第5話 聖剣士は試験教官を圧倒する
「ジュノー教官、今、本部から公開された第一班の受験者のリストです」
「ああ、ありがとう」
(彼の名前はたしか……新人教官で風剣士のライノだったか。二年前に成人して異例の出世でD級冒険者に昇格した天才剣士とか呼ばれていたっけなぁ。長期のダンジョン遠征でしばらく留守にしているうちに、マナエル支部の教官の顔ぶれもずいぶん変わったものだ。世代交代が進むのは良いことだが、少し寂しくもあるなぁ……)
「ライノ君だったかな。第一班の試験教官は君と私で交代で行う。よろしく頼むよ」
「はい、A級冒険者のジュノー教官とご一緒できて光栄です」
「分かっていると思うが、この班での試験は新人前衛職の者たちのスキル攻撃を手助けし、安全なスキル使用を学ばせる目的を含んでいる。この試験の後はホーンラビット狩りだが、その狩りにおいて本試験で学んだスキルを使用して安全にホーンラビットを狩らせることがわたしたちの役割だ」
「はい、了解しております!」
「スキル発動をためらっている者にはスキルの使用を促し、また、むやみにスキルを発動させる者には、最適なスキルの発動のタイミングを教えなければならない。ただ模擬戦闘をして勝てばよいと言うわけではないことを肝に銘じるように」
「了解いたしました、ジュノー教官。試験中よろしくご指導、ご鞭撻いただきたくお願い申し上げます」
「まあ、君は新人試験に参加したのが二年前だから覚えていると思うが、君ほどの剣士はそうそういない。緊張しすぎず、リラックスして臨んでくれ」
「はい、試験前に柔軟体操をして体を解しておきます」
「ああ、そうしてくれ」
(さて、最初の受験者は……聖剣士のミオという子だな。聖剣士は魔物特効があるスキルで容易に魔物を狩れるので、スキル頼りで剣術がおろそかになる傾向がある。この子に関してはスキルの発動だけでなく、基礎的な剣術の習熟が重要であることを学んでもらおうか……)
「ライノ君、柔軟をしながら聞いてくれ。最初の受験者の子だが君が担当してくれ。そして、スキルの発動だけでなく、基礎的な剣術の型ができているかチェックして、甘い点があればそれを指摘して、基礎的な剣術の習熟が重要であることを教えてあげてくれ」
「はい、分かりました」
「相手は成人したての女の子だ。あまり厳しくしすぎないようにな」
「はい、心得ております!」
「よし、そろそろ良い頃合いだ」
「試験を開始しよう―― 審判のデビット君だったな。試験を開始するので受験者を開始位置に案内してくれ!」
「はい、分かりました!」
「じゃあライノ君、頼んだよ」
「はい、行ってまいります」
「受験者ミオ君、模擬戦闘を開始しますので、開始位置についてください」
「はい!」
「ミオ君、僕はギルドの教官のライノ。新任の教官だけど、精一杯君のサポートができるよう努めさせてもらうよ。よろしくね」
「はい! よろしくお願いいたします!」
「緊張しすぎないよう、肩の力を抜いてね」
「お気遣いありがとうございます!」
「では、互いに礼! ……模擬戦闘始め!」
(……この子、基本の構えはできてるな……。足さばきも良い……。印象としてはしっかり剣術の基礎ができていそうだ……。打ち込みを見ないでもこの構えからそれなりの打ち込みができるのが予想できる。では、受けはどうだろうか……。僕の方から初撃を打ち込んでみるか……)
「ミオ君、初撃を僕の方から打ち込むので、それを受けてほしい。それなりの身体強化をしているので、多少手にしびれが来るかもしれない。木剣を落とさないよう、注意してほしい」
「はい! よろしくお願いします!」
「では、行くよ!」
(あれ? 何故振りかぶる?)
「聖斬撃!」
「え?」
<ドゴォォォォォォォォォォォォン!!>
第一班の模擬戦闘の初戦、試合開始直後、大音響と共に土煙が立ち上り、周辺はしばらく土煙で視界がふさがれた。 土煙が晴れた後、審判が見たのは、穿たれた地面と、横たわり気絶しているライノ教官の姿だった……。
「も、模擬戦闘終了! しょ、勝者、受験者ミオ君!……………」
「ありがとうございました!」
ミオが退場した後、第一班の模擬戦会場はとても気まずい雰囲気に包まれ、しばらく誰も動けなかったという…………。




