1-8 神の子、装備を創る
ゴールデンウィーク中にテストと学校があり忙しかったです。もはやゴールデンウィークではなかったです。
奴隷商会を出た俺とレオナは人気のない路地に来た。これからする話を聞かれないためだ。まあ夜だからどこでも人気ないけどね。
「じゃ改めて、君を買った、というか貰った破闇 創輝だ。よろしくね」
「・・・はい、よろしくお願いします」
うん、まだ警戒されてるな。まあ≪偽装≫してまで売れ残ろうとしてたんだもんね。
「それと、君が≪偽装≫で見た目とステータスを偽ってるのは分かってるから」
「っ!?」
この言葉を聞くと、レオナは驚きよりも警戒を強くした。睨むような感じで俺を見てくる。
「≪偽装≫してたのは理由があるんだろうけど、あえて聞かない。でも≪偽装≫は解除してくれないかな?」
「・・・なんでですか?・・・命令すれば私は拒否できないです。なんで命令しないんですか?」
どうやら、この世界ではだいたいのことは命令されるようだ。まあ俺は命令するのも、されるのも嫌だからしないけどね。
「俺はしたくないことを無理やりさせるのはいやなんだよ。偽善だとは思うけどね?」
「・・・」
俺の考えを伝えると黙ってしまう。
「・・・分かりました。解除します。≪擬装解除≫」
その一言で≪偽装≫のスキルが解除される。そしてレオナの本当の姿が露になる。
鑑定で見えた姿と同じ、金髪のロングヘアーに整った顔。まだ、子供らしい顔なので美しい、綺麗といった言葉よりも可愛いという方があう顔立ちだ。
「ん、ありがとう。じゃあ行こうか」
「どちらに?」
「ん?レオナの服や装備を買いに行くんだけど?」
路地を抜けようと歩き出す俺とレオナ。少し離れた後ろからレオナがついてくる。まだ警戒心はとけていないようだ。
服屋についた。レオナの服とついでに自分の服も買おう。この世界ではなるべく創造の権能、破壊の権能は使いたくない。後で封印でも施しておこう。
服屋に入りそのまま会計カウンターまで行く。
「いらっしゃいませ」
「すみません。この娘に似合う服を3セットほど見繕ってもらえませんか?金額は気にしなくていいので」
「かしこまりました。ではお客様、こちらへ」
店員はレオナを呼ぶ。しかし、レオナはどうすればいいのか分からず困った表情をしていた。
「行ってきな。自分でも気に入った物があったら店員さんに渡してね」
レオナは軽くうなずき店員と奥に行った。
さて。自分の物もえらびますか!すぐに決まるけどね。
-5分後-
俺の両手には黒のシャツとズボンが2セット握られている。
ほらね。男の買い物なんてこんなものだよ。あとは気長にレオナを待つか。
-それから10分後-
まだ来ない。女の子の買い物は長いっていうけど・・・これは店員がはりきっちゃってるね。さっきからたくさんの人が交代で奥に出入りしてるし。
-更に10分後-
これは少し、いや、かなり長くないですか?とうとう会計の人まで奥に行っちゃったし。今、店の中には俺しかいない。不用心だが、それだけレオナの服選びに力をいれてくれていると思うとありがたさが込み上げてくる。
-更に10分後-
やっとレオナと店員が帰ってきた。レオナの服はレオナが着ているが、店員に囲まれていて見えない。
「お待たせしましたお客様」
「どうでしたか?」
「はい、とてもお似合いのものがありましたよ」
店員が退き、レオナの姿が見える。
その姿は・・・メイド服だった。
レオナは恥ずかしいのか顔を真っ赤にしてうつむいている。
「・・・なんでメイド服?」
「奴隷、いわば従者ともいえますので、御奉仕するといえばこの服かと。勿論、普通の服もありますので、ご安心を」
普通の服だけで良かったんだが・・・まあいいか!別に嫌いって訳じゃないしね。
他の服はワンピースなどがある。てか着るのそっちでよくないか?
「じゃあそれ全部ください」
「ありがとうございます。全部で金貨八枚です」
「はい」
金貨八枚を店員に渡す。店員は受けとり、荷物を渡される。
「ありがとうございました」
俺達は店を出る。その間レオナはずっとこちらを警戒している。どうやら物で釣ろうとしていると思われているようだ。
まあこれで警戒心がなくなればいいなー、とは少し思ってるけどね?
