第九項 マゴヨントルにて 3節
昨日は投稿できず申し訳ないです。
これからこういう事が増えるかもしれないので
その時は暖かい目で見ていて下さると
ありがたいです。
大通りに飛びだすとルージャはドラゴンの姿に戻って叫び声を上げた。
それだけで大通りを歩いていた人達は蜘蛛の子を散らすようにワッと悲鳴を上げて走り去っていく。
聞き慣れてないと怖いのかな?
ルージャはお腹減ったって叫んだだけなのにね。
私も遅れるようにして全身を竜化させると空に舞い上がる。
その時、街の中心にある建物に付いた大きな鐘が鳴らされた。
青白いその鐘は大きさの割に高い音を街全体に響かせる。
一体何のためだろう?
理由はすぐに分かった。
鐘の音を聞いたジャルジュ達が皆倒れていく。
あれがマタロフの鐘なんだね。
あちこち飛び回って様子を見てみると客引きをしていたお姉さん達も皆その場に倒れて動く気配がしない。
動けなくなるだけなら良いんだけど……。
その時、凄まじい歓声が空気を震わせた。
声のした方向を見ると鐘の付いた建物から兵隊が大量に出てくるのが見える。
不味い、殺されちゃう!
私の予想は嬉しい方向に外れて彼等は手近にいるジャルジュを手当たり次第担ぎ上げて建物の中に連れ去ろうとしている。
良かった、殺されそうも無いね。
けど、どうやって助けよう?
数が多すぎるから一人助けてる間にどんどん連れていかれるよね……。
どうしようか悩んでいると、いつの間にか空に来ていたルージャが建物の入口の上にある壁に凄まじい速度で激突した。
「ルージャ!?」
意図が全く読めない行動に私は驚きの声を上げる。
けど、ルージャの狙いはすぐに分かった。
丁度よく壁が壊れて兵隊達が建物の中に入れないようになっている。
これが狙いだったんだね。
すぐにルージャの所に急降下すると建物の近くにいた、ジャルジュを担いでいる兵士達の足を鉤爪で切り裂いた。
大抵の兵士は膝から下がなくなってその場に倒れていく。
何となく気持ちが昂っているのは気のせいだと思いたい。
けど現実は甘くなかった。
何人もの兵士が私を指差し、武器を構えて走ってくる。
その瞬間、私の体の中で何かが弾けた。
私は近付いてくる兵士達に向かって滑空すると首を引き裂いて着地する。
彼等の首から赤い鮮血が吹き出し、それを見た私から理性が消える。
後は一方的な虐殺だ。
向かってくる兵士を鉤爪で切り裂き、腕に喰らい付いて引き千切る。
尻尾を一振りするとそれに当たった兵士は壁に叩き付けられてグッタリとその場に座り込んだ。
ようやく起き上がったジャルジュ達は私を見て喝采の声を響かせる。
怨みや屈辱、怒りや悲しみを体現するかのように暴れまわる少女にジャルジュ達は涙を流して叫び声を上げ続けた。
その光景はさながら戦場の演奏会だ。
ЖЖЖ
虐殺が一通り終わると、ようやく私の気分は落ち着いた。
ジャルジュの内の一人から貰った布で手を拭っていると、瓦礫が崩れて中からルージャが這い出てきた。
「お疲れさま、ルージャ」
「まだ休んでられないよ!ジャルジュが一杯集まってるけど、どうするの?」
「…………どうしよう?」
期待に目を輝かせているジャルジュをどうすることも出来ずに立ちすくんでいると、大通りから革命軍の関係者を捕縛した兵士達が歩いてくる。
助けようと思って翼に力を込めて飛び立とうと身構えた。
けど、すぐにその必要は無くなる。
裏通りから躍り出たアンセルが瞬く間に兵士を斬り伏せて、彼等の縄を切って解放していく。
急いでアンセルに駆け寄ると彼は真面目な顔を私に向けた。
「リアン、あれを壊せる?」
そう言って彼が指差すのはマタロフの鐘だ。
うーんと唸っているとルージャが人の姿に変わって私の裾を掴んできた。
「リアン、壊せるかも」
「え?どうやって?」
「父さんは、魔力、爆発させて、地面を吹き飛ばせる」
「魔力?」
「見えてるはず、光の流れ。掴んでみて、後はなんとかなる」
言われた通りに自分から出ている光の流れに手を伸ばし、掴んでみる。
途端に光が集まり始め、手の中に凝縮されていく。
普段はぶつかっても何もない無いのに掴むとこんなことになるんだ……。
光は手の中に集まると深紅に輝く槍に変わった。
「凄い…………」
「綺麗ね」
「?」
感動する私とアンセルを余所にルージャは首をかしげている。
しかし首を振って考えを抹消するとドラゴンの姿に戻って空に飛び上がった。
私も後を追うように空に舞い上がり、上空で槍を軽く振ってみる。
非常に軽く、重さを感じさせないそれは軽く振るだけでヒュンッと空気を切り裂く。
試し切りに建物の壁に向かって振ってみると、バターを切るように簡単に壁を切り裂いた。
これなら鐘も壊せるね。
「リアン!早く!」
「今行く!」
ゆっくりしている暇は無いみたい。
慌てて鐘の前まで飛んでいくと槍を構える。
「ねえ、どうやったら爆発する?」
「さぁ?爆発って叫んでみたら?」
「分かった」
槍を担ぐようにして持つと鐘に向かって投げつける。
途端にルージャは慌ててその場から離れて私の後ろに避難した。
「爆発っ!」
ビキッビキッと何かが割れる音がした直後、ドーンッと雷が落ちような凄まじい音が辺りに響き渡り、建物の上半分は消え去った。
勿論鐘も一緒にだ。
ルージャと顔を見合わせて呆然としていると地上から歓声が上がる。
下を見ると革命軍とジャルジュ達が武器を掲げて叫んでいた。
何かに勝ったのかな?
ЖЖЖ
地上に降りるとアンセルが笑顔で私の肩を掴んでくる。
「リアン!君のお陰で勝てたよ!」
「勝てた?」
「鐘と一緒に建物を吹き飛ばしたからね、街長も一緒に消し飛んだんだよ」
「へぇ」
「反応薄いね!?」
特に興味もないからね。
当然の反応だと思うけど。
「それよりもこれからもジャルジュの皆はどうするの?」
「さぁ?」
爽やかな笑みを浮かべて首を傾げるアンセル。
無責任な態度に少しイラついた私は彼の胸ぐらを掴んで睨み付ける。
「革命軍は何をするために戦ってるの?ジャルジュを助ける為じゃないの?」
「厳密に言うと違うね。革命軍の目的はジャルジュの奴隷化を撤回させる事であって、ジャルジュの救出じゃないんだよ。何より人手不足だからジャルジュを救うのはかなり難しいのが現状かな」
アンセルは私の手を丁寧に引き剥がして握る。
ふと思い付いたように彼は笑うと私にそっと耳打ちをした。
「もしジャルジュを助けるのが君の目的なら革命軍よりパルバールを頼った方がいい。ここから更に南にあるコンドフっていう街に行けばザックっていう男が居る。彼にアジャスから貰ったメダルを見せれば色々融通してくれると思うよ?人とか情報とかね」
それだけ言うとアンセルは立ち去って行く。
革命軍の人達も後を追うようにして姿を消した。
コンドフ、か。
そこに行けばお母さんの事も分かるのかな?
ポケットに仕舞っていたコインを取り出して眺めると、金色のそれは私の手の中でキラリと光を反射させた。




