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悪役令嬢、一生の不覚っ!  作者: 菱沼あゆ


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3/4

聖女を薙ぎ払え


「フィ、フィオナ様っ。

 王子があなたのおかげで、おかしくなってるんですがっ」


 これが悪役令嬢の力なのですかっ?

とヘルマンに言われるが、そんなことは自分にもわからない。


「会ったばっかりなのに、王子、あなたに骨抜きではないですか~っ」


 うろたえる王子の忠実なる部下、ヘルマンが可哀想になり、フィオナは王子に言った。


「あの、私は昔はこの国の聖女候補と言われていましたが。


 王子の婚約者と定められたときから、ニセモノの聖女と言われ、悪役令嬢と呼ばれて、疎まれたり、(あわ)れまれたりしてきました。


 こんな私は、あなたにはふさわしくないと思います」


 だが、王子は一歩近づくと、フィオナの手を握り言う。


「悪役令嬢というものが、結局、なんなのか、私には、よくわからぬのだが。


 そう呼ばれ、疎まれながらも、お前は耐えてきたのだろう。


 そんな強い娘こそが、いずれ、この国を()べるであろう私の妃にふさわしいと思う。


 フィオナよ。

 私にはお前が必要だ――」


 悪役令嬢と呼ばれるようになった私は、この国には不要なものだ。


 いずれ、王都から追いやられ、別の場所に追放されたりするのだろうが。


 せめてそこで、みんなのために役立つ者になろうと気を張って生きてきたのに。


 自分に一番辛く当たるだろうと覚悟していた王子に優しくされ、不覚にも泣いてしまった。


「王子は真の聖女とやらと一緒になる運命だと聞いて。


 ちゃんと悪役令嬢としての役割を果たしたあと、

 ひとりで生きていこうと覚悟を決めていましたのに」


 やさしくされたら、覚悟が鈍るではないですか、というフィオナの手を強く握り、王子は言う。


「フィオナよ。

 なんと健気なっ。


 悪役令嬢になろうと頑張るお前を私が支えようっ!」


「いや、あなたが支えてどうすんですか……」

とヘルマンが言う。


「真の聖女というものがほんとうにいるのなら。

 そいつが入ってこないよう、私が城門をすべて閉じてやるっ!」


「いや、食料も入ってこなくなりますよっ!?」

とヘルマンは言うが、王子は崇高な微笑みを浮かべ、


「私は、この愛に殉じる」

と言う。


「いやいやいやいやっ。

 一人で殉じてくださいっ。


 っていうか、真の聖女はどうするんですかっ?」


「いつまでも城内に入れなければ、いずれ、城下の町で恋にでも落ちるだろう」


「恋に落ちずに城壁を乗り越え、入ってきたらどうするんです?」


 二人のやりとりを聞きながら、フィオナは思っていた。


 いや、あなたがたの中の聖女は、どんなイメージなんですか。


 今の話を聞いて、私の中では、カサコソ動く女郎蜘蛛みたいになってしまっているのですが……。


「聖女が恋に落ちるよう、次々、町の若い男をあてがえ」


「まるで、ハーレムですね……」


 フィオナが苦笑いして、そう呟くと、


「なんだ、うらやましいのか」

と言ったあとで、王子は、ハッとしたように言う。


「お前、私より、大勢の男たちによるハーレムの方がよいと言うのかっ」


 おのれ、閉じ込めてやるっ、と王子は言い出す。


 ひっ、悪役王子っ!

とまたも二人は怯えた。



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