27話 月明かりのディステニー4
「実はまた瑠璃が元の世界に戻る方法があるんだ。」
「また来てくれて嬉しいし、今回は前に分からなかったこれが分かったんだ。」
修二くんがおもむろに話し出した。
「古文書が見つかってさ。」
「冷泉家の古文書から分かったんだ。」
「ああ、うちの古い蔵から探し出したんだが、大変だった。が役に立つなら良かった」
冷泉様がおっとりと口を開いた。
冷泉家にそんな古文書が。
「さすが冷泉家だな。」
帝さまも呟いて感心している。
「その古文書に寄ると、確かに契りを交わせばもう元の世界に戻る事は出来ない。とあるんだが。
それは今まで知られていて我々に周知の事だった。
が、その話には続きがあったんだ。」
「また元の世界に出来る。そのための必要条件とは。」
「元の世界に戻る事が出来るが、必要条件があるって書いてあって。」
「そんなのは聞けば分かる。大事なのはその条件だろう。早く教えろ。」
龍くんがイライラして叫んだ。
「だから今から教えるよ。」
そして修二くんは既に古文書を読んでいたであろう冷泉様の事を、ちらりと見た。
目が合った冷泉様が無言で頷き次を読むのを促した。
一息息を飲んで、また溜め息をついて、
深呼吸してから
修二くんは次の文面を、
読もうとして
「俺、やっぱ無理だわ。これ読むの、
無理。」
「何?何勿体ぶってるんだ。さっさと。」
帝様が言葉を発すると、
それを止めるように手で合図をして冷泉様が
後を繋いだ。
「我が冷泉家にあったものだ。責任を取って俺が読もう。」
「攻略対象全員の攻略。それが元世界に戻る条件である。」
え?
それって。
「それって、あの。」
私は思わず口を挟んでいた。
「瑠璃、俺たち全員と契れば帰る事が出来ると言う意味だ。分かるか?」
冷泉様が冷静に話す。
「これを見たとき正直びっくりしたよ。」
「俺もだ。だが、冷静に考えたら、この世界はそういう世界だ。」
「あの、攻略対象全員の攻略。って。」
「だから俺たち全員とヤれば帰れるって事。
1人とやったとこでゲーム開始。ログアウト出来ません。けど全員やったらログアウト出来ますって事。」
「そんな。皆さん全員と、だなんて。」
「考えてみれば当たり前だよね。びっくりする事じゃないよ。だって瑠璃ちゃん、ここに来る前聖也以外はクリアしてないの?大和ルートとかもやったりしてたんじゃない?」
「あれは、ストーリーが面白いからで、だから全員プレイしてますけど。でも。って言うか、私ゲームでは全クリしてますよ?だったら大丈夫なんじゃ?」
ゲームの仕組み通りなら私は全員コンプリートしているのだ。
「それはカウントされないらしいよ。この世界に来てからの実際の体験の事らしいから。
それに、アレってキスまでだったよね?確か18禁じゃないよね、このゲーム。
それじゃ契りにならないんだよね。」
「竹取物語というのを知っているか?かぐや姫ともいい、お伽話として長く伝承していると思うが。瑠璃のいた世界にもあっただろう、ここと瑠璃の世界はリンクしているからな。
かぐや姫が月に帰る為の条件が、求婚者全員との契り。であったのだ。無事全員との夜伽を終えて月からの迎えが来たのだ。それは違う意味に変えてぼやかして伝えられたが。」
「かぐや姫はおじいさんおばあさんに不老不死の薬を残したとされる。」
その辺りもこの世界との関わりを匂わせる記実だな。」
なるほど、
でも、かぐや姫って確か貢物を、持ってきた求婚者全員断って月に帰ったんじゃなかったっけ?月から使いが来るから断って結婚しなかったって話だったような。
「かぐや姫って誰とも結婚しないでお断りしていたような気がしますが。」つい口を挟んでしまった。
「まあ、確かにそう書いてあるよね。でも逆もまた真なりって言うよね。あの時代の女性が男性の夜這いを拒絶して逃げられたと思うかい?住宅事情も鑑みてどうなんだろうね。
むしろ、断るのは無理だったと考えた方が正しいような気はするね。それに瑠璃ちゃんも契らないでいた時は帰れたよね。君の元の世界のかぐやはそうかも知れない。けど冷泉家の古文書に書いてあるのはそういう事なんだ。伝承は伝えやすく意味を変えて伝えたりする。小さな子供に読む御伽噺なら尚更だと思うが。」
