12話 明かされた事実
私がこの世界に来た歓迎のダンスパーティーを開催してくれると言われて、でも私は踊ったこととかないから、昔高校の体育の授業でワルツと踊る練習したけど、凄く難しくて、男役と女役交代で練習するのだけれど、私が男役の時に組んだ女の子の腰に手を回したらおなかに贅肉がタプタプしていてなんだか触ってたら気持ち悪くなってしまってそれ以来ダンスは苦手なのだ。ウエストに乗ったタプタプの余り肉が気持ち悪くて、なんでこんなに余分に肉付くほど太ってるの?ってそのときもちろん言えるはずもないが気持ち悪くてそれ以来ダメになってしまったのである。練習に気が入らなかったせいもあり、全くといってステップを覚えきれず、しかもリズム感があまりなくてうまく踊れなくて。
という経緯があり私はダンスが踊れないのだ。踊れない、ダンスとか踊ったことがないからと言うと
さすがに一切踊れないというわけにはいかないだろうと
修二君が教えてくれるという事になって
ラウンジで教えてもらってたんだけど
ふっとした瞬間に
え?っていうような驚きの視線が私の首筋の辺りに止まって
ピタッと動きを止めてしまった。
何事?と思って
「あ、あの、どうかした・・・」
私が言葉をつづける前に
修二君の顔が真っ青で
目が怖くて
私の顔を真剣に見つめて
「ね。訊くけど、それ、聖也が付けたの?来る前からあったとかでないよね?」
「え?あ、あの。」
何?
私はすっかり忘れていたのだ。
キスマークの事。
だから今日はそんなにピタッとしたハイネックみたいのとか着てなくて、
首筋に付いたキスマークに修二君が気が付いてしまい
「それ、キスマークだよね。」
「まさかと思うけど、どういうシュチュエーションで付いたの?」
え?そんなこと人にいう事?そういうことって人に訊くことなの?
そのとき私はその言葉の重要性を全く理解していなかったのだ。
知らなかったのだから仕方がないのだけれど。
「ね、恥ずかしいかも知れないけど、凄く大事なことなんだ。」
修二君は私の両肩に手を置いて私の顔をしっかりみて問いかけてきた。
「それどういう状況で付いたものか教えてくれる?できるだけ詳しく。
言いにくいかもしれないけど。」
いつだっけ?
確か。
「この世界に来た時、目が覚めて、そのお風呂に入ろうとしたとき鏡見たら付いてて。」
「それって聖也の部屋にいた。目が覚めたら寝てたって時の事だよね。」
「はい。」
「そんときなんで付いたか覚えてないの?」
「気が付いたら、ベッドに寝てて、聖也君が朝ごはんを用意してくれて、それで仕事行くから、お風呂入っていいよって言って出かけたからお風呂に入ろうとして。」
「ちょっと、その前の話。なんでそんなとこにキスマーク。」
「目が覚める前の記憶とかなくて。だからどうしてとか、いつ付けられたのかとか、分からないです。」
うーん、って考え込むような修二君。
「その、服とかって確か全部聖也が買ってくれたとかって言ってたよね。それって、君が目覚めたとき、衣服を着用してなかったってことでいいのかな。その、言いにくいいかも知れないけど」
「目が覚めたときは確か聖也君のベッドの中で、それで、聖也君のパジャマの上だけ着てて、」
「それって君の裸とか全部見られてたって事だよね?その上にキスマークまで付けられてたと。既成事実がどうのとか言ってなかった?」
「なんかそんなことを言ってたようなそんな気もしますけど、でも覚えてなくて。」
修二君の顔がますます蒼ざめて血の気が引いていくのが分かった。
「なんか聖也に聞いてる?そういう事したかどうかとか、」
「そうしたらどういう事になるか。」
「とか。」
何なんだろう。凄く切羽詰まった顔で訊いてくるんだけど。
私にはそんなことした覚えがないし、その後もそういうことをした覚えはなくて、記憶もないし、どう返事をしたらいいのか分からなくて、それにどういう事になるかってことも、何を言っているのか分からなくて、もしかして赤ちゃんが出来ちゃうんだよとかそういった事なのだろうか。
くらいにしか
私は思いつかなかった。
でも私の肩から手を離すと、
「もういい。聖也に直接訊く。その方がはっきりする。君も一緒に来て。」
なんか怖い。ものすごく怒ってるような気がするのだけれど。
私が戸惑っているとグイっと手を掴んで引っ張って聖也の部屋の前まで連れてこられた。
どんどんと乱暴にドアを叩き、
「聖也、部屋に入れてくれ。話がある。」
「修二ですか?急に何です?私今ちょっと手が離せなくて。仕事の台本読みしてて後でダメですか?」
