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20話 帰還

それは突然に起こった。


「ねえ、ママ、ちょっと来て。」

可愛い声が聞こえる。


「何、ママ忙しいのよ。手が離せないの。お姉ちゃんならわかるでしょ。」

若い女性の声。


っ。苦しい。

何これ。


息が。息が出来ない。


身体が何か重いものに押し付けられて動けない。


というより体が動かせない。


ここどこ?


っていうかなんでこんなに苦しいの?

私死ぬの?


やっと?


っていうか死ってこんなに苦しいの?

嫌だ。


助けて。


助けて、聖也。


私どうなって。

一体

どうして。


必死になって、

なんとか


なんとか

声をあげた。


助けてって言ったつもりだったけど、


ぎゃーって声がか細く出るだけ。

だめだ。助けも呼べず

死ぬんだ。


死にたいとか思ったから罰が当たって。

あんなにやさしくしてくれた聖也はどう思うだろう。

私が不老不死の世界なのに反して死んでしまって


ずっと守るって言ってくれてたのに。

泣いてくれるんだろうか。


それに

誰?


必死で叫んでる。

少女のような声。

「ママお願い、早く、早く来て。」


「聖羅が」


「聖羅がおかしいよ。なんか凄くおかしいんだよ。お願い!ママ。」


「もううるさいわね。妹の事見ててねって言ったでしょ。お姉ちゃんなんだからちゃんと見ててって。」


「だから見てたらおかしいの。」

もはや少女の声は泣き声だ。悲痛な叫びになっていた。


「もう何、仕方ないわね。」


かつかつと人が歩いてくる音が聞こえて、

私は苦しくてそのまま気を失った。


気が付くと手が痛くて、頭も痛い。


口に何か当てられている。


そして、


「気が付きました。息を吹き返しました。良かった。」

という声。


天井は白い。

そしてなんか白い人が私のことを見下ろしていた。


そっか。

白いのは医師?

白衣を着ているからか。


そして自分の手をみると


ちっさ。

小さな手に点滴の管?のようなものが付けられている。

これって。


そうか。もしかして私


口に付いているのは何か酸素マスクのようなものだろう。

息が出来る。息が美味しい。

いや、違う空気が美味しい。酸素が美味しい。


「よかった。先生ありがとうございます!」

涙声だが、あれはさっき、ママとか呼ばれていた女性の声。



私は転生していた。

小さな手は赤ちゃんの手だった。

私は赤ちゃんに戻っていた。


ママを必死に呼んでいたのは私の姉の少女。私はうつぶせになって息が出来なくなり窒息する寸前で死の間際だったらしく奇跡的に命を取り留めたらしい。


姉である少女の必死の活躍で。


というかその姉が私のことをこの世界に呼び戻したのだという事を

10歳になったとき知ることができた。


姉があの『王子様LOVEキュンレコード』をプレイしていて、たまたま様子がおかしかった赤ちゃんでうつぶせ寝で苦しんでいる妹に気付き、ログアウトして、(ログアウトしたのは、ゲームをしていたのはママに内緒で宿題をしているという約束だったからゲームで遊んでいたのがバレないように咄嗟にログアウトしただけらしくたまたま偶然だったらしいが)母親を呼びに行ったという事があったらしい。


