王子の様子がおかしいです
王子はなにをおっしゃっているのでしょうか、とフィオナは固まっていた。
今、私と結婚するって言いました?
私はこの人に婚約破棄されて、ひとり、国の外れに行き。
事業を興したり、町を発展させたりしないといけないのでは?
それが悪役令嬢というものだと聞いている。
そのために、強くならねばならないし。
いろんな知識を詰め込まねばならないと思い、今まで頑張ってきたのだ。
どうせ突き放されるのなら、親しくなるまいと、王子とも会わないようにしてきたのに――。
王子はフィオナに結婚を申し込んだあと、ひそひそとヘルマンと話していた。
「全然話と違うではないか」
という王子の声が聞こえてくる。
「そうですね。
確かに美しいですが。
高慢な美女というより、愛らしい感じですね」
私もあれからちょっと調べてみました、とヘルマンは言う。
「やはり、近年、周囲の国々で王子の婚約者が悪役令嬢に変化し、災厄をもたらしているようです。
そして、婚約破棄されているとか。
ですがまあ、婚約破棄されて、王子と別れたあと。
悪役令嬢と化した婚約者の方は、他の男性と幸せになっているようですよ」
いい知らせなのに、王子は、なんとっ、と叫ぶ。
「ということは、フィオナにも、私と別れたあと、他の男と幸せになる未来が待っているということか!」
いいや、そんなことは許さぬ! と王子は叫び出す。
「フィオナよっ。
私以外の男と幸せになるなど許さぬっ。
お前は私のものだっ。
もし、私と別れるというのなら、お前を不幸のどん底に突き落としてやるっ!」
――悪役王子!
とフィオナはヘルマンと二人、衝撃を受ける。