クラウゼ辺境伯の断罪②
「構いませんが、一体どういったことでしょうか?私にも答えられるようなことだと良いのですが。」
「そう身構える必要はありませんよ。伯爵自身のことですから。」
「……」
エリオット様の声のトーンが下がり、クラウゼ辺境伯の顔が暗くなる。
「まず、この領地の毎年の税と支出について…」
このまま、エリオット様は私が集めた資料を元に話を進める。ざっくり言えば税金による収入の割に領地運営に使われている支出が極端に少ないということを示した内容だ。
「次に…」
「ま、待ちたまえ!」
クラウゼ辺境伯が突然声を出す。
「そ、そんなのはただの言いがかりだ!大体、資料はどこから持ってきた!貴様らが手に入れられる訳がないだろう!」
伯爵は声を荒らげ、エリオット様の持つ資料を指さしながら喚く。
本性でるの早いなー。まだ序盤なんだけど。
「…おや?伯爵様、私はなにも責めている訳ではなく、ただ事実を述べているだけですよ?…もしや、何か後ろめたいことでも?」
エリオット様がわざとらしく言う。私もそんなにいい性格じゃないと思うけど、エリオット様も大概だな。
「い、いやそれは…」
「では次に、ここ最近の武器の輸出入について。」
エリオット様はそのまま話を続ける。この資料を用意したのも私で、違法な武器の輸送経路の多くにこの領地が入っていることが書かれている。まあそれだけだと証拠としては弱いんだけど…
「そして、先程部下たちに調べさせたところ、違法武器が収納された武器倉庫を発見しました。」
まさか、1時間でそんなものを見つけてくるなんて。さすがエリオット様が"第7騎士団を信じろ"と言ってただけある。
「馬鹿な!あそこが見つかる訳が…」
はい、自白頂きました。
「では、お認めになるんですね?」
「え、いや、違…先程からなんなのだ!ふざけるな!!騎士と女風情が、この私を馬鹿にするつもりか!?」
この手の人間は、もうこうなってくると理屈の通った発言は出来なくなる。そして爵位という権力にすがって泣きわめく。
でも、別にそれを必ずしも責めるつもりはない。だって爵位を利用するのは私も同じだから。
「大した地位もないくせに、私に逆らったことを後悔させてやる!」
さて、あまりにうるさいしそろそろ仕掛けるか。
エリオット様に目配せすると、エリオット様はニヤッと笑ってから口を開く。
「クラウゼ辺境伯はこう仰っていますが、いかが致しましょうか、シェルシェーレ様?」
その瞬間、クラウゼ辺境伯が静まる。
「そうね、そろそろいいかしら、エリオット。」
「な、何を…?」
クラウゼ辺境伯は何かに勘づいたのか、急に怯えた表情になる。
そう、騎士であり男爵位も持っているエリオット様が様付けして尊敬語を使う人間なんてかぎられている。
「先程はフルネームを名乗り忘れて申し訳ありませんわ、クラウゼ辺境伯。改めまして、シュバルツ侯爵家の長女、シェルシェーレ・シュバルツです。」
「な!?シュバルツ侯爵…!…そんなわけが…いや、ま、まさかその銀髪に蒼眼、"シュバルツの悪魔"!?」
これまた随分懐かしいネーミングが…
「も、も、申し訳ありませんでした!罪は全て認めますので、どうかお許しを!!私はあの者らと同じ目だけは合いたくありません!!」
そう言うと先程までプライドの権化だったクラウゼ辺境伯が、頭を床に擦り付けて土下座し始めた。いくらなんでも怖がりすぎでしょ…
まあ、とにかく罪を認めてくれそうなので良かった。




