一言二言会話を交わすと、一緒に会議室から出て行った。



 モルドや教師たちの案内で、レイザックが学院内の視察に向かったのを見届けたアイカは、ようやく一人きりになると、深く息を吐いて崩れる様に椅子にへたり込んだ。



(あの冷たい目。なんだか、すごく怖かった‥‥‥)



 終始冷徹な顔をしたレイザックから睨むように見つめられ、ずっと緊張を強いられていたせいで、体がすっかり凝り固まっている。



(でも、あの視線からは敵意や悪意は感じなかったわ。どちらかといえば、こちらを観察しているような、そんな感じだった。でも、それならどうしてあんなに睨まれていたのかしら?)



 首を傾げてしばらく理由を考えているうちに、ふと、ミルパの話を思い出す。



(そういえば確かミルパさんは、公爵様は大の女性嫌いだって言っていたわ。ああ、そうだわ。だからあんな態度を取っていたのね)



 睨まれていたのは女性への嫌悪感からだったのだと気づいたアイカは、ようやく納得して会議室を後にした。



 授与式を終えて心配事が無くなり、軽くなった足取りで廊下を歩いていた彼女は、せっかく図書館に来たのだから授業の課題に使えそうな資料を借りていこうと思い立ち、書架がある一階へと足を向ける事にする。



「あの、失礼ですが、学院の方でしょうか?」



 不意に後ろから艶やかな女性の声で話しかけられたのは、一階と二階を繋ぐ大階段へと向かうべく、彼女が廊下の角を曲がろうとした時だった。



「!」



 驚いて振り返るとそこには、光を弾く豊かな金髪を腰まで伸ばし、透き通った白い肌と青紫色の瞳を持つ美しい女性が立っていた。



 精緻な金糸の刺繍があしらわれた純白のローブを身にまとい、右手には王笏(おうしゃく)のごとく立派な杖を持つその姿は、まるで女神のような神々しさすら感じさせた。



「突然話しかけてしまってごめんなさい。わたくし、エリアナと申します。先程までこの学院を案内してもらっていたのですけれど、本を手に取っているうちに、うっかり案内の方とはぐれてしまったの。次は薬草園に向かうと聞いていたのだけれど、場所がわからなくて。もし宜しければ、教えていただけないかしら?」



 女性の名を聞いたアイカは、驚いて目を見張った。

お読みいただきありがとうございました!

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