番外編
目を覚ました私が一番最初に見たのは、見慣れた病室の天井だった。ピーピーと機械が鳴り、点滴の終わりを告げている。この音で目が覚めたのだろう。
「舞さん、点滴変えますね」
音に気がついた看護師が、すぐに点滴のかえを持ってきた。さすがベテラン、テキパキと作業してアラームはすぐに鳴り止んだ。
「ありがとうございます」
「いいえ。何がありましたら、すぐに呼んでくださいね」
看護師はにっこり笑うとすぐに病室を去っていった。一人になった私は思考を巡らせ、先ほどみた夢について考えた。
——あの男の子、アイチ君に似てたな。
アイチ君とは、私が個室に移る前に同室だった男の子だ。人を笑わせるのが好きで、イタズラをしてはしょっちゅう看護師に叱られていた。アイチ君が学校に通っていたら、夢の男の子のようにイタズラを仕掛けて周るのだろう。
彼と離れてからもう2ヶ月になる。「よくなったらお見舞いにいくよ」といっていたが、この2ヶ月、一度も病室を訪れることがなかった。それはつまり、そういうことだ。幸運なのは、まだ亡くなったという噂は聞かないことだ。まだ希望はある。
私は再び夢のことを考えた。今日の夢はありふれたものだったが、日によってはかなりファンタジーな夢を見る。先週は天使が出てくる夢も見た。私はどちらかというとファンタジーな夢の方が好きだった。現実的な夢もそれはそれで楽しいが、起きた後虚しくなってしまうのだ。文化祭も部活も、私には縁がない。きっと、一度も経験せずに終わるのだ。せめて夢で体験したい、と思うと同時に、どうせ経験できないなら知らないままでいたいとも感じる。
点滴が効いてきたのか、また眠くなってきた。今度はどんな夢を見るのだろうか?
——楽しい夢だといいな。
私は睡魔に逆らわず目を閉じた。




