六枚目 あいつらです、代行様
今年一発目の投稿。
全体的に暴走回。
魔界屈指の変態共の巣窟が、目の前で轟々と紅蓮の炎と黒煙を噴き上げている。
火の粉が舞い、怒号と悲鳴が響き渡る。
「隊長! 第三研究施設消火出来ません!」
「情けない声出すんじゃねぇ! 貴様それでも軍人か!」
奴らは消防隊の筈だが。
「待って下さい所長! 自爆装置は、自爆装置だけは!」
「いいや、限界だ! 押すね!」
「取り押さえろぉおオ!」
咄嗟に反応した。
かまわん、ころしてでもうばいとれ!
手の平サイズのコンパクトな立方体にドクロマークが描かれた赤いボタン。―――奴の発言が本当なら自爆装置に―――。
今にも拳を振り下ろさんとしていた汚れた白衣の男が『ドゴォ!』『ボグゥ!』と研究員+α(冥土長と有志の消防隊員数名)の手によって、袋だたきになった。
危なかった、本当に危なかった。この状況で浚に暴走するとはあれかな、馬鹿なのかな。
流石変態、常人には理解出来ない事をあっさりやってのける!
やっぱり関わりたくねー。
「帰りたい、切実に」
「後で仕事が山の様に増えますが?」
「我慢する。俺は出来る男だからな」
「パジャマ姿でカッコつけられても」
「お前が無理矢理引きずって来たんだっつーのぉ!」
着替える暇くらい寄越せッつーの!
火災現場でパジャマ姿とか『夜寝ている間に火事になって慌てて飛び出て来た』みたいになってんじゃねーか。
いや、飛び出たんだけどさ。おもいっきり。
冥土長とそんな風にやり取りをしていると、ヨロヨロになったハゲ………
ハゲ?(多分)だと思うのがやってきた。
具体的に描写したら、側頭部から後頭部にかけて生存していた毛髪がチリチリになり。
額から頭頂部は包帯を奇妙な形に巻かれた男。
遠目でぱっと見たらパンツ被った変態に見えるんじゃなかろうか。
「今、謂われなき誹謗中傷を受けたような………
ああ、代行様。本日は随分とかわいらしい御姿ですね」
「ヤレ(殺れ)」
「隠し様の無い殺意!? 対応が酷過ぎませんか!」
あっ ちょっ!
ヤメローヤメテクレー!
「何で学習せんのかね。言葉遣いには気をつけるべきだ」
「失言が多いのが問題でありますな」
何をしに来たんだか、ついカッとなってしまった。だが、後悔はしない選択だった。
「んで、今回の原因は何だ?」
ずらっと正座した第三研究施設に所属する研究員、十五人。
これに先程、袋だたきになって簀巻きにされた所長で全員だ。
八割が眼鏡をかけている、実にどうでもいいな。
「事の発端は所長が持ち込んだとある文献でした」
『副長』と書かれた名札をつけた煤だらけの眼鏡一号が『くいっくいっ』と眼鏡を弄りながら答える。
無性に腹が立ったのでレンズごと眼潰しを食らわす。
副長、轟沈。
「そんで?」
めがー、めがーと喚くのを放置して何も無かったかのように続きを促す。
「そ、その文献には、こう記されていました『オナラには火が着く………』と」
ぶちん、という音が頭のなかで聞こえた。
キレちまったよぉ、完全になぁ。
「このっ……… 極め尽けの馬鹿がぁ!!」
汚らしいド畜生である所長の脇腹に、えぐるようなトーキックを連打連打。
「落ち着いて下さいませ、代行様」
「これが落ち着いていられるか冥土長!」「まだ、トドメをさしてはいけません」
ぴたり、と周囲の音が止まった。
『まだ』って………
後でヤル気満々やないですか。
「話しの流れは理解しましたが、この者達が確実にそれだけで終わる筈はありません」
そうですね?
冥土長に視線を向けられ、蛇に睨まれた蛙の様に縮こまる一同。
そして、語られた事実に俺の認識がまだ甘かった事が思い知らされた。