4. 睡眠
あれから一通り食事を終え、満足したのか。
口の周りに赤をべっとりとつけたままこちらに向かってくる彼にため息が出たのは言うまでもない。
「ん。」
手に持った肉の塊を差し出してくるルーシェだが、空腹とはいえ食べたことのない生肉。食す勇気はないと首を横に振ればムッとした表情が見えた。
「拒否権なんて与えてねえ。」
「私は人間よ?貴方のように生肉を食したりはしないの。」
「なんだ、焼けば良いのか?」
そう言うと口から火を吹きこんがりと焼けた肉を手渡してくる。
当然のようにしている彼につい受け取ってしまったが、本当に食べられるのだろうか。
あまり断るとまた巨大ミミズの話題に戻りそうで怖いと一口含んでみた。
猪は豚を品種改良したものだと聞いたことがあるが、ここの猪もどきは鶏肉のような食感と味をしている。
意外と美味しいと食を進めていけば満足そうに笑みを浮かべ頷くのが見えた。
全て食べ終えた頃。
急にあたりを見渡したルーシェは視線を鋭くする。
「そろそろ夜が来るな。」
「まだこんなに明るいのに?」
「マグマで光ってるだけだ。4階層の夜は闇の悪魔が支配する階層だ。あいつは大量発生するから厄介なんだよ。」
「闇の悪魔…?それに大量発生って…。」
何だか嫌な予感がする。
空を見上げると鳥のような何かが明らかに増え。
これが彼のいう闇の悪魔なのかと眺めているとルーシェに抱き上げられ、近くにあった洞穴に入っていった。
暗く何も見えず、思わず彼の服を掴むと火が見え、彼が吹いたのだろう。
マグマが現れ、一気に視界が晴れる。
「見えるか?」
「ありがとう。」
「っ。」
「どうしたの?」
「何でもねえよ!早く食って寝ろ。」
「まだ眠気はないわよ。」
「本当にそうか?眠そうな顔をしているぞ。」
「そんなわけ…っ。何だか急に眠くなって…。」
先程まで一切感じていなかったはずの眠気に襲われ、瞼が落ちていく。
誰かに抱きとめられるのを感じながら深い眠りに落ちていくのだった。