王子とか気の所為
初めてレイスについての容姿がちょっと出ました。
「はいどーぞ」
「………」
渡されたのは、確かに剣だった。
プラスチック性で、鞘付きの奴。
武器が100円(税込105円)で済まされた。
これで、何を、どうしろっていうのかなっ?
わしゃわしゃと髪を撫でてくるレイスを睨みつけた。
「馬っ鹿野郎。少年にはまだプラスチックで充分だっつの」
くそうっ!少年言うな!
空を見あげながら心の中で叫んだ。
がんばれ、私。
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「レイスの実家はここに近いのか?」
「ぶふぅっ!」
「うあ?」
例のごとく突拍子もなく聞いた緑の髪の男の発言に、帽子に髪を全て収納しているレイスと呼ばれた彼は、かじっていた水菜の茎を吹き出した。
そのレイスを疑問気に見上げるのは、明らかに玩具の剣を腰に下げるまだ若い金髪の青年。
「いきなり何を言い出すんだよショウ」
「実家が近いのか?と言った」
「それは分かっとるがな!」
「ならば、どういう意味だ?」
「そりゃ俺が聞きたいわっ!」
「ルミネ。レイスは何が言いたいのか分かるか?」
「ほぇばっ!?」
「何で本人が目の前にいるのに少年に聞くんだよ!」
野郎のみで構成された三人組はターベルマ国を出て、山を下へ下へと下っていた。
時々出て来る、蛇や熊なんかをかっさばきは食い、丸焼きにしては食い、ショウが摘んでくる野草を食い…食ってばっかのようだ。
無駄話をしながらも、着々と前には進んで行く。
いちいち止まっていたら、1日5mも進まないだろう。
「で、なんでなんだ?」
脱線した話を戻すのは基本レイスの役目。
翔は脱線させるだけさせて、更に追い討ちをかけるように脱線させる。
比較的常識的なルミネは言葉を話せない。
いくら気に食わなくても、妥協が必要なのだ。妥協が。あと諦めも。
後ろを歩く翔をやつれた表情で振り返りつつ聞いたレイスに、彼はあっけらかんと答える。
「レイスの匂いがした」
「お前は犬かっ!それとも変態かっ!」
「どうみても人間だ」
「嘘付け!ルミネもそう思うよな!」
「う」
ルミネは肯定し、レイスを指差した。
お前もだ、と。
「だまらっしゃい!」
レイスは一回り小さなルミネを見下ろし、吠えた。
後ろから、翔のトーンの変化がない淡々とした声がかかる。
「ルミネは喋っていないが」
「アホショウだまらっしゃい!」
「………」
「………」
「………」
「…やっぱいい。黙らんくていい」
「理解出来ない」
「俺もだよ、ショウ。…ていうか、まず臭いってどんな臭いだよ」
沈黙のおかげでレイスにやや冷静さが戻る。
ただ疲れただけかもしれない。
「臭いというのは冗談だ。…落ち着いてなかった、と言うべきだろう」
「ちょ…真顔で冗談言うの止めろよな。…ん?俺、落ち着いてなかったか?」
「うー?」
ルミネとレイスは首を傾げた。
言動もテンションも特に変わりなかったように思える。
「…説明が面倒だ。感ということにしよう」
「おい…」
いつもながらの無表情に言い放つ翔の言葉にレイスはため息を落とした。
まともに取り合うな自分。と自分に言い聞かせる。
無理だが。
「…今日は3月の1日か」
「話の変わりが唐突なんだよ、お前」
「レイスの誕生日だな。昨日が」
「いんや、昨日は28日だ」
「…そういえば4年に一度しか年を取らないのだったな」
「いや年は取るけどな?」
「故郷に帰らなくていいのか?」
「結局そこに戻るのかよ」
再び短い沈黙が起こり、レイスは珍しく真剣な表情を浮かべた。
空気の読めるルミネは顔を引き締める。
「そうだな。確かに近いし、帰ろっかな」
「うぇぅ!?」
割と軽いノリだった。
俺は、帰らねぇよ…とか言うと期待していたルミネはささやかな驚きとショックに同時にやられた。
この人たちにかっこよさを求めるのは無駄なのかもしれない。
「勇者のコミオンになったって、親父らに報告したほうがいいかもしれないしな」
「親父とは、アルサーダムとやらの国王か?」
「そうそう。残念な頭の癖に意外に鋭いショウなら気付いてるかもなーとは思ってたぜ」
「髪が紫だったからな」
「ぅぅ…」
「ははははは」
それはもう超軽いノリだった。
もうやだ。つきあってらんない。
心で涙したルミネの肩を傷だらけのレイスの手がポンポンと叩いた。叩いた本人の表情は、とても楽しそうだった。
ルミネは剣で切りかかりたくなった。プラスチック製だからきっと大丈夫。
…いや、今はこのやるせなさを貯金しといて、いつか一気に払おう。と天国の部下に誓った。
「それに、滅んでる国についても若干、気になる。なんか情報入るかもしれない」
若干かよ。
静かに、手だけで突っ込みを入れる。
言葉が出せないというのは不便だが、最近彼は慣れてきた。
「常に滅んでたらどうするのだ?」
「ちょ、おま…!人の故郷を滅んでるとか縁起でもないことを言うなよ!…多分大丈夫だと思うしな」
「何故だ」
滅んでる事にやたらこだわる翔。
そんなに滅んでてほしいのかよ!?
