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幾千の夜と暁を越えて  作者: 白明


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第一章 貪狼星 肆 犬馬の労とは言わないまでも

 じいちゃんは晩年、自伝を書こうとしていた。

 そんなことをおくびにも出さず。


 それだけではない。

 じいちゃんは夕日新聞社で働いていたと思っていたが、新規事業である書籍出版部門(100パーセント子会社)に出向し、多くの書籍をプロデュースしてきたらしい。

 その出版会社は、2008年には閉業し、親会社である夕日新聞社の一部門として迎えられたそうだ。

 この会社は、現在でいうライトノベル部門とマンガ部門、そして音声配信を中心に事業を展開していた。

 もちろん名作家の作品も取り扱うなど、読者層をかなり広く展開していた。


 先にも紹介したが、マンガ部門では、

 「Fire bird」、「Iron Arm 原子」、「地球へ……」が有名。

 小説部門では、

 「Star ship 大和」「Article fighter 頑駄無」、「吸血鬼ハンターE」、「幻獣少年 鵺」、「汚い二人」、「嵐ラーン戦記」など、当時のSF、ファンタジー好きの少年たちを魅了したラインナップであった。


 しかし、2000年代に入ると多くのライトノベル専門の出版社などが台頭してくる。

 これに押されるようにして、2005年には本社である夕日新聞社に吸収合併され、廃業を余儀なくされたのである。

 言わば、今の「転生したら~」などに代表されるライトノベルの奔りを1970年代に作り出していた出版社なのだ。

 ここで出版をしていた作者は、いわずともがな現代ではレジェンド、又は、スーパークリエイターと呼ばれるほどの作家やクリエイターとして活動をしている。


 その大衆・青年文学の黎明期に携わっていたのが、じいちゃんだと思うとなんともいいようの無い感情に包まれる。

 まあ、私の仕事ではないのだから、そんなにも感傷深く思う必要はないのだが。

 とはいえ、往年のレジェンド作家の名前が連なることに一抹の興奮を隠せないのが本心だ。


 じいちゃんは、なんでもっと早く私に教えてくれなかったのだろうか?

 なぜ私に対してあのような教育を行ったのだろうか?

 湧き上がる疑問に混乱しつつ、因果は巡るモノだと感じながらも、じいちゃんとの共通点が増えたことで、肌に粟が生じる。


 そして、じいちゃんは人生最後の仕事として、自伝を作成しようとしていた。

 だからこそ、こんなにも多くの手記、日記帳やアルバムをわかりやすい形でまとめていたのだ。

 なんともオモシロイことに、私が作家として出版してきた作品の多くは「自分語り」が中心。

 まさに自伝である。


 そうであれば、私が書けばいい。

 じいちゃんがどのような人生を生きてきたかを。


 それだけではない。

 私が受けてきた「絶対帝王学」が、じいちゃんの人生の中でどのように生まれ、醸成されてきたかを。

 なぜ、私にそれを伝えたかったかを。

 その本意を。


 今、手元にある手記、日記帳やアルバムからだけでなく、私が調べればいい。

 私の時間はまだまだあるのだから。


***


 スマホを手にすると早速、検索を開始する。

 ここからだ。

 もう一度、私とじいちゃんの人生が交錯する。

 それは、じいちゃんの人生を、私という主人公が追体験する物語なのだ。


(つづく)

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