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とうとうこの場所に来て二年が経った。
俺が思った事は。
「寂しい」
そう呟いた。
一年間誰とも喋らずにいる人間がいるだろうか?
普通のニートだって家族とくらい話すだろうし、
ネットという暇つぶしがある。
俺にそんなものは与えられなかった。
許されたのは、己を鍛え上げる事のみ。
今の俺の精神は擦り切れてなくなっていた。
無感情で──無表情。
言葉の出し方すら忘れているぐらいだ。
俺は何も感じなくなっていった。
ただひたすら目の前の敵を倒すのみ。
そこには戦闘という言葉は相応しくない。
蹂躙だ。
ただ一方的に惨殺しているだけである。
モチベーションなんて物はもう存在しない。
目的を忘れひたすら倒していた。
俺のレベルは87。
アルがボスを戦ったのはLv58。
そのレベルはとうに超えている。
しかしこのフィールドはどうやら自分のレベルに合わせてモンスターのレベルも変わるように設定されていた。
ここだけで十分に事が足りてしまうのだ。
だからボスモンスターを倒す必要性を感じなくなっていった。
あくまで数値的な話しにおいてはだが。
──退屈もする。
──寂しくもなる。
──無感情にもなる。
そして──死にたくもなる。
そんな状態になっても行動しなかったというのだから、
俺はどうしようもなく。
──ボスを恐れていた。
だからひたすらモンスターを倒す事で、現実からにげていた。
改めてアルが凄い奴だと認識する。
あいつは俺のなかでの憧れの存在になっていた。
あいつの勇気がうらやましい。
俺はニートだ。そんなものは欠片も持ち合わせていなかった。
俺が戦っていたのは自分との自己嫌悪に過ぎなかった。
多分今の俺は客観的に見ると──精神異常者なのだろう。
一年間誰とも会話しなければ普通にそうなる。
俺は正直、この現実が嫌になってた。
こんな寂しい生活を送るくらいなら──死んだほうがマシだ。
心のそこからそう思えてしまうのだ。
ボーっとしながら戦闘していたら、どこか開けた場所についた。
──龍の間。
ここに来たのは一年前。
ここでアルと一騎打ちをし──別れた場所だ。
何かあったらこの場所に必ず戻ってくるから──
そう約束したのは今でも覚えている。
確か──絶対に死ぬなよ。
と言われてた気がする。
死んでもいいと思っていても死ねなかったのこの言葉のせいなのかもしれない。
そんな言葉を思い出して思った事は。
──帰りたい。
俺が久しぶりに抱いた願望だった。
俺は──扉を開く。