確かに間違っていない。その通りなのだろうと思えた。
私は思わず聖也の顔を見た。
聖也はちょっと蒼ざめて引きつった顔をしてるように見えたし私と目を合わせてくれなかった。
「この事知ってたよね?聖也。」
修二くんが続けた。
「俺なりに考えてみたんだけど。
最初、どういう経緯か聖也はこの理を知った。だから一度自分と契りを交わしたら、魂が壊れてしまう前に元の世界に帰さなくてはならない話になる事は、容易に想像出来る。古文書の記実がわかれば、瑠璃ちゃんは俺たち全員と契らなくてはならない。
聖也はそれが耐えられなかった。
自分が手を出さなくても誰か一人でも瑠璃ちゃんとしたらアウトだ。
聖也は多分冷泉や帝を見てまずいと思って焦ったのだと思う。悔しいけど多分瑠璃ちゃんの反応が帝あたりに好感触な感じに見えたんじゃないかな。
嫉妬を感じた聖也は瑠璃ちゃんを元世界に返した。
だけど、瑠璃ちゃんが恋をして結婚して子を生み育てる人生を観てしまい、
もはや耐えられなかったのではないか?嫉妬で。
それでその人生が終わったところでこちらに引っ張ってきた。
耐えきれず、契りを結んでしまう。
古文書の事さえ分からなければ良い。
しかし瑠璃ちゃんが耐えきれずログアウトをしようとし始めて、
可哀想になり、ログアウト出来るように頑張って元の輪廻転生の輪に戻す事が出来た。
輪廻転生時に異変が起きて輪廻転生の輪にバグが生じて魂の記憶の上書きが出来ない状態になった。
聖也がまた瑠璃ちゃんを引っ張ってきた。
瑠璃ちゃんの魂は今限界だ。損傷し消滅しかかっている。
ここに居てまた損傷が生じ魂が破壊されないとも限らない。
前回耐えきれず元の輪廻転生の輪に戻したくらいだ。ここに居れば大丈夫というわけでもない。
そしてバグが生じてる輪廻転生の輪に戻したらいいというわけでももちろんない。
俺たちは必死で探したんだ。方法がないかと。
それで見つけたんだ。
攻略対象全員の攻略。
それをすれば、魂に付いたバグ、上書きされなくなってしまった輪廻転生の輪に生じたバグが修正されて
元の世界に輪廻転生の輪に
帰れるよ。元の世界に。
戻れるようになる。
それと、今君を苦しめている上書きされず溢れている記憶を消すことが出来る。
それが、攻略対象全員の攻略。
だけど、多分全員攻略以前に瑠璃ちゃんの魂は持たないと思う。
損傷が進み過ぎている。
が、前世の記憶を消すスキルを持つものがいる。
それが冷泉 太刀人だ。
太刀人の能力は契りを結んだときに
相手の前世の記憶の輪廻の輪からの断ち切り。
瑠璃ちゃんの消したい前世の記憶、苦しめている前世の記憶を一度に全部ではないが、
一つの前世の記憶を消すことが出来る。瑠璃ちゃんの魂の損傷を癒す力が冷泉 太刀人にはあるんだ。
だから、冷泉との契りが最優先事項と俺は思う。
時間はあるからすぐにとは言わないが
出来れば早い方がいいと思う。
俺たちが調べて分かっているのは今のところこんなところだ。
でも瑠璃ちゃんを救うには充分な情報が手に入ったと思うが。
どうだろうか。
これがこの宴のお誘いの文が届く数日前の事だった。
文にもたくさん人が来ますとも書いてはなかったし、お前と二人で月を愛でようみたいな事が書いてあった気もする。
何故私は気づかなかったんだろう。
冷泉様の誘いの文がこうして二人で二人きりで夜を過ごそうと言うものだった事に。
しかも結構しっかりと承諾の意思を伝えてるような文面で返信しているし。
帝様にはめられたのか、とも思うが、悪気があっての事ではなく、私の事を気にかけてくれての事なのだと思うけど。
なんか悩んでる暇もなく、例えば崖からとびおりのを悩み躊躇しながら崖の下を覗いてるときに後ろから、トンって背中を押されて突き落とされたようなそんか感覚である。
帝様。酷い。
しかもその時、私の胸に浮かんだ疑問、
