第3章 内の戦いと外の戦い
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コホック王都魔導供給組合からの契約解除の通告書が届いて2日経った。
父の姿はその朝もなかった。
書き置きには、また隣領の親戚を見舞うとだけあった。
アルフレッドは考えないことにしていた。
ヨハンが屋敷に来た。
杖の先に泥がついている。
「備蓄の魔石を数えた。倉には通常運転なら10日分ある。
供給が切れれば10日で終いじゃ。
じゃが食わせる量を落とせば、14日は持たせられる」
「つまり、供給が切れてから最長でも2週間で塔は崩壊するんだな?」
「そういうことじゃ。何もしなければ、じゃがな」
書斎の窓の向こうに、塔の頂が見えた。アルフレッドは机の上に紙を一枚広げた。
「割り方を選べると言ったな。じい、手順を聞かせてくれ」
「まず石に忘れさせにゃならん。魔力を吸う癖をじゃ。急に断てば内で割れる。
2日かけて少しずつ絞る。それから割る。割る作業は、1日で片づける。切り出しは上からじゃ。下から崩せば、全部が落ちる」
ヨハンの言葉にアルフレッドは腕組みをした。
「3日。供給が切れる日から始めれば、最短で3日目には作業が終わる。割れるまでの期限が2週間だから、そこまで慌てなくても良さそうだな」
「そうなる。ただし割ったことのある者はこの国にはおらん。わしとて勘じゃ。できればさっさと終わらせたい」
「請負の設計図には何か解体の手掛かりになるようなものはなかったのか?」
「ない。止められん造りじゃから、割る想定がないんじゃ」
アルフレッドは、机の隅から起債資産の管理規則を引き寄せた。
これは、借金をして取得した固定資産の取り扱いについて書かれたもの。
その第9条を開いた。
『災害防止のため、緊急の応急措置を講じた場合、事後の届出によることができる。
生命、財産への急迫した危険がある場合、その処分は必要最小限に限る』
「今回俺たちがやろうとしていることは王国の起債資産を、領主の一存で破壊するということだ」
高さ60メートル。質量3万トンの巨大な塔が果たして『必要最小限』に値するのかどうか……。
認められなければ違法な処分になる。
「作業を始める前に、応急措置として実施する根拠と、事後承認を求める手続きを同時に作っておこう」
「何をしたところで、割れて谷に降っても王国は知らんと言うじゃろう?」
老人の言葉にアルフレッドは頷いた。
「違法な処分。自然崩壊による谷への被害。
どちらも責任はヴェルン領が取ることになる。なら、選べるほうを選ぶよ。」
「割った石はどうする」
「漠然とだが……標石と同じ使い方はできそうか?」
「できる。あれはコナンの石じゃ。小片は魔力を吸わん。ただ鳴る。荷馬車が前を通れば、荷が重いほど音が低くなる。それだけじゃ。それだけの石になる」
「重さで、音が変わる……」
アルフレッドはその言葉を、紙の端に書き留めた。




