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──アルと分かれて三十分が経過した頃。
「《アル》がパーティーから外れました」
システムが勝手にしゃべり出したのだ。
これが意味するのはアルがこの願いの地から脱出したのかまたは──死んだのか。
どちらかなのだろう。
正直どうなったのか気になるが、今の俺に確かめる術はない。
俺がここから帰還しないと確認の取りようがないのだ。
今の俺が出来ることはレベルを上げる事だ。
現在Lv30。
そういえば、アルに決闘でダメージを与えたからレベルが上がったのだった。
それにしてもレベルが十五も一気に上がるなんて……。
この一日でレベルが合計二十七も上がったとか……。
異常すぎる。
たしかアルがレベル三十の時に、クエスト分岐が起きたんだったな……。
それを思い出したのでクエストを確認してみる。
クエスト名:願い。
クエスト形式:幽閉
クエスト難易度:O級
依頼主:匿名
クエスト内容:???を二つ手に入れる。
参加条件:二人
外部通信:不可
ワープアイテム:使用不可
クエスト分岐
達成条件:《ミナト》はソロで水龍を討伐し???を手に入れる。
やっぱり更新されてた。
ひとまずは拠点に帰ろう。
とはいってもこのレベルだ。強いモンスター遭遇したらまずいだろう。
俺は称号《伝説のニート》の効果を使用した。
説明を見ると。
《伝説のニート》:気持ち悪すぎて誰も近寄らない。
モンスターすら半径5メートル以内に近づこうとしない。
凄まじい吐き気を催す文章が書かれていたが、この際気にしてはいられない。
今はこの称号に助けられているのだ。
発動すると茶色いオーラが身に纏った。
なにこれ……臭いんだけど……。
臭いが凄まじい。
生ゴミのような臭いを発している。
俺はその臭い一時間ほど包まれた後、拠点に戻った──。
15
デスゲームが始まってから一年と三ヶ月が経った頃。
俺のレベルは四十になった。
クエストクリアのためにももっと頑張ってレベル上げをしたいところだが、
一年間素振りのためを続けていたため、どうもその習慣が抜けないのだ。
一日置きにモンスターを狩りに行くようになった。
俺が二日に一度は休日がほしいと腐った考え方をした結果である。
休日は洞窟に篭ってイメトレ。
現段階では居合い切りを連続繰り出す特訓中である。
前回アルとの戦いでもう一回瞬時に出せれば勝てたかもしれないからだ。
だがどうも難しい。
これできるようになるにはもう少し時間がかかるだろうと踏んでいる。
末永く努力しよう。
そんな事さっきまで考えていた。
現在は泉の底を目指して潜っている所だ。
ここを潜り初めてもう一年が経った。
今日こそ底にたどり着いてやる。
前回のダイブで底から光のような物が見えたのだ。
だから今日は最初から本気で泳いでいる。
──二十分後。
現実世界でこれだけ息を止められていたら、永遠に塗り替えられないギネス記録をたたき出す事ができるだろう。
とうとう俺のHPが減り始めた……。
普段ならここで引き返すのがいつもの俺なのだが、死を覚悟して泳ぐ。
こんな事で死んでしまっては意味がないと分かっているのに。
あの光に何かがある。
そう思えてならないのだ。
多分、俺は一年前にこの泉に惹きつけられていたのだろう。
己の魂が光に吸い込まれるような感覚。
それを頼りに。
暗闇の中で光を追い求めた。
──後少し。
光にだんだん近づいてくるのを感じる。
それから10分潜った所で俺のHPがレッドゾーンに到達した。
もう戻る体力はない。
死との恐怖と戦いつつ、ひたすら潜る。
そして俺のHPが一割を切った時光の正体がわかった。
「まじかよ……」
思わず口から出てきた言葉だった。
泉の奥底にあったものは。
──精霊石だった。
この世界の設定では精霊が存在し、その精霊の恩恵で魔力という物が存在しているのだ。
精霊石とは精霊が封印されいている石の事。
超が付くほどのレア級だ。レアジョブのも凄いのだろうが、精霊石と比べたら足元に及ばないほどのレア度である。
俺は震えた手で精霊石に触れる。
その瞬間。
残り3%だった俺の生命線の動きを止めた。
息苦しさからも解放された。
そして──精霊石は輝きだした。
精霊が姿を現す……。
俺の目が認識したのは、水で出来た美しい女性だった。
透き通るような綺麗な肌ではなく、透き通っている肌。
「そなたが私の封印を解かれたのですか?」
これもまた美しい声だった。
思わず聞き入ってしまって返事を忘れるところだった。
「はっ、はい!」
俺がそういうと、彼女は微笑んだ。
「わたくしは水の精霊のウンディーネといいます。この度は本当にありがとうございます。お礼にこれを授けましょう。」
そういわれて渡されたはネックレスだった。
説明を見てみると、
水精霊の首飾り:ランク:SSS
重量:1
全水魔法が使用可能。
ウンディーネ召喚を可能。
SSSランクが出やがった……。
これ以上のレア度のランクは存在しない。
しかもなんだよこの効果。
精霊を召喚できるって……。
俺が驚いていると、システム音が響いた。
「称号:《水精霊の加護》を取得しました。」
これの説明はというと……。
水精霊の加護:ランク:SSS級
水とお友達。
と書いてあった。
毎回思うのだが、時々というかほとんどの確率で説明文がふざけてないか!?
と心の中に突っ込みを入れる。
説明文はふざけていても、これもSSS級。
価値感覚が麻痺してきそうだ。
まぁこんな事は二度とあるまいし、満喫しておこう。
──これを俺に渡したあと、ウンディーネは消えた。
とりあえず陸に上がろう。
興味本位で早速《水精霊の加護》を使ってみることにした。
すると、水中なのに全く抵抗を感じなくなった。
上に泳ぐと水が俺を後押しするように流していく。
ここに来るのに三十分も掛かった道を五分で戻ってこれた。
俺はとてつもなくすごい物を手にしたのかもしれない。
現在、俺は水面の上に立っている。
細かく言うと水面の上に立ち止まっている。
しかも俺の周りに水のオーラみたいなのを纏っている。
テンションあがる代物だった。
今日はかなり泳いだせいで疲れた。
飯食ってとっとと寝るとしよう。




