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ユーレンス大陸史  作者: 新参猫
第二章 ジャルジュ解放戦線
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第十項 マゴヨントルにて 終節

あの後、大勢のジャルジュに詰め寄られて大変だった。

これから私達を導いて下さい、とか言われて散々頭を下げられたんだよね。

結局マジュンが駆け付けてくれて、その場はどうにかなったけど、あれ以来ジャルジュの人達は私と目が合うだけで手を合わせて拝むようになってる。

信仰されてないといいけど。


今は人目のつかない所で人化してるルージャとこれからの予定を話している。

ルージャ、何か眠そうだけど大丈夫かな?


「ルージャ、コンドフって知ってる?」


「トンデナル連合国家の首都」


「私達の速さでどれくらいで着く?」


「2日くらい」


そう言うとルージャは私の肩に寄り掛かって此方を見上げてくる。

微笑んで頭を撫でてあげると、ルージャはヘニャと笑って目を閉じた。

安心したのかな?


しばらく撫で続けるとスースーと気持ち良さそうな寝息が聞こえてきた。

撫でる手を止めて私はボーッと空を見上げる。


アンセルはお父さんも戦うとき暴走したって言ってたけど私もやっぱりそうなのかな。

血を見た時、心が踊るんだよね……。

さっき口に入った血の味が忘れられないし、本当に人間じゃなくなったのかな?


考え事を続けていると、突然視界が遮られた。


「リアン~?酷い顔してるわよ?」


「マジュン、離して」


「やーよ。悩み事を全部言わなきゃ離さないわよ」


面白がっているマジュンに対し、私は溜め息を吐いて口を開く。


「…………私、人間じゃなくなったのかな?さっき口に入った血の味が忘れられないしさ」


「さーて、どうでしょうね?」


マジュンは楽しげな声でそう言った。

慰められるのを予想してたから少し拍子抜けだ。


「…………相談させておいてその態度?」


「だって人間かどうか何てそんなに大切なことじゃないわよ。大切なのは目の前にいる生き物が仲間かどうかだけ」


そう言うと彼女はカラカラと笑う。

何かマジュンと話してると悩みが消えてくね。


「私は?」


「当たり前の事を聞くのね」


マジュンはそう言うと手を離して私の頭を撫でる。


「たとて他の人がどう言おうとマゴヨントルのジャルジュは貴女の仲間よ。少なくとも私達の前では人間かどうかなんて悩まなくていいわ」


「……ありがとう」


そう言って私が笑うと、マジュンは満足そうに頷いて私の隣に座った。


「これこらリアンはどうするのよ?」


「コンドフに向かおうと思ってる」


「そう、気をつけてね。あそこはマゴヨントルより警備が厳重よ」


真剣な顔でマジュンは私の肩を叩いてくる。

彼女なりの心配のしかたかな?


「分かった、ありがとう。マジュンはどうするの?」


「私はジャルジュを連れてマイソーカに向かうわよ」


マイソーカは昔、防衛拠点だったけど、今は場所を海際に場所を移して港町になっている。

ならず者が集まるので有名らしいけど、マジュン達は何でそこに行くんだろ?


「マイソーカ?何で?」


「あそこから北に向かう船が出てるのよ。北は革命軍の制圧下にあるから、人狩りに怯える必要も無いのよ」


「そっか、それじゃあ今日でお別れだね」


「…………そうね」


「悲しそうな顔しないで、今日は此処に泊まるから」


「本当に!?なら、のんびりしてる暇なんて無いわね!」


そう言ってマジュンは凄い勢いで走り去ってしまった。

凄く嫌な予感がするんだけど、気のせいかな?



ЖЖЖ



日が沈む頃にマジュンは私を迎えに来た。

何でもお別れ会をするみたい。

行き方が分からない私のために、会場である街の広場までマジュンがエスコートしてくれている。

嬉しいけど申し訳ないよね。

ちなみにルージャは眠そうに目を擦りながら私に手を引かれて付いてきてる。


「別にそこまでしなくても良いよ?」


「ジャルジュ全会一致で決まったのよ。男共が凄い張り切りようだったわ」


「へぇ」


嫌な予感がする。

何でか分からないけど凄く面倒臭い事になりそうなんだよね。


そうこうしている内に広場が見えてきた。

マジュンを見ると彼女はポンッと肩を叩いてニッコリ笑って一言。


「何があっても私達は貴女の仲間よ」


一体何をするつもりなんだろう?



ЖЖЖ



広場は想像を絶する状態になっていた。

至るところに私の絵が飾られ、描いた人達がドヤ顔でそれを見せびらかしている。

極めつけは広場中央に置かれた彫刻。

私が竜化したときの姿を等身大で細部まで再現してある。

あれ?でも私のよりも胸が大きい…………。


「マジュン、説明して貰ってもいい?」


「ドラゴンの神子、リアン様を愛でる会の記念すべき設立日よ。会長は私ね」


悪びれずにそう言うとマジュンは私に向かってウインクした。

それを黙殺すると私は縋るようにルージャの方を向く。


「ルージャ、どう思う?」


「いいんじゃない?」


味方無し、孤軍奮戦、四面楚歌。

泣きたくなるよ。


私が呆然と立ち尽くしていると、そんなことはお構い無しにマジュンが杯を高々と掲げる。


「リアン様に乾杯っ!!」


「「乾杯っ!!」」


老若男女問わず、ジャルジュは笑顔で杯を掲げて乾杯する。

どうしよう、変な宗教みたいになってるよ。


乾杯を終えた途端、ジャルジュ達は我先にと私に食べ物を持ってきた。

手近の肉を1つ手に取ると、1人のジャルジュが泣いて喜び始める。

他はジャルジュ達もそれを羨ましそうに見ながら私に食べ物を押し付けてきた。


苦笑いを浮かべてルージャの方を見ると、彼は何食わぬ顔で料理を食べている。

助けてよ!


「リアン様!どうか我等をお守りください!」


誰かがそう叫ぶと、それに合わせるようにして他のジャルジュ達がお守りください!と叫ぶ。

常軌を逸した光景に思わず私は竜化してその場を飛び立ってしまった。

何か下でルージャの笑い声が聞こえた気がする。

後でお仕置きだね。



ЖЖЖ



人目のつかない場所に降り立つと私は数回羽ばたいて伸びをする。

周りには建物が乱立していて誰かから逃げるには丁度良い感じだ。

建物の影に身を寄せ、私は竜化を解いてその場にうずくまる。

空を見上げると月と対抗するように星達が綺麗な光を瞬かせているが見えた。


ハーフドラゴンになってから普通の扱いをしてくれた人はアンセル以外にいない。

大抵の人は怖がったり崇めたりしてきたんだよね。

もう、人に混じって暮らすのは無理かな…………。


そんなことを考えながら私は眠りの淵に身を委ねた。

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