第一夜
こんな夢をみた——
今日は文化祭。私はステージを観覧していた。今の出し物はカラオケ大会。採点で最高点を出した人には景品も出るらしい。最新のヒット曲からアニソンまで、出演者はそれぞれ好きな歌を歌っている。自ら立候補するだけあり、みんなかなり上手い。中には私が普段は聞かないような曲もあり、私はとても楽しんでいた。
「おーい、遙。いたいた」
昭和のヒット曲に耳を傾けていた私に同じクラスの大輔が声をかけた。私を探していたようだ。
「あっ、大輔。どうしたの?」
「どうしたのじゃねーよ。そろそろ遙の番だぞ」
はて?私の番とはどういうことだろうか?クラス展示の店番はもう済んでいるし、特に思いあたる節がなかった。キョトンとしている私に、焦れたように大輔が続けた。
「カラオケ大会!お前も出るんだろ?急がないと」
「……カラオケ大会?私出ないけど……」
「何言ってるんだよ。自分で書類出したんだろ。見ろよ、ちゃんと出演者一覧に乗ってるぜ!」
大輔が私の目の前に関係者用の書類を突きつけた。出し物のカラオケ大会の欄をみると、確かに私の名前、田中遙の記載がある。私はびっくりして目を見開いた。
「えっ、なんで!私知らない!本当にしらないんだって!」
「そんなこと言ったって、ステージに穴空けるわけにはいかないじゃん。仕方ないだろ、覚悟決めろよ」
必死に首を振る私を無視する様に、大輔は私を引っ張ってステージ裏へと連行して行った。
「あっ、遙ちゃん!よかった。間に合ったんだね!」
ステージ裏に着くと、友達の朋花が駆け寄ってきた。どうやら、カラオケ大会の裏方をしているようだ。
「朋ちゃん、違うの。私、エントリーしてなくて……」
「そうなの?遙ちゃんが嘘を吐くとは思えないんだけど……。何かの手違いかな?」
「そう、きっと手違いだよ。似た名前の人と間違えたとか!」
「うーん。書類上だと次の次は遙ちゃんの番なんだ。今から代役を探しても間に合わないし……。遙ちゃん、なんとかならない?」
朋花は両手を合わせて涙目で私に頼んできた。ステージを成功させたい一心なようだ。私はどうしようかと高速で頭を回転させた。
ステージに出るのは恥ずかしいけれど、朋花は大切な友達だ、断るのも気が引ける。私は多分音痴ではないだろう。採点でも時たま90点台がでるのだ。少なくとも、失笑されるような事態にはならないだろう。もしかしたら、優勝してしまったりして……。
そもそもプラス思考の私の頭の中には、たちまち薔薇色の未来が描かれた。
「うーん。仕方ないな。下手っぴでも笑わないでね」
「ありがとう!笑わない、笑わない、応援するからね」
私が出場を決めると、朋花は私の手を握り、喜んで飛び跳ねた。そのまま、急いで打ち合わせをする。歌う曲を決めてデンモクへと入力し、ステージ脇へと移動した。
ステージ上では私の前の出演者が歌い終えるところだった。彼が舞台を降りたら、司会が私を呼ぶ。出演を前にさすがに緊張してきた。
「大丈夫。何かあったらサポートするからね」
強張る私の手を朋花が握る。私もその手を握り返した。
「……素晴らしい歌声でしたね。斉藤さん、ありがとうございました!」
遂に歌唱が終わり、出演者が拍手を浴びながら舞台を降りた。次はいよいよ私の番。胸の高鳴りを抑えつつ、名前が呼ばれるのを待っていると——
「さて、カラオケ大会は以上になります。それでは、優勝の発表です!」
あれ?おかしいな?終わっちゃったぞ。私と朋花は顔を見合わせた。
——そこで目が覚めた。




