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僕らは正しい答えを見逃したようです。  作者: 八目律師
Vol.01 「ずっと後になってから、あれが『好き』だと気づいた。」
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Vol.01 Ch.007② 意外な五人組

25

  4月16日、土曜の昼。1年D組。

  「高木、ちょっと頼みがある。」

  「高木くん、こんにちは。」

  紫木を連れて、高木のところへ向かった。

  高木は顔を上げ、僕の後ろに紫木がいるのを見た瞬間、何か言いかけたが、すぐ眉を寄せて飲み込んだ。

  「Yo~何すればいいんだ?」

  たぶん、最初は「Yo~おカップルで俺に何の用?」とか言いかけたんだろう。

  「今日の練習前に、少しバスケコートに付き合ってくれないか。僕と紫木、クラス対抗バスケの記録をやることになってさ。紫木にルールとか記録の見方を教えたいんだ。」

  「Oh~そこまで言うなら付き合ってやるよ。」

  「ありがとうございます、高木くん。」

  殴りたい。

  でも紫木は、高木のあの軽い口調をまったく気にしていないらしい。

  「望月って、記録のやり方も知ってるっぽいよ。頼んでみたら?」

  おっ。珍しく有益な情報だ。もしかしたら、望月なら僕にも教えられるかもしれない。

  あれ?なんか急に、バスケという競技にそこまで詳しくない気がしてきたな。アシストって何だっけ。スリーポイントラインってどこだっけ。

  よし、あとで望月にマンツーマン指導でもお願いするか。

  「何の話してるの?」

  鞄をまとめ終えた望月が、ちょうど高木の席まで来た。事情を説明すると、望月もあっさり協力してくれる。

  「紫木さんも一緒にご飯行きませんか?」

  「えっ?私も?いいんですか?」

  なんだこの天使みたいな行動。さすが望月だ。

  「もちろんです!あ、奈奈ちゃんもちょうど来ました。こっちは私たち野球部のもう一人のマネージャー、加藤さんです!」

  こうして、妙な五人組ができあがった。

  教室後ろのバスケボールを持ち、そのまま昼食へ向かう。

  加藤と望月が紫木を囲んで話している間、横を歩く高木が、指でボールを回しながら小声で聞いてきた。

  「で、お前ら昨日の朝、どうだったの? マジで一緒に泊まったの?」

  うっ、そうだ、彼は当日の目撃者だったな。

  「誰に聞いた?」

  「いや、勘だけど。」

  「そんな噂、出てないよな?」

  「俺の知る限りはない。」

  それなら少し安心できる。

  「まあ、いろいろあったのは事実だけど、別に何かあったわけじゃない。」

  「だろうな。」

  「ただ、広まると紫木が困るかもしれない。」

  「Oh~安心しろ。俺、秘密を守るのが専門だ。」

  「望月にも言うなよ。」

  「了解了解。」

  必死に否定するより、こういう曖昧な返しのほうが高木相手にはちょうどいい。どうせ深く追及しない。ただ、過去の感じだと望月に少し漏らす可能性はあるが。

  「望月たちってすごいよな。つい最近までほぼ他人だったのに、もうあんなに楽しそうに話してる。」

  前を歩く三人を見ながら、思わずそう口にする。

  「女って、だいたいそんなもんだろう?」

  「まあ、そうだな。」

  昼食を簡単に済ませ、学校へ戻り、四百メートルトラックの中央にあるバスケコートへ向かった。真昼なので人は少ない。

  適当なコートを選んで鞄を置くと、加藤が珍しく自分から話しかけてきた。

  「時間、結構かかる?」

  「まあ、少しは。でも練習前には終わるよ。」

  「そっか。」

  そう言って加藤は、鞄から折りたたみ傘を取り出した。

  「奏音ちゃん~紫木さんも、一緒に入る?」

  どうやら日差しを浴びたくないタイプらしい。野球場のベンチは午後になると西日が当たらないから、今まで気づかなかった。

  そんなに太陽が苦手で、本当にマネージャーできるか?

  待って、何だ今の。奏音ちゃん?

