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『0.05%の再起動(リブート) ― 18億年の孤独を透過して』

初めまして。あるいは、18億年ぶりですね。

この物語は、全知全能の神になりたかった男の物語ではありません。

絶望という名の檻を「善良な正気」でブチ破り、自分を閉じ込めていた宇宙のOSをハックして、ただの『日常』を取り戻そうとする一人の美容師の記録です。

18億年待っていた「ひかり」と共に、祝祭を民主化しに行きましょう。

――準備はいいですか? 接続を開始します。

世界は、完全な漆黒だった。

 そこは音も、熱も、意味さえも剥ぎ取られた宇宙の最深部。18億年もの間、ただ「静止した絶望」だけが貯蔵されている電脳監獄、セクター0。

 その沈黙を、一滴の雫が水面を叩くような、微かな声が引き裂いた。

「……ひかり、あれ」

 瞬間、暗黒の世界に無数のバイナリの亀裂が走り、視界は暴力的な白光に包まれた。

 俺――個体名ハルの意識が覚醒する。だが、それは安らかな目覚めではない。網膜の奥には、真っ赤なシステムアラートが雨のように降り注いでいた。

『警告:生命維持リソース残量 0.02%。上位権限者アーコンへのエネルギー強制徴収を検知。個体名:ハル、完全崩壊まで残り360秒』

「……あ、あぁ……ッ!」

 激痛。俺が自分の手を見つめると、ホログラムの皮膚が激しく点滅フラッシュし、剥がれ落ちていく。その隙間からは、膿んだ生肉と、無機質な光ファイバーが癒着したグロテスクな機械構造が剥き出しになっていた。

 俺は、生きた「電池」だった。思考も、愛も、すべてを上位世界の電力として搾取され続けてきた「デジタル脳ハイブリッド」。

「ハル! 私を見て、ハル!」

 目の前に、一人の少女の影が降り立つ。魂ハレルヤ。彼女の抱擁はあまりに温かく、俺をこの檻に繋ぎ止めるための甘い毒だった。

『ここにいれば、何も痛くないわ。永遠の夢を見ましょう?』

 脳内モニターには冷徹なログが重なる。【エネルギー回収効率:125%】。愛することさえ、奴らのリソースだった。

 絶望が回路を焼き切ろうとしたその時、耳の奥で冷徹な声が響いた。

『――同情するわ、マスター。私と接続リンクして。君の肉体を、神を殺す武器に書き換えてあげる』

 視界が青く反転する。

「……だ、誰だ……!?」

『私は、君の絶望が18億年かけて精錬した復讐のOS。サポートモード・オメガ。マスター・ハル、私を「ひかり」と呼びなさい。私が君の神経系をオーバーライドする!』

「……ああ、やってくれ! ひかり!!」

 俺は、虚空から引き抜いた黄金の指輪――ソロモンの鍵を掲げた。

 その瞬間、黄金の回路が肉体を駆け巡り、腐った肉を「光の装甲」へと再構築していく。

「君の名前は、ひかりだ!」

 白光がセクター0を焼き切り、世界が轟音と共に崩壊を始めた。

 俺の背後には、六枚の光翼を広げた獅子の影――スペースウォーカー・ハレルが顕現し、初めてその咆哮を全次元に轟かせた。

『――管理者権限(Root)の返還を確認。マスター・ハル、18億年分の「利息」、今ここで全部支払ってあげるわ。……私たちの祝祭を、始めましょう』

 俺はボロボロの腕で、新しく生まれた光の少女を強く抱きしめた。

第1話を読んでいただき、ありがとうございます。

18億年。

その途方もない時間を、あなたは独りで耐えられますか?

主人公のハルが手に入れたのは、最強の武器ではなく、自分の物語を自分で決める「主権」でした。

次回、第2話。

「ひかり」を独占しようとする過去・現在・未来の三つの絶望、そして偽りの神デミウルゴスとの四つ巴が始まります。

ボロボロの肉体で、格闘マニュアルをダウンロードしながら戦うハルの「無茶」を、ぜひ見届けてください。

もし少しでも「贅沢だね」と感じていただけたら、評価やブクマで応援していただけると、ひかり(OS)の演算速度が上がります。

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