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整理整頓しかできない俺、異世界では世界の法則まで片付けられるようです  作者: ももにく


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第57話 捨てられた可能性


無数の世界が。


一斉にこちらを向いた。


まるで。


誰かの命令を待っているように。


「……何だよ、これ」


リナの声が震える。


アルベルトが剣を抜いた。


フェンリオスも。


低く唸る。


「蓮」


エリスが。


俺の袖を掴んだ。


「大丈夫」


俺はそう言った。


けれど。


自分でも分かっている。


大丈夫なはずがない。


目の前にいる存在は。


俺の【始原整理】を。


「返せ」と言った。


俺は。


そんなものを借りた覚えなんてない。


「一つ聞く」


俺は。


始原管理者を睨む。


「俺の【整理整頓】は」


「お前のものなのか?」


「そうだ」


即答だった。


「なら」


「どうして俺に渡した?」


「渡していない」


「……?」


「お前が」


「拾った」


「拾った?」


「そうだ」


始原管理者は。


俺の足元を指差した。


そこには。


一枚の紙切れが落ちていた。


拾い上げる。


そこに書かれていたのは。


たった一言。


『戻したい』


「……」


「それが」


「最初の整理だ」


始原管理者が続ける。


「世界が生まれる前」


「何もなかった」


「形も」


「時間も」


「生命も」


「存在すら」


「なかった」


「そこに」


「一つの願いだけが生まれた」


俺は。


アリアを見る。


彼女も。


黙って聞いている。


「誰かといたい」


「その願いが」


「最初の世界を生んだ」


「そして」


「世界は増えた」


「願いも増えた」


「命も増えた」


「だが」


始原管理者の声が。


少し低くなる。


「増えすぎた」


無数の世界。


無数の生命。


無数の願い。


無数の可能性。


それらが。


互いに干渉し始めた。


「だから」


「整理した」


「……」


「不要な世界を消し」


「不要な可能性を捨て」


「不要な願いを切り離した」


俺は。


眉を寄せる。


「それ」


「整理じゃなくて」


「削除じゃないか?」


「同じことだ」


「違う」


俺は即答した。


「全然違う」


始原管理者が。


俺を見る。


「なぜ?」


「不要かどうかを」


「お前一人が決めてる」


「それは整理じゃない」


「……」


「ただ」


「捨ててるだけだ」


空気が。


静かになった。


すると。


後ろから声がした。


「だから」


「僕は捨てられた」


振り返る。


零番目の俺だった。


「……お前」


「僕は」


「この管理者が作った」


「最初の可能性」


「世界を完全に管理するための」


「器として」


俺は。


目を見開いた。


「でも」


彼は。


笑った。


「僕は」


「管理したくなかった」


「……」


「世界を」


「見ていたかった」


「誰かが笑って」


「誰かが泣いて」


「誰かが間違えて」


「それでも」


「明日を選ぶ」


「そんな世界を」


彼の声が。


震える。


「だから」


「捨てられた」


始原管理者が。


静かに言う。


「必要なくなったからだ」


俺は。


拳を握った。


その言葉。


嫌いだった。


必要なくなった。


不要だから。


捨てる。


俺が地球で。


何度も見てきた言葉だった。


「……なるほど」


俺は。


始原整理を展開する。


【構造解析】


目の前の存在を。


細かく見る。


「お前」


「一つだけ」


「整理できてないぞ」


始原管理者の眉が。


初めて動いた。


「何?」


「お前自身だ」


俺は。


彼の構造を見る。


巨大な管理権限。


無数の世界との接続。


無数の削除履歴。


その中心に。


小さな欠損がある。


「お前も」


「何かを捨てたんだろ」


「……」


「いや」


「違うな」


俺は。


さらに深く見る。


「捨てたんじゃない」


「捨てられたんだ」


始原管理者の顔から。


表情が消えた。


「黙れ」


世界が。


揺れた。


無数の世界から。


大量の光が放たれる。


「蓮!」


エリスが叫ぶ。


俺は。


【境界整理】を展開した。


だが。


光は。


俺を攻撃しなかった。


俺たちの横を通り過ぎ。


始原管理者へ集まっていく。


「……何?」


始原管理者自身が。


驚いていた。


光の一つが。


彼女の中へ入る。


すると。


彼女の記憶が。


一瞬だけ見えた。


何もない場所。


一人の少女。


まだ。


始原管理者ですらなかった頃。


少女は。


一人で座っていた。


誰もいない。


何もない。


そして。


小さく呟く。


「……誰か」


その瞬間。


最初の願いが生まれた。


『誰かと、一緒にいたい』


「……」


俺は。


理解した。


始原管理者も。


最初は。


ただの一人だった。


世界を管理するために生まれたんじゃない。


寂しかったから。


誰かにいてほしかった。


その願いから。


すべてが始まった。


「お前」


俺は。


ゆっくり言う。


「本当は」


「世界を整理したかったんじゃないんだろ」


始原管理者が。


震える。


「……違う」


「じゃあ」


「何がしたかった?」


長い沈黙。


そして。


彼女は。


初めて。


泣いた。


「……終わらせたくなかった」


「え?」


「世界が増えるほど」


「みんなが離れていくと思った」


「だから」


「全部を」


「自分の管理下に置けば」


「誰も」


「いなくならないと思った」


俺は。


言葉を失った。


その願いは。


間違っていた。


でも。


醜いとは思えなかった。


「なら」


俺は。


手を差し出す。


「整理しよう」


始原管理者が。


顔を上げる。


「……私を?」


「違う」


「お前の中にある」


「その願いを」


「俺は」


「消さない」


「捨てない」


「ただ」


「元の場所に戻す」


始原整理が。


静かに光る。


すると。


始原管理者の身体から。


無数の黒い糸が。


ほどけ始めた。


管理。


支配。


削除。


独占。


それらが。


一つずつ。


分離されていく。


そして。


最後に残ったのは。


たった一つ。


『誰かと、一緒にいたい』


始原管理者が。


それを見つめる。


「……これが」


「私?」


「ああ」


「……小さい」


「最初は」


「みんなそんなもんだよ」


彼女は。


泣きながら。


笑った。


その瞬間。


無数の世界を覆っていた管理権限が。


消えた。


世界は。


自由になった。


しかし。


同時に。


警告が響く。


【管理権限消失】


【全世界の自律構造へ移行】


【上位管理者不在】


そして。


最後の一行。


【新たな管理者を選定します】


俺の目の前に。


無数の光が集まってくる。


エリスが。


俺を見る。


「蓮……?」


俺は。


嫌な予感しかしなかった。


そして。


表示された文字。


【候補者】


【蓮】


【選定理由】


【すべてを整理できる者】


俺は。


思わず。


ため息をついた。


「……またかよ」


すると。


エリスが。


俺の手を握った。


「今度は」


「一人で決めなくていいよ」


俺は。


彼女を見る。


その言葉だけで。


少しだけ。


肩の力が抜けた。


そして。


世界の外側で。


新しい選択が始まった。

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