17話
まちがえて18話を投稿してしまったので、あわてて削除して17話を投稿しました‥‥‥
「ここだけの話、宰相様はまだ小さいころからお忍びでここいらにはよく来ていたらしくて、ビンデルとも知り合いだって話だよ」
「ビンデルさんと?」
「なんでも、あいつがまだ鍛冶師だった頃、公爵様から直々に頼まれて、剣を作った事があるんだとか」
「まあ、そんな事が‥‥‥」
「とにかくそういうお方だから、根拠の無い噂を信じてあんたを色眼鏡で見る様な事は、きっとなさらないだろうさ。だから安心おし」
「!」
ミルパにそう言われ、驚いて目を見張る。どうやら、学院から戻って来てからアイカがその事をずっと気にしていたのを見透かされていたようだ。
「おめでたい事だってのに、浮かない顔をしていたからね。すぐにわかったよ」
他の感情と同様に、不安な気持ちも表情には出ていなかったはずだが、ミルパにはお見通しであるらしい。アイカは急に恥ずかしくなって俯いた。
「ああ、そうそう。だけどねえ、完全無欠といわれている宰相様にも、実は苦手なものがあるんだよ」
「苦手なもの、ですか?」
不思議そうに首を傾げたアイカを見て、面白がるように口元を緩ませながらミルパが告げる。
「宰相様はね、大の女嫌いで猫嫌いなのさ」
「‥‥‥あの、私も一応女性ですけれど、大丈夫なのでしょうか?」
「あははは!一応って、あんたねえ!まあ、不機嫌な顔はされるかもしれないけど、心配する事はないさ。なにも取って食われるわけじゃないんだしね!」
「はあ‥‥‥」
ミルパは、どうって事はないよと笑って励ましてくれたが、アイカはほんの少しだけ不安になった。
アイカへの褒賞金の授与は、図書館の三階にある会議室で行われた。
あまり目立ちたくないという彼女の希望に配慮して、学院長のモルドはこの時間帯だけ図書館を立ち入り禁止にして、主役であるアイカ以外で授与式に立ち会うのは彼と、身分を問わず公正な指導をする事で有名な闇魔法の教授、平民出身の薬草学の教授だけにしてくれた。
アイカたちが会議室に入室してからしばらくすると、学院の事務員に案内されて、身なりの良い一人の男性とその護衛と思しき人々が部屋に入って来た。アイカはモルドたちに倣って椅子から立ち上がると、胸に手の平をあてて深く頭を下げる。
「どうか楽にしてくれ」
凛とした若い男性の声に促されて頭を上げると、まるで精緻な彫像のように整った容貌の青年が、こちらに怜悧な瞳を向けていた。年の頃はまだ二十代前半といったところだろうか。肩先まで伸ばした青みがかった銀色の髪に、切れ長の空色の瞳。もし見かけたら一瞬で目を奪われる事は、まず間違いないだろう。
「君がアイカ嬢か。俺の名はレイザック・ロイスレント。このエーベル王国の公爵で、宰相職に就いている者だ」
アイカは黙ったままで再び深く頭を下げる。レイザックはわずかに眉をしかめた後、小さく咳払いをした。
「頭を上げていい。君の発言を許可する」
そう言われてようやく頭を上げたアイカは、深く被ったローブの下に隠れた目を伏せたままで自己紹介をした。
「ありがとうございます、宰相閣下。私は中央大陸のマルガ王国からこの国に参りました、アイカと申します」
「ほう。それはまた、随分と遠いところから来たのだな」
興味深そうな声を聞いて、彼女がローブの下から相手をそっと伺うと、やはりその顔に見覚えがある事に気づく。
(間違いないわ。この人、王都での魔物騒ぎの時にビンデルさんに頼まれて私が治療した冒険者さんだわ)
だがあの時、宰相である彼がどうして現場にいたのだろう。しかも、周りにいた騎士たちの口ぶりでは、彼も一緒になって魔物を討伐していたようだった。冒険者のような出で立ちでいたのはその為だったのだろうか?
ご覧いただきありがとうございます。
もし面白かったと思っていただけましたらブクマや評価で応援していただけると、とてもうれしいです!
どうぞよろしくお願いいたします。




