夏央と美衣だけの夜
「なっち遅いぞ!私はもう世界の人たちを蹴散らしている!!」
「早いんだよ!」
ちょうどミー子さんが相手に勝ったところだった。
やっぱミー子のサンダルフォンは強いですね・・・。
「てか、よくサンダルフォンの追尾ミサイルを操作できるな。」
「慣れれば余裕だよ。それこそなっちのセラフィエルだって軌道の設定と操作が複雑じゃん。」
「まあそうなんだけど・・・。」
サンダルフォンのミサイルはリアルタイムで素早い操作が要求される。
俺はそんなんできない。
「久しぶりに対戦する?」
「勝てないですね。」
「腕が鈍ってるなら私が鍛えなおしてやろう!!」
「何回倒されるんだろうなあ~・・・。」
「本当に鈍っておりますね。」
「歯が立たねえ・・・。」
今までよりも強く感じるのは俺が弱くなったのか、それともミー子がめちゃくちゃ強くなっているのか。
「いいね、久しぶりになっちとこうやってゲームやるのも楽しいね。」
「進路決まるまでは忙しかったしな。ミー子の声も戻ってバタバタしてたからな。」
「確かにね。」
「寄りかかられると左手の操作が厳しくなるよ?」
「その分、私は右腕の操作が難しくなる。」
「それでも簡単にボコされているんだけどね・・・。」
力量の違いが分かる。
「じゃあこれからなっちの体力をちょっとずつ削っていくね」
「おおおおおおお!?」
追尾ミサイルが的確にこちらの体力を削りにかかる。
「逃げても無駄無駄~。」
「負けたー!」
やっぱ勝てる気がしない!!
「もともとメタトロンは細かい動きには対応しづらいキャラだからね、サンダルフォンとは相性悪いよ。」
「あんまり細かい動きをするキャラは操作も苦手なんだよ。」
「なっちはパワータイプだからね。」
「一応それで世界ランク60位までは上がったんだぜ・・・?」
「楽しかったね。」
「そうだな。」
久しぶりのゲーム、楽しかった。
「んじゃあそろそろ帰ろうかな。」
「・・・帰っちゃう?」
「ん?」
立ち上がった俺を、ミー子が見上げる。
「今夜は・・・そう、あの、一緒にいたいなって。」
「なるほど?」
「私、あの、そろそろいいかなって。」
「そろそろ・・・あっ。」
ミー子の言いたいことが分かった途端、俺の顔が熱くなるのが分かった。
そのまま、ミー子と見つめ合う。
「・・・あー、っと。」
「・・・。」
ミー子も顔が赤い。
「な、長年連れ添ってもその話はあれだな、言葉に詰まるな。」
「まあでも、結局は避けられない話だし・・・。」
とりあえず、ミー子の隣に座る。
「まあその、確かに避けられないな。」
「う、うん。」
「俺も目をそらしてた感じあるしな・・・。」
ミー子はそれ関係で一度怖い経験をしているわけだし。
「声も戻ってさ、進路も決まってさ、そろそろいいかなと。」
「怖くはないのか?」
「・・・まあもちろん、ちょっとした不安はあるけどさ。」
「俺も、ミー子に嫌な思いさせないか不安なんだよな。」
「でも、うやむやになるよりはいいかなって思って。」
ミー子がそのままベッドに寝転がる。
「・・・どうかな。」
それを見て、ミー子のそばに手をつく。
「怖かったりしない?」
「・・・なっちなら、大丈夫。」
「目が泳いでるぞ。」
「・・・緊張してるだけだよ。」
明らかにミー子の身体が強張っている。
「ミー子、いったん落ち着こうか。」
「うん。」
ミー子を起き上がらせ、肩に手を置く。
「肩、震えてるぞ。」
「怖いわけじゃないんだけどね。」
もたれかかってくるミー子。
「私は・・・今日、本気だよ。」
「俺はいきなりだったからビックリだけど・・・。」
「まだなっちに言ってなかったんだけど、実は今日ね?」
「うん?」
「・・・お母さん、帰ってこないんだよね。」
・・・なるほど。
「緊張はしてるけど・・・その、覚悟はできて・・・ます。」
「・・・分かった。」
一度、ミー子を抱きしめる。
「なっち、すごく心臓が鳴っていますよ。」
