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整理整頓しかできない俺、異世界では世界の法則まで片付けられるようです  作者: ももにく


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第39話 黒衣の男の正体


『お前が、私の願いを整理する番だ』


最後の文字が消えた。


地下施設は静まり返っていた。


「……願いを整理する?」


リナが不安そうに呟く。


「分からない」


俺も首を振る。


でも。


一つだけ。


気になることがあった。


「黒衣の男は」


俺はアリアを見る。


「この存在と関係がある?」


アリアは少し黙った。


そして。


「ある」


と答えた。


「やっぱり」


「彼は」


アリアが言う。


「始原外存在の分身」


「……分身?」


「正確には」


「この世界へ干渉するために切り離された一部分」


俺は頭を整理する。


「じゃあ」


「【分解】は?」


「彼に与えられた役割」


「役割……」


「外側から見れば」


「世界は、とても複雑」


アリアが指を広げる。


「魔力」


「生命」


「時間」


「感情」


「記憶」


「無数のものが重なっている」


「だから」


「外側の存在は」


「それを整理するために」


「二つの方法を作った」


俺は。


嫌な予感がした。


「一つが」


アリアが俺を見る。


「構造整理」


そして。


「もう一つが」


「分解」


「……」


「構造整理は」


「必要なものを残しながら」


「配置を変える」


「分解は」


「構造そのものを消す」


俺は黒衣の男を思い出す。


「だから、あいつは」


「自分では正しいと思ってる」


「うん」


アリアが頷く。


「彼にとって」


「消すことは」


「悪ではない」


「必要な処理」


「……」


「だから」


「お前を敵だと思っている」


「俺が邪魔だから?」


「違う」


アリアは首を振る。


「あなたが」


「彼の処理を否定するから」


「……」


俺は。


少しだけ理解した。


あいつは。


世界を壊したいだけじゃない。


「じゃあ」


俺は聞いた。


「黒衣の男の目的は?」


「世界を」


アリアは答える。


「完全な状態へ戻すこと」


「でも」


「そのために」


「不要と判断したものを消している」


「……」


「そして」


アリアは続けた。


「彼は」


「世界の中にある『願い』こそが」


「最大の不具合だと思っている」


「願いが?」


「はい」


「願いは」


「世界を変える」


「欲望」


「愛情」


「怒り」


「悲しみ」


「全部が」


「世界を不安定にする」


俺はエリスを見る。


「だから」


「始原の願いを」


「消そうとしてる?」


「そう」


アリアが頷く。


「エリスも」


「私も」


「そして」


アリアが俺を見る。


「あなたも」


「俺も?」


「あなたの中にも」


「始原の願いが残っている」


「……」


俺は胸に手を当てる。


何も感じない。


「どんな願い?」


アリアは。


少しだけ笑った。


「まだ」


「あなた自身が知らない願い」


「……」


その瞬間。


俺のスキルが反応した。


【始原整理】


【未確定構造を検出】


【対象:蓮】


【内部に未整理の願いを確認】


「俺の中に……?」


【願い】


【状態:封印】


【詳細:非公開】


「非公開って何だよ」


思わず声が出る。


リナが笑う。


「レンにも秘密があるんだね」


「俺だって知らないよ」


エリスは。


少し心配そうに俺を見る。


「無理に調べなくてもいいんじゃない?」


「……」


俺は頷いた。


「そうだな」


今は。


まだ知らなくてもいい。


でも。


そのとき。


アリアが急に顔を上げた。


「来る」


「また?」


「違う」


「今度は」


アリアの顔が。


強張る。


「黒衣の男」


地下施設の空気が。


一瞬で冷たくなった。


「……!」


壁に。


黒い亀裂が走る。


そして。


黒衣の男が現れた。


「久しぶりだな」


「……お前」


俺は構える。


「今日は何の用だ?」


「戦いに来たわけではない」


男は答える。


「なら何しに?」


男は。


エリスを見る。


「警告だ」


「警告?」


「三日後」


「この世界に」


「第四来訪者が来る」


アルベルトが剣を抜く。


「何者だ?」


「分からない」


男は答える。


「だが」


「私より危険だ」


「……」


俺は目を細める。


「お前より?」


「そうだ」


男は頷く。


「そいつは」


「何かを消すために来るわけではない」


「では?」


「奪うためだ」


「何を?」


男は。


俺を見た。


「始原整理」


「……」


「お前の力を」


「丸ごと」


「奪う」


俺は手を握る。


「どうして?」


「外側の存在が」


「お前を完全な形で必要としているからだ」


「完全な形?」


「お前が持っているのは」


「まだ一部だけだ」


男が一歩近づく。


「本来の【始原整理】は」


「世界の構造を」


「作り替える力だ」


「……」


「だから」


男は俺を睨む。


「お前が完全になれば」


「私の【分解】すら」


「整理できる」


「……!」


「つまり」


男が静かに言った。


「私を止められるのは」


「お前だけだ」


俺は。


少し驚いた。


「じゃあ」


「なんで俺に教える?」


男は答えなかった。


ただ。


去る直前。


小さく呟いた。


「……私も」


「消されたくはないからな」


黒い亀裂が閉じる。


男の姿が消えた。


俺はしばらく。


その場所を見つめていた。


「……あいつ」


リナが呟く。


「本当は」


「怖いのかな」


「分からない」


でも。


初めて。


黒衣の男の言葉に。


敵意以外のものを感じた。


そのとき。


【始原整理】


【新規目的を設定】


【第一目標】


【エリス・アストレアの完全復元】


【第二目標】


【始原外存在の目的を特定】


【第三目標】


【第四来訪者から権能を防衛】


俺は表示を見つめる。


「やることが増えたな」


エリスが隣で笑う。


「一人じゃないよ」


「……」


「私も一緒にやる」


リナも。


アルベルトも。


そして。


フェンリオスまで。


「グルル」


「……そうだな」


俺は笑った。


「じゃあ」


「まずは」


「エリスを完全に治そう」


その瞬間。


遠くで。


鐘が鳴った。


王都の警報。


そして。


空の向こうに。


一本の白い光が落ちてきた。


【第四来訪者】


【到着予定:72時間後】


【目的:始原整理の回収】


俺たちは。


その光を見上げた。

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