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34話 おまけ

 えっと、今日は。

 ナナリ・ルンドベリ・スタンピードです。

 こちらの時代に戻って来て、ようやく周りも落ち着いてきましたので、今日は近況報告をしたいと思います。


 まず最初は、お店の愉快な常連客、ケンプ商会のケンプ社長と商会連合のクリッタ会長のお二人です。

 14年前すでにおじいちゃんでしたので、流石に現役は引退しています。

 でも相変わらずお店で賭けをしながら若い女性客を笑わせていたりします。先日ガイドブックで紹介された記事には店の名物トリオと書かれていました。


 え、コンビじゃないかって?

 それが、どういういきさつか知りませんが最近ユニオンメールのハンスさんがお仲間に加わっているんです。

 おじいちゃん達は『英才教育じゃ』とか『帝王学を学ばせてましてな』なんて言っていますが、ユニオンメールの女子職員とお茶会の約束を取り付けてたって知ってるんですから。



 ハンスさんも最年少局長のホープなんですから、そろそろ身を固めて落ち着けば良いのにと心配してしまいます。

 まだお孫さんのマリーちゃんとの仲を認めてもらっていないようですが、奥様がドレスを発注していたので多分時間の問題だと思います。クリッタさんも、いい加減諦めればいいのに。

 



 そんな元気なおじいちゃん達とは対照的に、物静かなビッグマム、ラブール商会のミセスラブールは、体調を崩されて北の湖水で有名な地方で療養中。

 時々パウンドケーキが送られてきたりするので、少しずつ快方に向かっていると思いますが、心配です。近々秘密のレシピを持ってこっそり訪問しようかな。

 素敵なドレスのお礼もしないといけないし。



 

 報告といえば、シエラおばさんが再婚しました。

 ところで、3回目でも再婚というのでしょうか。

 『誠実にあれ、なのよ』とスタンピード家の家訓を曲解し、欲望に誠実に生きていらっしゃいます。

 ちなみに、おばさんと共同開発した猫式懐中時計は、今やルンドベリ包装店のトップブランドに成長しています。なんかもう、包装店じゃないですよね。こういうの多角経営っていうんでしたっけ。



 メイドの皆様も、明るく元気に働いてます。

 メイループさんはようやくまた猫を飼い始めたのだそうです。クルトンが死んでから、二度と猫は飼わないと言っていたのですが、どうやら過去から戻った私を見てクルトンとの楽しかった日々を思い出してしまったみたいです。

 やっぱり猫との生活が忘れられないんですね。

 

 ところで現女中頭のアンナさんは、最盛期のメイループさんよりも畏れられているそうです。

 何もかもそつなくこなし、部下のミスもさりげなくフォローし、浮いた話も無く仕事に忠実。まさに理想のメイドだと、新人メイドに崇拝されているとも聞きます。

 でもね私知ってるんです。


 私にとっての恩人でもあるランテール元船長、そうですオリアナを転覆から救った英雄が、時々スタンピード家を尋ねてくる理由を。

 最初は生まれてきた私を見に来ていたそうですが、次第に目的が別の所に向いていったようです。

 時々視線がアンナさ…あ、なんか悪寒がしたので次の話題に移りたいと思います。




 そろそろ私の両親の事をお伝えしておきましょう。


 父グラベルは、外交官の職を辞してある会社の株主になっています。そう、ユニオンメールから独立したハンスさん達の会社に出資したのは父だったそうです。先見の明があったんでしょうか、国内随一の売り上げを持つ会社に育つなんて当時は誰も想像すらしていなかったとか。

 もちろん迷惑な、もとい、大切な懐中時計は父に返しておきました。

 もう二度と触ることは無いでしょう。


 母アーネには、戻ってきてから毎日あちこち連れ回されています。

 サーカスや寝台特急や豪華客船といった楽しいイベントを私に体験させまいと我慢してきたので、その反動が来たようです。

 ある日家に帰ったら、大量のメイド服が届けられていたのには驚きました。

 1ヶ月ほど、ナナリごっことやらに付き合わされた事は記憶から消し去る予定です。


 最後に、いまだに古ぼけた小さな包装店を改装していない『ルンドベリ包装店』ですが、新しいコーナーを設けるのだそうです。

 今度は花嫁さんをパッケージするんだとか。

 

 以上、ナナリ・ルンドベリ・スタンピードがお送りしま―

 

 

 え、なに?

 

 よく聞こえないよ

 

 

 

 

 

 

 =============================================================================

 

 「酷いじゃないか、ナナリ」

 「えー何がですか」

 「苦労して蝋管を手に入れたってのに、最後まで言ってくれなかった」

 「だって…記録に残ったら恥ずかしいですもん」

 「ちぇ、何回も聞きたかったのに」

 「そんなの、直に聞けるからいいじゃないですか」

 「ほんと?」

 「ほんとですよ」

 「じゃあ、今お願い」

 「え、恥ずかしいからイヤ」

 「ああ、蝋管高かった…俺の給料…」

 「わ、わかりましたよ」

 「おおっ」

 「えー、ごほん。えーっと、ほんとに言わなきゃだめ?」

 「だめ」




 「リオネル、大好きよ」

 

 

 

 「あ、蝋管まだ回ってた」

 「ばかっ!!」

 

 

 

 おわり

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