「う、うるせ。」
こんなの緊張するに決まってるだろ。
「えーっと・・・。」
「おお、なっち、やっぱり身体は男の子だ。」
ミー子が俺の身体を服の上からぺたぺた触る。
「わ、私のも触ってみてよ。」
赤い顔で手を広げるミー子。
ど、どこを触ればいいというんだ。
「お、おお・・・えへへ。」
とりあえず頭を撫でてみる。
いや、本当にどこを触ればいいのかわからないんだ。
何せまったく経験はないもんだから・・・。
「でもまあ、こう抱きしめるとね?めっちゃ女の子だなあと思う。」
「足とかお腹とかは、毎日走ってるからちょっと女の子らしくはないかも。」
「そこも含めてミー子の魅力ですよ。」
「あ、ありがとう。」
やばい、顔が熱い。
心臓も早鐘を打ちまくっている。
これ、ちゃんとできるんだろうか。
「大丈夫ですよ、なっちさん。」
「う、うん?」
ミー子が俺の腕を引き、自分の胸まで持って行った。
「ちょ、ちょっ!」
「・・・ほら、私もすごく、緊張してる。」
「お、おう、お、そうだな。」
「ふっふふ。」
ミー子の肩に手を置くと、ミー子がこちらを見上げる。
「うん、いいよ。」
ミー子のカーディガンを脱がすと、細くて白い腕があらわになった。
「白いなあ。」
「気を付けてる。女の子だからね。」
「あんまじっくり見たことなかったけど、ミー子って肌綺麗だな。」
「胸とか服装とか、見かけが女の子らしくないからね。できるところを、と思って。髪も前よりは伸びたでしょ?」
「伸びたなあ。ちゃんと手入れされてる・・・。」
「ふっふ、髪は女の命なのだよ。あんまり長いの嫌だからこのくらいで十分だけど。」
「その長さ、似合ってるよ。」
「そういってもらえると嬉しいな。」
ミー子の髪を梳いて、再度頭を撫でる。
「こう、なっちに頭を撫でてもらえると安心するんだよね。」
「俺はミー子の声を聴けただけでも安心だよ。」
「えっへへ。」
ミー子が恥ずかしそうに笑う。
やっぱこの顔、かわいいなあ。
「ねえ、なっち。」
「うん?」
ミー子がころん、とベッドに横になる。
「肌、綺麗って言ってくれたよね。もっと、見て。」
そういって、ミー子が寝間着を脱ぐ。
普段は見ることのない、肩や腹部があらわになった。
まあ、さっき風呂で見ちゃったんだけど。
「いい匂い。」
「匂いからいくか、この変態。」
「変態は否定できない。」
「なっちも上脱いで。」
「恥ずかしいな・・・。」
「私脱いだんだけどお!?」
「わ、分かったって。」
ミー子に怒られ、俺も上を脱いだ。
「なっち、ぎゅってしておくれよ。」
「お、おう。」
お互い素肌の状態で、抱き合う。
「へへ、これが本当のスキンシップっつってな。」
「だいぶ緊張しているようですねミー子さん。」
「・・・ふざけてないとやってらんないって。」
「顔、真っ赤ですよ。そろそろ限界かい?」
「ぬかせ、なっちだってゆでだこみたいになってるじゃろがい。」
実は俺もかなり限界。
「・・・ねえ、なっち。」
「どうした?」
「私たちがこのままここでやっちゃって、これから変な感じになっちゃったりしないかな。」
ふっと、ミー子の声のトーンが下がる。
変な感じ・・・よそよそしくなるとかかな。
いや・・・。
「大丈夫だと思うよ?」
「うん?」
「変な感じ、というよりはだけど・・・。」
「うん・・・。」
「お互いのことが、もっと大切になるんじゃないかな。」
「・・・おお。」
ミー子が感心したような声を出す。
「・・・と、言ったところで、だ。」
「うん?」
「そろそろ、いいかな。」
「・・・!」
ミー子が目をそらした。
目を閉じ、深呼吸をする。
そして、意を決したように、こちらを見た。
「・・・いいよ。」
「じゃあ・・・。」
「あ、でも、その前に。」
行動を起こそうとした俺を、ミー子が止める。
「な、なんだ?」
「あ、あの・・・私のこと、ちゃんと名前で呼んで?」