と中から返事があった。
「いいから入れろよ!瑠璃ちゃんもいる。訊きたいことがあるんだ。さっさと開けろ。」
普段温厚な修二君からは考えられない乱暴な言葉に所作。
何かを感じ取ったのかカチャリと鍵を解く音が聞こえて、
中から聖也が顔を出した。
返事も聞かず、どんどんと部屋の中に入っていく修二君に手を引かれて気が付くと私も部屋の真ん中にいた。
「何です?」
胸の前で腕組みをして聖也が問いかけてきた。
「これ何だよ?」
いきなり私のブラウスの襟元をグイっと広げて
キスマークが付いたうなじを聖也の目の前に。
うっ、なんか物凄く恥ずかしい。
付けた張本人を前にしても恥ずかしい。
こんなこと。されてものすごく。
恥ずかしい目にあわされているような気がする。
けど、そんな羞恥心を掻き立てている場合じゃなかった。
「それが何か?」
なんでもない事だけどみたいな様子で返事が返ってきて。
「ちょっとだけ話訊いたんだけど、お前、まさかと思うが、ヤってないよな?」
わっ、いきなり直球。
でもそれって私も疑問で訊きたいことでもあるんだけど。
確かにあの状況は、何かされていてもおかしくはない。でもその後そういう事してないし、キスとか、キスとかは激しいのとかあったけど、誰かに邪魔されたりしてそこまで行ってないし。
でも、気になっていた。訊けなかったけど。
無言の時間があった。
「だったらどうするつもりですか?」
「そういう事なんだな。」
修二君が息を飲んで
「それで、話してるのか?」
「・・・・・・・・。」
「それしたら、どうなるのかって事をさ。」
「・・・・・・・・。」
「瑠璃ちゃんに言ってるか訊いてるんだ。」
「・・・・・・・・。」
「言ってないんだな!」
「俺から話してもいいか?話せないよな。そんな、一時の欲望でやっていい事じゃないって事本当はお前だって知ってるはずだし、きちんとどういう事になるかって意味を理解してそのうえでなくてはしてはいけない行為だよな。それを勝手にとか許されることじゃないと思うが。
説明もなしに、なし崩し的にとか有り得ない事だけど。」
「俺から説明する。」
「あ、あの。」
なんか急に怖くなって私は聖也の顔と修二君の顔を見て、何となく何か話さなくてはと、口を開いたんだけど、言葉が出てこなくて。
修二君が私の方に向き直って、そして
「いいから、気を落ち着けて聞いて。
ショックかもしれないけど、でも避けて通れない事だから。
この事実を知ってもらうのは大事なことだから。」
「はい。」
何か大切なことを話すという事なのだろうか。
いきなりで心の準備が出来てないのだけれど。
でも。
「あのね、ここには決まりがあって、
もし、男女の契りを交わしたら、もう元の世界に戻れないんだ。」
「それをしなければ、いつでも元居た世界に戻ることが出来たんだけど、
そういう行為をしてしまったら、もうここの住民になるしかない。
元に戻してあげることが出来なくなってしまう。もう元の世界に帰れないんだよ。
もうログアウトできなくなってしまった。
こいつが考え無しに勝手な事やったせいで。」
「そ、そうなんですか。」
あまり良く分かっていなかったから、事の重大さが私には分からなかった。
元の世界に帰るという事を気が付けば考えていなかった。
だって来たばかりで、なんか楽しくなってしまっていたから。
だからそんなに重大な事だとは思わなかったんだけど、
もしかしたら自分は過労死とかしてそして転生したのかなくらいに思ってたくらいだから、
そんなに深くは考えていなかった。
でも、帰れる選択肢が実はあったと聞かされると、急に元の世界が懐かしくなり、両親や妹や友達の顔が思い浮かんだ。
気が付くと頬に涙が意識してないのにつ伝っているのを感じた。
お母さんに会いたい。お父さんにも。
忙しくて実家にここんとこあんまり帰れてなかったし、
それに友達ともあまり会えてなかった。
こんなに急にもう会う事が出来なくなるのなら、、もっと会いに行ったり、電話くらいすれば良かったな。
と、それに何故かどうでもいい、仕事で疲れて帰ったときに寄るラーメン屋さんのおじさんの顔とか、スーパーのレジの人の顔とかなんでもない人たちの顔まで凄い勢いでフラッシュバックしてきて、涙があふれて止まらない。
ほら、お前のせいで、みたいに修二君が聖也の事を睨む。
聖也は無表情で何を考えているのか分からなかった。、ごめんね。とか言ってくれるわけでもなく。
「ごめんね。」
なぜかその言葉が修二君の口から出ていた。
「だから、もうここで生きていくことしか出来ないんだ。」