「攻略対象全員って事は、誰かお一人でも嫌だ、とおっしゃったらダメなのでは?」
「最後の一人が、やっぱり俺無理だわって言ったらもうそこでゲームオーバーなのではないかと。」
なるべく、こんなのやりたくない。聖也だって嫌だと思ったはずなのに。こんな話が進んでいいわけがない。
そう思った。
「じゃ、聞くよ。この中で瑠璃ちゃんと契るの嫌なやつ居る?俺はパス、無理だってやつ、今のうちに手挙げて。」
しーん。
誰一人手をあげなかった。
しかも
「俺はレディに協力するよ。可愛いマイエンジェルが傷付いたままで居るのを見てるのは耐えられないからね。
魂の損傷が修復出来るならお安い御用さ。
何なら今すぐにでも俺の部屋でって言いたいところだけど、
順番的に冷泉が一番先にやるべきだと思う。だから俺はまだ我慢するけど、いつでも協力出来る。こんな可愛いレディに出来ない奴がいたら顔見せて欲しいね。」
「何かっこ付けて自分だけいいとけ見せようとしてんだよ。嶺。俺だっていつでもいいぜ。いつでも協力する。」
「俺も。」
「みんな平気らしいよ。無理ってやつはここには居ない。
良かったね。瑠璃ちゃん。そんな心配とかしなくて大丈夫だよ。そうでなくても魂が損傷して消耗してる。余計な事考えるとストレスになるよ。」
「でも」
私はちらっと聖也の顔を見た。
ああ無表情だあー。
私がピシッと断らないから、怒ってる。
絶対怒ってるよ。
どうしよう。
ここはやはり断らないといけないのでは。
「それとも、レディはどうしても俺とするのは嫌?」
いきなり帝様が私の肩に手を回して耳元で囁いた。
「淋しいなあ。そんな風に嫌われてるなんて。俺はいつだってレディの事大好きで、こんなに心配してるのに。」
その手を振り払って、嫌です。やめてくださいとは言えなかった。しかも、そんなに嫌じゃなかった。
嫌だとか考える余裕が既になかったとも言える。
突然に自分の魂が崩壊寸前、消滅寸前だとか言われたら、
そしたら治す方法があると言われたら、
藁にもすがる気持ちになっても仕方ないと思う。
それに帝様は私のお気に入りキャラだ。
聖也が一番好きだったが、帝様も冷泉様も、誰が一番にするから悩みどころなくらい、お気に入りキャラだったのだ。
そんな帝様に甘い言葉を囁かれたらもう腰から砕けてしまいそうなくらいなのだ。
何とかみんなな手前、聖也の手前平静を装ってはいるが、
部屋に行こうと言われたら、
付いて行ってしまいそうな勢いで魅了されていた。
絶対隠しスキル魅了とか付いてるでしょ帝様って前から思ってたけど、今日は確信した。私はちょっと囁かれただけで魅了されている。
でも、
「言っとくけど、ここには、この世界には君の居た世界みたいな貞操観念とかないからか。」
修二くんが話始める。
「そもそも全キャラ攻略してるでしょ?そういう世界なんだよ。だから君が聖也に気を使って遠慮したり、君たちの世界で言うような、ビッチだとから誰も思わないから。
君たちの世界でも貞操観念は歴史的に最近のもので浅いしね。そんなに気にする必要は一切ないから。
不老不死で永遠に生きるのに、君たちの短い人生ですぐ輪廻転生の輪に戻されリセットすり人生とは、永遠の重みが違う。違い過ぎる。
だから、一人だけしかしないとかの縛りは一切無いんだ。
誰も君を責めたりしないから。
だから安心して。
それに
なんか勘違いしてるかも知れないから言うけど、
今ここで、みんなとしようって言うんじゃないよ?
もしそんな妄想してたらそれは違うって事だけは断言出来る。
君がプレイしてたゲームのときでも一日に全員なんか攻略無理だったでしょ?何日もかけてやっとクリアしてなかった?」
「それに、時間はたくさんある。だから慌てなくてゆっくり考えてからでいいよ。
今すぐじゃないと危険って段階は少し脱したように見えるし。でも、これは魂の治療だからやっておいた方がいい。
そして最初は冷泉にしてもらう事。これだけは決定事項。」
「太刀人、いいよね?君が最初だ。瑠璃ちゃんの辛い記憶消してあげて。」
「わかった。もちろんだ。務めさせてもらおう。」