レイスは、はぁ…と本日二度目の溜め息をつき、右上に視線をさまよわせた。
「あー、勇者の墓があるんだよ、うち」
「勇者が死んでてもお祓い効果あるのか?」
「お祓い言うなって…。知らんけど、有りそうな気がする」
「気のせいだ」
「ど酷え!」
思わずレイスは足を止めた。
そんな彼を気にせずに進もうとする二人を見て、慌ててすぐに定位置に戻る。
そして何事もなかったように会話が再開された。
「…勇者の墓か。勇者の血族なのか?」
「いんや、初代勇者のコミオンの血族らしいぜ。親父曰わく」
「ほぅ…」
「結婚とかはしなかったらしいけど、仲は良かったらしいな」
初代勇者はそのままコミオンの城に居着き、その地に骨を埋めました。と。
翔は脳内で勝手に話をまとめ、完結する。
そして、うまい具合にまとまった。と勝手に満足する。
「初代勇者か…」
「確か…イトウ タクミだったかな?」
「兄と同じ名だな」
「へぇー。お前、兄貴もいたんだな」
「母親代わりのいい兄だった」
「あーそこは普通父親じゃないか?」
「そういえば…コミオンの血族ということは僧侶ということだろう?魔法は前から使えたはずでは?」
「おぉ!そういうことになるな!使えたのかなぁ。気付かなかった……まさか俺は馬鹿なのかっ?」
「さぁな」
「むー…」
興味無さそうな翔の態度も傷つくが、真剣に悩むルミネの態度が
レイスの心にぐさっと響いた。
「悩むなよ!少なくともショウより馬鹿じゃねぇって!」
「失敬な」
翔は少しだけ表情を歪ませた。
しかし、足元に生えているある植物を見て、テンションが少し上がる。
「んー。ま、じゃあ、俺ん国行くか。こっちで方向は合ってるぜ。後…2日位かな?」
「レイス!」
気付かず話を続けていたレイスとルミネは、
珍しく弾んだ彼の声に立ち止まって振りかえり、すぐに目を反らした。
「ヨモギだ。誕生日おめでとう」
「…あーうん。ありがとう」
葉がわさわさと茂ったそれをレイスに渡し、彼は真っ直ぐと目を見る。
「天ぷらがいい」
「それ俺の誕生日でもなんでもないよな」
「レイスの誕生花だ」
「自分が食いたいだけじゃねぇかよ」
「そうだ」
「何当然だとばかりに言っていやがるんだ」
「借金はもうない」
「はいはい分かりましたっ!作りゃあいいんだろ!」
三度目の溜め息を投げ捨て、再びルミネに並んで歩き出す。
「ルミネ、あいつどうにかしてくれよ」
「はっ」
「ちょ、少年!なんで鼻で笑ったのさ!」
「ががーっ!」
「痛い!痛いって!剣でつつくな!…て首は止めろ首は!」
賑やかにじゃれる二人に、翔が楽しそうに目だけで笑う。
「伊藤 与美か」
ふと初代勇者の話を思い出し、顎に手を当てる。
イントネーションの違い。
あまり無い発音だった。
「…まぁ、なんでもいいか」
やはり考えるのを放置した彼は、レイス達の後を追っていった。
"Coincidence" is a convenient word.
However, I do not think that there is "Coincidence".
更新遅くてすみません…。
読んで頂いてありがとうございます。