レオナの装備や王都に行く準備をするために宿屋へ向かう。向かう宿はヴァンとレイスが宿泊しているギルドの隣の宿だ。
「いらっしゃい!」
「こんにちわ。一泊二部屋空いてますか?」
「すまないね、今は一部屋しか空いてないよ」
ふむ。どうするか。俺の能力をまだレオナには見せないほうがいいよな?そうなると二部屋必要なんだけどな。
「あれ?ソーキじゃん!来てくれたんだ!」
考え事をしていると後ろからレイスに声をかけられた。
「なんだい、レイスの紹介だったのかい」
「そうだよ、おばちゃん!感謝してね!?」
どうやらレイスは宿屋のおばちゃんと知りあいのようだ。
「ん?ヴァンはどうしたんだ?」
レイスは今一人で、いつも一緒にいるヴァンがいない。気になったので尋ねた。
「ヴァンは買い出しにいってるよ。あたしたち明日には王都に行く予定だから」
なんとレイス達も王都に行くようだ。すごい偶然だよなー。
「そうなんだ。俺達も行く予定だよ。明後日だけどね?」
「俺達?」
なかなか鋭い。少しの言葉の違いも聞き逃さなかった。俺なら間違いなく気づかないな。
「あ、もしかして後ろにいる子?」
レオナはレイスが来たくらいから俺の後ろに隠れている。
「ええ。レオナっていいます。成り行きで一緒に行動することになってね」
「レオナです。よろしくお願いします」
レオナが挨拶をする。するとレイスがレオナに近づき、抱きついた。
「かっわいいーー!」
「!?」
レオナは抱きつかれたのに驚いて逃げようとするが、レイスの方が力が強いので手だけがバタバタと動くだけだ。
「ねぇソーキ!こんな可愛い娘どうしたの!?」
レイスが興奮した様子で聞いてくる。その様子は少し引くほどだった。
「話すよ。話すからさ、そろそろレオナを離してあげてくれない?息ができないのかさっきから手がピクリとも動かないんだけど」
「え?」
レイスに抱きつかれたレオナは、最初は離れようと抵抗していたがレイスの胸に顔が埋まり、呼吸ができなかったようだ。呼吸を止められるくらいはあったんだな。
「わー!ごめん!大丈夫?レオナちゃん!」
慌てて離すレイス。レオナはなんとか平気だったようだ。しかし、相当苦しかったのか荒い呼吸をしている。
「だ、大丈夫です」
「ごめんね?可愛いかったからつい」
つい、で抱きつくなよ。初対面だろーが。
「今度からは抱きつくなよ?」
「わかったよ。レオナちゃん、ごめんね?」
「ん。大丈夫、です」
レオナはまだ警戒しているのか返事がぎこちなかった。だが、俺よりは警戒していないようだ。納得いかねー。
「それより、どうしたの?」
「いや、まだレオナとは知り合ったばかりだし、いきなり同室はどうかと思ってね?でも一部屋しか空いてないんだよ」
そう、なにも俺の能力を見せたくないというだけではなく、そういった理由もあるので二部屋必要なのだ。しかも警戒しているので休むに休めないだろうし。
「それならヴァンと部屋交換する?私とレオナちゃんで一部屋、ヴァンとソーキで一部屋。どう?」
「俺としてはありがたいけどヴァンに確認しなくていいのか?」
レオナが休めない、という問題は解決するので十分ありがたい。レオナもレイスには警戒心が薄れるし同性だから俺と同室よりはやすめるだろ。
「いいのいいの!じゃあ決定ね!行こ、レオナちゃん!」
レイスはレオナの手を引っ張り強引に連れていく。レオナのことが相当気に入ったようだ。
「お騒がせして申し訳ありません」
宿屋のおばちゃんに謝る。なにせカウンターの前で騒いでいたのだから。
「大丈夫だよ。それで一部屋でいいのかい?」
「はい、お願いします」
「わかったよ。明日にはレイス達も王都に行くから部屋が空くけど使うかい?」
「いいんですか?」
どうやら予約的なこともしてくれるお店のようだ。
「お願いします」
「わかったよ。一部屋は二泊、もう一部屋は一泊で銀貨6枚と銅貨9枚だよ」
日本円に換算すると6900円だ。ちなみにこちらのお金は鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨、ミスリル貨、ターフェ石貨とあり、順に十円、百円、千円、一万円、百万円、一千万円、一億円となっている。一万円から一気に百万円までとんでいるのは白金貨からは商人か王族くらいしか使わないもの、だからだそうだ。
