1/6
1. 終わりと始まり
乙女ゲームの物語に沿って行動すればやがて処刑されると分かっていたけれど、もとより人に優しくするのは苦手だからと悪役令嬢と変わらぬ道を歩もうと決めていた。
だから今から行われる絞首刑にも後悔は何一つない。
首にかけられた太い縄。
足元はレバーで開く作りになっており、ゲームで見たシーンと同じなんだと他人事のように眺めていた。
やっぱり苦しいのかな。
周りに集まる野次馬達に混ざって公爵とヒロインがこちらを睨みつけている。
「最期に言い残すことはあるか。」
執行人にそう声を掛けられるが、早く終わらせて欲しいと首を横に振れば王の頷く姿が見えた。
それと同時にレバーが引かれ、足元の扉が開くと重力に沿って身体が落ちていく。
首の骨が折れてそのままという可能性もあると聞いたが神様は無情だ。
苦しいと身体が酸素を求め、目に涙が浮かぶのを感じる。
泣くものかと思っていたから少し悔しい。
遠のく意識に二度目の人生の終わりを感じながら逆らうことなく目を閉じるのだった。