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第1話 魔の森へ追放

「エルダ様、大変残念です。御武運を」

「送って頂きありがとうございました」


 僕を辺境の魔の森のほとりまで送ってくれた馬車が去っていく。

 それをあえて見送ることはせず、僕は目の前に広がる人類未踏の、魔物がはびこる広大な森林地帯に向き直る。


 ここ魔の森が、僕、エルダ=ラースロットの追放先だった。


 僕はラースロット家の末っ子として生まれ、先日成人を迎えたばかり。なのだが、その成人の儀で授かったスキルが良くなかった。


 そのスキル、マッピングは、儀式官の鑑定スキルによると、通った場所を地図としてスキルボード上に投影させるというもの。


 民の先頭に立って戦うことを求められる貴族としては、直接戦闘に使えるスキルの獲得が必須なのだ。

 逆にそれ以外の生活スキルとされるものを得た場合は、貴族の家にふさわしくないと死地へと追放されるのが、古くからの習わしだった。


 なので、その例に漏れず、僕も役立たずとして辺境のこの地へと追放されてしまったという訳だ。

 ようは後腐れなく、魔物と戦って死んでこいということ。


 僕は腰のショートソードの柄をぎゅっと握りしめる。


 ──死にたく、ないなー。とはいえ、追放に逆らって、人類域に戻れば、家名に泥をぬった上で死罪は確定。生き延びる道はこの先にしかない。せめてスキルが少しでも、役にたってはくれないものか。


 これまで何度か試した自身の授けられたスキル、マッピングをここでも改めて使用してみる。

 スキルボートが開き、僕の周辺の場所が地図として表示される。


「──あれ。色が違う部分がある」


 地図に、成人の儀の会場や、家で使用したときとは明らかに異なる部分があった。

 地図が、色分けされているのだ。そして、もう一つ。


「これは、この青色になっているのが魔の森ってことか。それと、この丸は……もしかして魔物の位置か?」


 スキルボート上の地図上では丸い点が動いていた。それも、複数。試しにその一つに触れてみると、反応がある。


「──すごい、魔物の名前が出た。マッピングスキル、もしかして、使えるんじゃないか……」


 僕は一筋の光明が見えた気がした。このスキルを使えば、魔物と出会わずに森を進めそうだ。


「こうやって見ると、魔物の数もそこまで多くないみたいだ。よしっ」


 僕はマッピングスキルを使用したまま魔の森へと分け入るように進み始めた。


 ◆◇


 木に登った僕の眼下を、魔物が一体通りすぎていく。魔の森で初めて間近にみる魔物だ。


 ──本当に、マッピングスキルの名前の通りだ。これは、使えるぞ。


 事前にスキルにより名前のわかっていた魔物、レッドリザードがマッピングの地図から消えるまで僕は息を殺して待つ。


 レッドリザードは四足歩行の真っ赤な表皮をした大型のトカゲの魔物だ。正面から戦えば、成人したばかりで戦闘スキルを持たない僕なんて一瞬で食い殺されてしまう相手。


 いや、例え戦闘スキルがあったとしても、それこそ騎士ランクの実力がなければ一人で倒すのは難しいと相手だとかつて習っていた。


 ごつごつとした表皮が岩のように固く、生半可な攻撃スキルでは傷さえつかないとか。


 ──だけど、こうやって行動が事前にわかるのであれば、いくらでもやり方はある。何より、今のところ嗅覚の鋭い魔物がいないのは助かる。


 マッピングスキルの地図で、これまで現れた魔物を思い出して僕は、ほっとため息をつく。

 嗅覚の鋭い魔物がいる場合は、入念な臭い消しが必要になるのだ。

 そして、今のところ、臭い消しに使えそうな香草の類いは魔の森には生えていなかった。


 ──あとはもう、泥を入念に体に塗り込むしかないけど、体温も奪われるし、何より汚れるからな。出来ればやりたくない。


 そんなことを考えながら木から降りたのだが、それが仇になってしまう。

 一番下の枝から飛び降り、着地した瞬間だった。僕の足元の地面が突然、崩れる。


「えっ」


 そんな驚きの声をあげるのが精一杯だった。

 気がつけば真っ暗な中、僕は落下していた。

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