多分だけど、その赤ちゃんだった人は死んだのだ。

死んでしまったその瞬間に私はログアウトして、そしてその偶々空いていた肉体に魂が入ることが出来た。

本当に偶然が重なったから戻れたのだ。この世界の輪廻転生の輪に。


そして赤ちゃんだった私は意識を取り戻した瞬間に一切の記憶がなくなり、普通の赤ちゃん、そして普通の子供として生きてきたのだ。


10歳のあのときまで。


そう姉が遊んでいたゲーム機がおさがりになって、姉は最新のゲーム機を親に買ってもらったから私にもう要らないからあげるねと言って私にあのゲームをくれたから。


『王子様LOVEキュンレコード』を。


そして私はそのゲームをロードしログインした。


そこには

思いもしない予想だにしない言葉が羅列されていた。


・・・瑠璃ちゃん。僕の愛する瑠璃。今あなたがこのゲームを開いたという事は

成功したのだと思います。あなたを輪廻転生の輪に戻すことができたと。

あなたを元の世界に戻すことが出来たのだと。

この言葉があなたに届く確率は低く二度と気持ちを伝えることもこの言葉を読んでもらえるかも分からないのですが、ここに置いておきます。


あなたをこの世界に閉じ込め不老不死の身体不老不死で未来永劫生き続けるという理に縛り付け苦しめてしまったこと謝らせてください。


私は取り返しがつかないことをあなたにしてしまった。

あなたを永遠に自分のものにしたい。

あなたを自分の元にずっと置いておきたい。

ずっとあなたと居たい。離れたくない。

そう思ってしまったこと。

そしてその欲望にあらがえず、実行に移してしまったこと。

それは謝って謝り切れるものではなく、

償う事も出来ない事でした。


あなたが元の世界に帰るのをあきらめ、私のことを愛し一緒にいてくれる決意をしてくれ、そしてそれを実践してくれたこと

感謝しています。


あなたがこの世界に、不老不死に飽きてしまわないように、他のメンバーも気を使って

力を貸してくれました。


あのようなことをしたのも彼らなりに良かれと思ってしたこと、悪気があってしたのではないのです。


私もあなたをずっと愛しているから、焼け付くような痛みを感じることもありました。

でもあなたの事が本当に好きで好きで愛していたから


でも一番つらかったのは


あなたが


ログアウト出来る手段がないか

ということに気付いてしまい


ログアウトボタンを無意識に探していたこと。

あなたがログアウトを望んでいるのに気づいてしまった


そのときが一番つらかった。


ログアウト出来る可能性はひとつ。


ログアウトボタンを押してもらい

偶然その場所に

転生出来る肉体が存在している事。


その可能性は宇宙の星の中からたまたま一つ見つけた星に文明が存在して人類が住めるくらいに

低い。


海岸を歩いていて砂の中からたまたま存在した砂金を探すくらいの可能性。

元々海岸に砂金が存在しない可能性もある。


その一瞬のチャンスが起きて

その一瞬にあなたに帰還の意思が存在したときのみ


あなたは元世界の輪廻転生の輪に戻ることが出来るのです。

そのような起きる可能性がものすごく少ないもしかしたらどんなに待っていてもそんなことは起きない、むしろ起きない可能性のほうが大きい。

それを期待して待っているのでは辛すぎるので私たちはあなたに告げることがしませんでした。


でももしあなたにその事象が起きたなら瞬時に元の世界に戻ってしまうので

さよならを言う事も許されないのです。


お別れの言葉も告げず突然にあなたはこの世界から姿を消したはずだ。


あなたが突然いなくなってしまい私は絶望している事と思う。

今これを書いているときはあなたが存在しているときなのですが

想像しただけで


涙が止まらない。


でもあなたがそれを望んでいると知ったから


私は少しでも偶然にかけあなたを元の世界に戻せるように

尽力することにしました。


私の力でなんとかこのゲームをプレイしてくれる人を増やし

あなたを元世界に戻す手助けが出来るように。

このゲームをプレイしてくれる人がいなくなり、ゲーム自体がなくなってしまったら

完全に元の世界とのつながりは消えてしまう。

ゲーム機がどんどん新しいものに代わっていくたびにその危険性が高まる。

だからなんとか新製品のゲーム機が出たら移植してソフトをだしてもらえるように

新曲を出したりボイスを入れたり

しています。

なんとかあなたのことを戻せるように尽力したい。

出来る限りのことをしたい。


だから最近あまり二人の時間が取れなくてごめんなさい。

あなたを返してあげたかった。


だから仕事を増やしていました。


本当はあなたを手放したくない。

ずっと一緒に居たい。


でも

毎日

ログアウトボタンを探し


そして失望しているあなたをみているのは辛すぎる。

このままではいずれあなたの魂が壊れてしまう事にも


なりかねない。


私はあなたのことをずっと守ると約束しました。

魂が壊れるようなことにはしないと。


だから

あなたがきっと

元の世界に戻れるように


尽力します。

本当は別れたくない。


愛しています。

私はずっとあなたを忘れない。

忘れることなんかできない。


ずっと愛しています。

そして

私と出会ってくれて

ありがとう。


もし

私のことを思い出してくれたら



愛しています。


聖也


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


いきなり現れた文字の羅列。

これは手紙?


うっ。

いきなり眩暈がして

眩暈なんかする10歳の少女なんか聞いたことないけど。これは貧血ってやつかな?良く校庭で校長先生の話のときに倒れてる人がいる。あれかな?

頭、痛い。


なんか難しいこと書いてあるゲームだな。いきなり。こんなのお姉ちゃんやってたんだ。

とか思って

頭痛が酷くて

う、倒れる。

ゲームばかりしてるからってお母さんに怒られる。


って


思った。


意識が遠くに


と思った途端に


思い出した。

 走馬灯のように


全部、今までの全部の事が頭に流れてくる。


私がゲームの世界に行ったこと、戻ったこと、また行ったこと


死んだこと


戻れなくなったこと。


そして


優しい笑顔。


このゲーム最近移植されて

ずっとやってる人いなかったけど、


またプレイしてる人が増えてきてるって

確かお姉ちゃんが言ってた。


中で頑張ってくれていたんだ、

聖也が。

私をこの世界に戻すために。


きっと辛いのに。

そして

私はありがとうとお礼を言う事も、さよならと別れを告げることもなく


こっちに戻ってきてしまった。


のか。


気が付くと

泣いていた。


涙があふれて止まらなくて


物凄く聖也に会いたい。


会いたいよ。

あんなにやさしくしてくれたのに。

私。


ごめんなさいって言いたい。

ログアウトボタンを探してたこと知ってたんだね。

私一言も言わなかったのに。

気付かれてて

傷つけてた。




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