「はい」
「ちょうどだね。朝食は7時から、昼食は12時から、夕食は19時からだからね。お風呂はないけどお湯と手拭いを別料金で売ってるから」
「分かりました」
チェックイン(異世界でもこう言うのかはわからないが)を済ませて、部屋に向かう。
一番奥の角部屋だった。窓が二つあり、夕暮れの日差しが部屋に差し込んでいた。
「ふう。いろんなことがあって疲れたな。すぐに寝たいが体を拭いてないし、何よりヴァンがいるからな。説明もしなきゃ。その前に創るもの創って封印しちゃおうか」
ヴァンが来る前に俺とレオナの武器、防具を創ってしまおう。
まず、レオナの武器、防具を創ろう。
今更ではあるが、レオナの種族は【霊狐】という。これは獣人の中では珍しい魔力と親和性が高い種族だ。魔法が使え、さらに獣人は身体能力が高い。鍛えれば相当強くなる筈だ。
説明はこのくらいにして、まずは防具を創ろう。
レオナは獣人なので身体能力は高い。だが獣人は武器の扱いには長けていない。だから獣人は体術で戦う。それを考えると武器はガントレットでいいだろう。(ガントレット=籠手、本来は防具)それに加え、レオナは魔法も使える。なのでガントレットにオーガの魔石をつける。これにより、ガントレットに魔力が溜められ、魔法補助具の杖のような役割を果たしてくれる。
他の防具はロンズデーライトという鉱石を創り、胸、腰、脚の防具を創った。
レオナの装備を創り終わったので俺の装備にとりかかる。
俺が創るのは刀だ。ただ、俺も魔法を使うので魔石をつけたい。しかし、刀となるとつける場所がない。それで俺が考えたのが刀身を魔石にする、ということだ。だが、魔石は鉄などよりは硬いがミスリルよりは硬くない。そこで、オーガエンペラーの魔石を使うことにした。オーガエンペラーの魔石はワンランク上の魔晶石という物で、ミスリルより硬い、さらに魔石より魔力と親和性が高いことがわかった。見た目としては、魔石は薄赤色だが、魔晶石は赤黒い。オーガエンペラーの魔石は大きいので刀の刀身を作るのにも十分だろう。
そうして創った刀は、柄、鍔、鞘は普通の刀と同じだが、その刀身はまるで魔剣の様に禍禍しい色をしていた。赤黒く、少し透き通っている。結構出来が良く気に入った。他人が見れば趣味が悪いというのだろうが、気に入ったものは仕方がない。
武器が創り終わり、防具にとりかかる。といってもロンズデーライトを繊維状にし、ロングコートを創っただけだ。その際に着色し、黒と赤を基調としたコートになった。本来はものすごく硬い鉱石なのでこんな使いかたはできない、が俺の能力なら平気だ。
これと刀を装備したら完全に悪人だよなー。
まあ創るもの創ったから封印しちゃおう。念のために三段階封印でやろう。第一の封印は自力で解けるように、第二の封印は自分の怒りや憎しみなどの負の感情で解けるように、第三の封印は第二の封印が解けた状態で自分よりも強い敵の存在があるときに解けるように設定する。
「じゃあこれで。ほいっと」
掛声とともに封印を施す。 変な掛声とか言うなよ?
分かりやすいように左右の上腕に鎖の痣が二本ずつ現れる。これはそれぞれ創造、破壊の能力の第二封印、第三封印の印だ。右は創造、左は破壊の封印を表している。解かれればそれが消える、という仕組みになっている。
「だいたい準備はこのくらいでいいだろう。あとは」
「おーす。ソーキいるかー?」
と、ここでヴァンがきた。すごいジャストタイミングだな。
「おす。ごめんなヴァン、急にこんなことになって」
「大丈夫だよ。でも、まさかソーキがいきなり女の子を連れてるなんてな」
「まあ、全部なりゆきだけどね」
異世界に来て初日で色々濃い体験したよなー。魔物倒したり、人助けたり、奴隷貰ったり。
「まあ疲れただろ。俺のことは気にせずにゆっくり休め。どうせ一日違いで王都に来るんだろ?また会えるだろ」
「ありがとう。そうさせてもらうよ」
その後、お湯と手拭いを買い、体を拭いてベットに横になる。自分では気づかなかったが、相当疲れていたようですぐに寝てしまった。
下手なんですよねぇ。なんか参考にしたほうがいいですかね?