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整理整頓しかできない俺、異世界では世界の法則まで片付けられるようです  作者: ももにく


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第58話 管理者にならない理由


【候補者】


【蓮】


その文字が。


無数の世界の前に浮かんでいた。


「……また管理者か」


俺は頭を抱えた。


最初に異世界へ来たときも。


管理者候補と言われた。


そのときも。


俺は断った。


そして今。


世界の外側にまで来て。


また同じことを言われている。


「蓮」


エリスが心配そうに俺を見る。


「嫌なら」


「断っていいんじゃない?」


「……」


俺は。


少し驚いた。


「いいのか?」


「うん」


エリスは。


迷わず頷いた。


「蓮は」


「世界を守るために」


「管理者になる必要なんてないよ」


リナも。


笑う。


「そもそも蓮が管理者になったら」


「絶対忙しくなるじゃん」


「……そこ?」


「大事だよ」


アルベルトも。


苦笑する。


「君が四六時中、世界の整理をする姿は見たくないな」


フェンリオスまで。


「グルル」


賛成らしい。


ノアは。


俺を見て。


「蓮は」


「蓮でいればいい」


ミラも。


頷いた。


「世界を作った私が言うのも変だけど」


「世界は」


「誰か一人が全部決めるものじゃないと思う」


俺は。


みんなを見る。


そして。


ゆっくり前を向いた。


「じゃあ」


俺は。


浮かんでいる文字に触れる。


「辞退する」


【確認】


【管理者候補を辞退しますか】


「ああ」


【理由を入力してください】


「……」


何を書けばいい。


少し考えて。


俺は。


文字を入力した。


『俺は、世界を管理したいんじゃない』


『世界の中で生きたい』


その瞬間。


無数の世界が。


一斉に光った。


【受理】


【管理者候補:解除】


「……終わった?」


すると。


新しい文字が浮かんだ。


【代替案を提示します】


「代替案?」


【管理者不在型】


【共同自律構造】


【採用可能】


俺は。


目を見開いた。


「そんなの」


「最初からできたのか?」


すると。


始原管理者だった少女が。


少し笑った。


「できなかった」


「え?」


「私は」


「誰か一人が」


「全部を持つことしか」


「知らなかったから」


彼女は。


自分の胸に手を当てる。


「でも」


「あなたが」


「私の願いを」


「整理してくれた」


「だから」


「今なら」


「手放せる」


彼女の身体から。


最後の管理権限が。


光になって離れた。


それは。


無数の世界へ。


一つずつ。


降りていく。


【管理権限分散】


【自律構造へ移行】


【世界間干渉制限】


【個体選択権保護】


次々と。


新しい仕組みが生まれる。


俺は。


それを見ながら。


小さく笑った。


「これなら」


「俺が管理者になる必要ないな」


「うん」


エリスが笑う。


その瞬間。


世界の外側に。


一つの道が現れた。


「……道?」


ノアが。


目を細める。


「違う」


「これは」


「帰る道」


「帰れるの?」


リナが嬉しそうにする。


「うん」


ノアが頷いた。


「でも」


「一つだけ」


「条件がある」


「何?」


「外側へ出た者は」


「元の世界に帰るまで」


「自分の『所属』を選ばないといけない」


「所属?」


ノアが説明する。


「世界」


「外側」


「どちらに属するか」


俺は。


少し考える。


俺は。


世界の外側を見た。


無数の世界。


始原管理者。


零番目の俺。


ノア。


ミラ。


アリア。


そして。


エリス。


「俺は」


俺は。


迷わなかった。


「世界に帰る」


【所属】


【世界】


【登録】


その瞬間。


エリスの胸にある世界核が。


強く輝いた。


「……蓮」


「どうした?」


「これ」


彼女が。


胸元を押さえる。


「世界核が」


「今までと違う」


俺は。


構造解析を使う。


【世界核】


【構造変更】


【旧:世界維持装置】


【新:世界接続核】


「……」


「これ」


「何?」


エリスが聞く。


「世界核が」


「世界を維持するものじゃなくなった」


「じゃあ?」


「世界と」


「外側を」


「繋ぐものになった」


その瞬間。


世界の外側に。


一つの扉が現れる。


だが。


その扉は。


さっきまでのものとは違った。


小さい。


古い。


そして。


何より。


見覚えがある。


「……これ」


俺は。


息を呑む。


それは。


地球で。


俺が暮らしていた家の玄関だった。


「なんで」


扉の前に。


小さな靴がある。


俺が昔履いていた。


スニーカー。


「……俺の?」


手を伸ばす。


しかし。


触れる直前。


【警告】


【第二記録への接続】


【現在の存在と過去の存在を混同しないでください】


俺は。


手を止めた。


地球での人生。


それは。


消えていない。


夢でも。


前世の記憶でもない。


確かに。


俺が生きた人生だった。


そして。


その扉の向こうには。


俺が死ぬ直前の世界がある。


「蓮」


エリスが。


静かに言う。


「行く?」


俺は。


しばらく扉を見る。


「……行かない」


「え?」


「帰る場所は」


俺は。


振り返る。


そこには。


エリスたちがいる。


「もう」


「こっちだから」


エリスが。


少しだけ目を見開く。


そして。


微笑んだ。


「そっか」


その瞬間。


地球の扉が。


静かに消えた。


俺の胸の奥が。


少しだけ痛んだ。


でも。


後悔はなかった。


そのとき。


零番目の俺が。


突然。


こちらを見た。


「……蓮」


「何?」


「一つだけ」


「まだ整理してないものがある」


「何だ?」


彼は。


俺の胸を指差した。


「君自身の」


「最後の記録」


「……?」


【第二記録】


【地球】


そのさらに下に。


今まで見えなかった文字が。


浮かび上がる。


【死亡記録】


【未完了】


俺は。


息を呑んだ。


「……未完了?」


零番目の俺が。


静かに言う。


「君が死んだ日」


「本当は」


「そこで終わるはずだった」


「でも」


「終わらなかった」


「七分前の干渉だけじゃない」


俺は。


顔を上げる。


「じゃあ」


「何があった?」


零番目の俺は。


答えなかった。


ただ。


地球の扉が消えた場所を見つめる。


そして。


一言。


「君は」


「死ぬ前に」


「もう一度」


「誰かを選んでいた」


「……誰を?」


その瞬間。


俺の記憶に。


一人の少女の姿が。


浮かんだ。


エリスと。


同じ顔。


でも。


エリスでも。


アリアでも。


ミラでもない。


名前すら。


思い出せない。


ただ。


その少女は。


俺に向かって。


笑っていた。


そして。


俺の手を握り。


こう言っていた。


『次は』


『ちゃんと見つけてね』


記憶が。


途切れた。


「……何だよ」


俺は。


胸を押さえる。


そして。


世界の外側で。


まだ誰も知らない。


最後の記録が。


ゆっくり。


開き始めた。

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