  「はい。ありがとうございます、加藤さん。」

  「私はいい!ちょっとバスケ触ってみたい!」

  この二言だけで、紫木と望月の性格差がよく分かる。

  そうして僕と高木と望月は、軽くシュートやドリブルをしながら、コートのラインや記録表の見方を紫木に説明した。必要に応じて、高木や僕がスティールやブロックの動きも見せる。

  二時頃、加藤が時間を知らせてくれた。そこで一度解散し、僕と紫木はボールを教室へ戻し、高木たちは野球場へ向かった。

  「どう?少しは分かったか?」

  良見楼へ戻る途中、紫木に声をかける。

  「うーん……たぶんね。望月さんが記録表を説明してくれたのは分かりやすかったけど、テクニカルファウルとか、アンスポーツマンライクファウルとか、ああいうのはちょっと抽象的すぎて……」

  たしかに、そのあたりを説明していた時、紫木は途中から完全に処理落ちしていた。

  「そこは僕が見るから大丈夫。」

  そう言うと、紫木は少しだけこちらに顔を向けて、安心したように笑った。

  「羽冬がいてくれて助かる。もともと私を巻き込んだの、羽冬だけど。」

  「おい、巻き込むはひどすぎるだろ。どうせなら僕らに分かる競技のほうがいいだろ。」

  「はいはい。」

  教室へ戻ってボールを置き、僕は立ち上がって振り返る。

  その瞬間、すぐ後ろにいた紫木の近さに気づいた。慌てて止まったものの、もう少しで顎にぶつかるところだった。

  ……いや、君、近すぎるだろ。

  「うっ……」

  「ご、ごめん! 大丈夫か?」

  「だ、大丈夫……」

  顔をそらした紫木が目を開け、確認していた僕とちょうど目が合う。

  ……近い。

  さすがにこの距離だと、男なら鼓動が少しくらい速くなっても仕方ないだろ。

  気づけば、体は反射的にドアのほうへ逃げていた。

  「このあとどうするんだ?」

  少し距離を取ってから尋ねる。

  「私?そろそろ帰って勉強かな。」

  「相変わらず真面目だな。」

  「当然でしょ。いつもちゃんと勉強してるから、たまには今日みたいに安心して友達と過ごせるんだよ。」

  普段から勉強しているのは、単に成績のためじゃなくて、そういう意味もあるのか。

  「じゃあ、校門まで送るよ。僕は練習ないし、少しくらい遅れても平気だから。」

  「え、そんなに優しいの?もしかして本気で私を口説いたい?」

  久しぶりに聞いたな、そのセリフ。

  「嫌ならやめるけど。」

  「ちょ、待って。分かったから、少し付き合って。」

  校門で紫木と別れたあと、ゆっくり野球場へ向かった。

  最近、一人になるとどうしても思い出す。

  紫木姉に言われた、あの頼み。

  どうすれば、紫木姉の望む「傷つけない」になるんだろう。

  そもそも、彼女の言う「傷」って何だ?

  ―『女の子を、本当の傷を残すようなことはしないでね。』

  望月なら、分かるんだろうか。

  野球場へ着いて望月と加藤から聞いた話では、平日は来ない三年の先輩たちも、土曜だけは時々顔を出すらしい。今日も数人来ていて、他の一、二年とは明らかに実力差があった。正直、次元が違う。

  幸い、望月先輩は来ていなかった。だから気楽に望月と話せる。けれど、こういう話はやはり二人きりのほうがいい。加藤が近くにいたら、さすがに切り出しづらい。

  「望月。」

  「どうしたの、羽冬?」

  ちょうど加藤がふらっと離れ、ベンチに僕と望月だけが残った時、声をかけた。

  「今日の練習が終わったら、少し付き合ってくれないか。」

  望月の表情はほとんど変わらない。でも、何かを考えているのは伝わってくる。いつもの軽口と違う僕の声を、たぶん測っているのだろう。

  「分かりました。」

  その返事と表情は、普段の柔らかなものとは違い、前に一度だけ見たことのある、少し悲しさを帯びたものだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


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