第25話
宇都のパーティが酒場から出ていった後の事であった。
酒場ではプレイヤーが沢山飲み食いをしたり作戦会議をしたりと、騒々しい雰囲気が漂っている。
先ほどから宇都のパーティをじっと遠くから見つめていたパーティが、そこにはあった。
全員黒のローブを羽織っており、顔の表情などはそこから読み取ることができない。
腰には全員拳銃がある。
ハンドガンやマシンガン、狙撃用のライフルまで揃っている、銃撃集団のようであった。
集団と言っても、一つのパーティにつき編成は四人までしかできない。
が、八人の黒のローブを羽織った集団がそこに座っているので、四人パーティが二つ集まっているものであると見て分かる。
「おい、さっきのやつら」
周りの温度が下がってしまいそうなほど冷たい声が一つのテーブルで響いた。
リーダー格の男であろうか。
マントの中からはほっそりとした顔立ちに、キツネ目のような顔が見える。
「リーダー、奴ら間違いないですぜ。極レアです」
「ああ。そうだな、ロザリオ。奴らは、レアだ。ゲームで言う、めったに登場しないレアスライムと同等な立場の奴らだ」
そのロザリオという図体の大きい男はマントの中から不気味な笑みを見せた。
残りの八人が顔を見合わせる。
そして、ゆっくりと頷いた。
「間違いないですよ、リーダー。えへへ。レア度ランキングでは群を抜いて奴らのパーティが一位と表示されています」
女の声が聞こえた。
その女は照れ笑いを隠そうとしているのだろうが、うまく隠せていない。
近くでよく聞くとえへへへ、と何度も笑いの声が漏れているのが聞こえている。
その女は、自分の端末を操作し、パーティを確認する仕草を見せる。
それを見ようとしたロザリオを押しのけ、一直線でリーダーに見せた。
「ああ、間違いなく奴らのパーティだな。ククク、奴らをキルすれば、俺たちは最強になるな。よくやった、レッドバード」
レッドバードと呼ばれたその女は、ローブの中からへへと声をもらした。
ローブの中からなので、やはりよく観察することができない。
「奴らのレベルは、誰か分かるか」
「さっきスキル使って盗み聞きしていて分かったんですが、平均して30位ですかね」
リーダーの問いかけにより、ロザリオが即答する。
「なんだ、楽勝じゃねえか!」
そのロザリオの返答により、黒マントの誰かが余裕の声をあげる。
「馬鹿野郎。一筋縄じゃいかないぞ。いくら我らがレベル50台だからといっても、相手はレア度ほぼマックスの武器や装備を持っているのだ。そのような中、私たちの武器や装備では太刀打ちできない可能性だってあるんだぞ」
リーダーが一喝をする。
それもそうか、と誰かがまた呟いたようだ。
「へへ、リーダー。しかしやるなら今です。私たちの窃盗スキルもあることですし、襲撃するなら今ですよ!」
「ああ、レッドバード。お前の言うとおりだ。奴らはどこかへ出かけたようだが、狙うなら今だな。全員、準備は整えたか?」
全員がゆっくりと顔を縦に振った。
「追跡のマーキングスキルも使っているか?」
「もちろんです、リーダー!」
ロザリオが胸をはって自慢げに答えた。
そうか、と一言言うとリーダーは、
「俺とロザリオチーム、そしてレッドバードチームで二手に分かれる。そして奴らを挟み撃ちにするんだ。奴らからアイテムをすべて奪い、そしてキルすれば俺たちが最強になることは間違いなしだ。ククク」
「えへへ、さすがリーダー! 頑張りましょう!」
「よし、追跡を開始しましょう」
ロザリオはマッピングとマーキングしたデータをレッドバードに送ると同時に、外へ駆けだした。
酒場の中では、何やら不穏なものを感じ取ったプレイヤーが何人かいたようであるが、特に止めることはしなかったらしい。
ヤバい集団だと感じ取ったのか、皆見て見ぬふりをしていたようである。
酒場を一目散に出ていく黒ローブの集団。
この集団が、今後ゲーム内で大きく活動することになろうとは、誰が予想できたであろうか。
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宇都のパーティは、ダンジョン内にいた。
中は石の作り、床は砂で一面覆われている。
また土のほのかな匂いで占めており、不思議と嗅いでいて嫌な気分にはならなかった。
「よおし、早速敵のお出ましだ。ウト、行くぞ!」
「はい!」
パーティの前には、ぎいぎいと言いながらうねうね動いている良く分からない緑色の植物がいた。
全員は戦闘態勢に入る。
実はこのパーティの戦闘方法は、既に決まっているのだ。
まずは前衛の剣士である宇都、魔道剣士である不知火が剣でモンスターに攻撃をする。
中衛では銃士の五月雨が援護攻撃をし、危険であれば援護射撃、または前衛と位置を交代し、回復をはさみながら戦闘をする。
後衛では魔術師である黒が、魔法を唱えながら援護を続ける。
回復魔術を使用したり、時には魔術をしようして攻撃を仕掛ける方法だ。
そうやって役割分担をして攻略をしていく魂胆である。
さらに、不知火を前衛に置いたのはさらに大きなメリットがあった。
それは。
「ウト! あぶねえ!」
「うわ!」
咄嗟に恐ろしい反応速度で攻撃を防ぐ不知火。
実はこれは、彼の装備品、いわゆる絶対防御マントの効果であった。
この特別能力は、絶対防御システム。
相手の攻撃を自動的に防いでくれるという優れものだ。
勿論、近くにいる宇都にも、かばうことで防御することができる。
不知火を前衛に置いたのは、宇都がキルされるのを防ぐためだ。
彼らは、宇都を一回もキルされてはならないのだ。
ならないというより、されたくない。
なぜかというと。
「報酬の金が減るからな! 死んでもらっては困るのだ! ははは!」
不知火は大きな声をあげて笑いながら、モンスターへ突進した。
「結局不知火教授からもらう金ですか!」
宇都と不知火が同時に攻撃を仕掛けた。
二人の前に100という数字が出る。
ギャアアアという良く分からない声と共に、その植物は消滅した。
全員、レベルが上がったみたいだ。
軽快な音楽と共に、各自の画面でステータスが表示される。
「お、おお。上がったよ!」
「......私も」
少し離れている黒と五月雨も、同じようにレベルが上がったようだ。
「それにしても、こんなに早く成長するなんて、すごいなあ! ははは」
不知火は一人笑いながら洞窟内を進んでいく。
「あ、ちょ、待ってください、不知火さん!」
宇都が大きな背中をまた追いかけていった。
この時、危険が迫りつつあることを誰も知っているはずが無かった。
続けての投稿。 2015/02/22




