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四つ葉の郷の物語  作者: 村野夜市


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互いに無事だったことを喜びあったのも束の間。

フィオーリの家族はこれから起きだして、仕事に行くらしい。


「さあ、みんな、夕ご飯の支度だよ!」


母さんホビットの号令で、わらわらと食事の支度が始まった。


見事なまでに全員が動いていて、誰一人、じっとしている者はいない。

フィオーリは慣れたように、いつの間にかそれに混じって働いている。

シルワやグランはなにか手伝おうとしたんだけど、何していいか分からなくてただきょろきょろする。

僕はもう、はなから、余計な手出しをするつもりはない。

マリエも、おろおろしてるから、じっとしているほうが邪魔にならないんだよ、って言ってあげた。


食堂にはとてつもなく大きなテーブルがあった。

そこにどっさりと食べ物が並べられる。

机から零れ落ちそうなほどに食べ物が並ぶと、今度は、ぐるっと全員がテーブルについた。


僕らも当然のように一緒に座るように言われる。

長椅子におしくらまんじゅうをするようにぎゅうぎゅう詰めになってなんとか全員座った。

全員が席についた、ほんの一瞬の間、ぴたりと、まるで時が止まったかのように皆静止した。

それから一斉に手を合わせて、声を揃えて言った。


「いっただっきまーす。」


それからにぎやかな食事が始まった。

しかし、この部屋には今、いったい何人いるんだか、よく分からない。

大テーブルの周りにはずらっとホビットが並んでいる。

けど、入れ替わり立ち代わり、厨房に行ったり、他へ行ったり。

少しもじっとしていないから、人数を数える暇がない。


食事はなかなかに豪華だった。

野菜のたっぷり入ったスープに、ふかふかのパン。

酸っぱいソースのかかった芋のサラダ。

甘く煮込んだ果物に、炒ったナッツ。

燻製肉に、発酵乳もあった。

それらの入った、瓶やら、鉢やら、皿やらが、まるで宙を飛ぶように移動する。

それとって、あれとって、という声が飛び交い、小さな手が目の前の皿をさらっていった。

あんなにあった食べ物は、みるみるうちに、皆のお腹の中へと収まっていく。


「夜明けに帰ったら、みなさんとフィオーリの歓迎会をしましょう。

 今夜はばっちゃんは残って、その準備をすることにしようかね。」


ばあちゃんホビット(?)がそう言うと、父さんホビット(?)はうんうんとうなずいた。


「なら、じっちゃんも残ってください。

 みんな、今夜は、じっちゃん、ばっちゃんの分も、働こうな?」


「おっけー。」

「いいよー。」


一斉に手を挙げたのは、子どもホビットか?


う。う。う。それにしても、なんだこの、ファンタジーな風景は。

フィオーリとはずっと一緒だったから、ホビットが格別珍しいわけじゃないんだけど。

数の暴力というか。いや、暴力じゃないな。数の・・・効果絶大というか・・・。

とにかく、すごい。圧倒される。


しかし、なんだろう?

さっきから、みんなの言うことに、妙に違和感を感じるんだけども。


恐る恐る、というふうにシルワがそこに割り込んだ。


「・・・あのう、実はわたくし、世間様のいろいろには疎いところがございまして・・・

 このようなことをお伺いするのは、大変失礼なことかもしれませんが・・・」


シルワは長い前置きをしてから言った。


「あの、ホビット族というのは、夜行性な種族なのでしょうか?」


がやがやわいわいしゃべっていたホビットたちは、一斉に黙った。

それから、一斉に笑い出した。


「そんなわけ、ないでしょうよ。」

「ホビットだって、エルフさんたちと変わりませんよ。」

「夜行性のホビットだなんて、なんだか、黒ホビットって感じ?」

「黒ホビット!カッコいいね?」

「今度みんなで、黒帽子揃えようか?」

「いいね!黒帽子!」


すっかり帽子の話で盛り上がるホビットたちに、シルワは、あのう、ともう一度割り込んだ。


「夜行性ではないのに、夜働くとは、またいったい、どういった理由で・・・?」


「ああ!」


ホビットたちは、一斉に、ぽん、とこぶしでてのひらを叩く。

それから、口々に言い出した。


「この郷にはオクサンがいるので。」

「オクサンにみんな合わせてるんですよ。」

「オクサンってば、働き者だから。」

「助かるんだよねえ。」

「オクサンのおかげで、すっかり畑も順調だし。」

「オクサンってば、力持ちだから。」

「その分、たくさん食うけどね。」

「いやいや、あれは、食うだけの値打ちはあるよ。」


君たち、一斉にしゃべると、何言ってんのか、よく分かんないんだけど。

奥さん?って、誰の?


とにかく、どこかの奥さんが働き者で、よく食べるらしい。

それで、なんで夜、働かないといけないんだ?


「ああ、もうそろそろ、畑、行かないと!」


そういったのは、母さんホビットだ。

すると、ぴたり、と全員が口を閉じて、それから、一斉に手を合わせた。


「ごちそうさまでした~。」


うん。この揃い方、気持ちいいよね。

ちょっと癖になりそうだ。


それから、ホビットたちは一斉に出かけて行った。

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