数少ない友人①
「誰からだろう……あ!」
手紙にはこう書いてあった。
"お元気ですか、シェルシェーレ様。良かったら明日お茶でもしに私の家にいらっしゃいませんか?お待ちしております。 カトリーヌ・フランソワ "
カトリーヌは伯爵家の令嬢で、私のような変わった人間とも仲良くしてくれる、数少ない友人の1人だ。
でもその一方で、カトリーヌ本人は実に貴族令嬢にふさわしい気品を持っている。
そんなカトリーヌは、私が婚約破棄されたあとも度々手紙はくれていたけど、今回はアフタヌーンティーのお誘いみたいだ。明日は休みなのでちょうど良い。
さて、お返事の手紙を書こう。
"ぜひ!明日を楽しみにしてるね! シェルシェーレ・シュバルツ"
…短すぎ?
でも伝書バトの手紙って他の封筒付きのしっかりした手紙より適当なこと多いし、ただアポイントが取りたいだけだしこれでいいか。
私がハトの足に自分の手紙を結びつけると、ハトは勢いよく飛び立って行った。
―――
「シェルシェーレ様、いらっしゃいませ!」
「カトリーヌ、久しぶり!」
翌日、私はカトリーヌの家であるフランソワ伯爵邸にお邪魔していた。
カトリーヌはハニーブロンドの髪をなびかせながら、透き通るような蒼い眼を細めて笑いながら迎え入れてくれる。
「ささ、こちらにお座りください。」
「ありがとう」
私は促されるまま椅子に座った。目の前のテーブルには美味しそうな紅茶やお菓子が並んでいる。
「それで、魔法研究所の方はどうですか?」
「先輩達にも良くしてもらってるし、仕事も色んなことができて楽しいよ。」
「それは良かったです。…その、特別何かされたりとか、そういうこともありませんか?」
「…?特にないけど…?」
「…それなら良かったです。」
なにやらカトリーヌの歯切れが悪い。
「ん?何かあったの?」
「いえ、その…1つ、あまり良くない噂がありまして…」
「噂…?どんな噂?」
きっと、オスカル殿下が婚約破棄したのに私から破棄を申し出たことになっているとかそんなんに違いない。
「それが…"シュバルツ家の令嬢が、オスカル殿下に無理やり魔法研究所に入所させられて、そこで除け者にされていじめられてるらしい"って…」
うーん?
「それはないよ。魔法研究所行きたいって言い出したの私だし、オスカル殿下はどちらかと言うと阻止しようとしてたし。」
「そうですよね?いじめられてたりもしないですわよね?」
「少なくとも直接的なのは無いよ。…裏で悪口言われたりしてる可能性は無くはないけど…」
「それなら問題無いと思いますわよ?だってシェルシェーレ様に聞こえないように悪口を言う方が難しいですもの。」
「確かに、影で悪口を言っているなら、1回くらい私の地獄耳を知らずに聞こえる範囲で言っていてもおかしくないもんね。」
「はい、そういうことですわ。」
「それにしても、ちょっと拍子抜けだなあ…もっとこう、私が悪者にされてると思ってたんだけど…」
「あら、それは大丈夫ですよ。オスカル殿下が婚約破棄を言い渡したことはその場にいた方達が吹聴して回っていますし、オスカル殿下が"アホ皇子"なのは周知の事実ですから。」
言っちゃった、言っちゃったよこの人。私ですら思いこそすれ口には出してなかったのに。
「あはは…」
カトリーヌって、すごい可愛らしい雰囲気でいて結構サバサバしてるんだよな…まあそこが良いんだけど。




