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整理整頓しかできない俺、異世界では世界の法則まで片付けられるようです  作者: ももにく


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第14話 王都と封印された少女


王都セレスタ。


街を囲む巨大な城壁を見上げながら、俺は呟いた。


「……でかいな」


「初めて見るなら、そうなるわよね」


隣でエリスが笑う。


「人、多い……」


リナも辺りを見回していた。


門の前には、商人、冒険者、旅人。


王都へ入るための列ができている。


俺たちも列に並んだ。


すると。


「身分証を」


門番に言われる。


エリスがカードを見せる。


「エリス・アストレアです」


門番の表情が変わった。


「アストレア……?」


「はい」


「失礼しました!」


門番が慌てて頭を下げる。


「どうしたの?」


俺が聞く。


「……言ってなかった?」


エリスが気まずそうに笑う。


「私、貴族なの」


「え?」


「公爵家」


「…………」


俺は固まった。


「公爵?」


「そう」


「公爵令嬢?」


「そう」


「最初に言ってよ!」


「言う必要ある?」


「あるだろ!」


リナが笑い出す。


「レン、すごく驚いてる」


「そりゃ驚くよ!」


森で出会った魔法学院の落ちこぼれ少女。


それがまさか。


公爵令嬢だったとは。


「でも」


エリスが小さく言う。


「私は家ではあまり期待されてないから」


「どうして?」


「魔力が少ないから」


その瞬間。


俺の頭に、あの封印が浮かんだ。


けれど。


今は言わない。


王都へ入る。


街は想像以上に賑やかだった。


魔法で動く馬車。


空中に浮かぶ広告。


魔道具を売る店。


冒険者。


魔術師。


色々な人が歩いている。


「面白いな」


「レン、キョロキョロしすぎ」


「だって異世界だぞ?」


「そうだけど」


俺は店先に置かれている魔道具を見る。


【対象:魔道具】


【状態:正常】


【魔力効率:72%】


「……」


「どうした?」


エリスが覗き込む。


「この魔道具、少し直せそう」


「直す?」


俺が触れる。


「整理」


魔道具が淡く光った。


【魔力循環を最適化】


【効率:72%→94%】


「……え?」


店主が叫んだ。


「な、何をした!?」


「え?」


「今、何をした!?」


「整理しただけだけど」


「整理!?」


店主が魔道具を見る。


「性能が上がってる……!」


周囲の人たちが集まってくる。


「何だ?」


「魔道具が強化されたぞ」


「誰がやった?」


「そこの少年だ!」


「……まずい」


エリスが俺の袖を引っ張る。


「逃げるわよ」


「なんで?」


「目立ちすぎ!」


俺たちは走った。


路地裏まで逃げ込む。


「はぁ……」


「疲れた」


「あなたね……」


エリスが呆れる。


「王都で魔道具の性能を勝手に上げるなんて」


「そんなにまずかった?」


「国家技術に関わる可能性があるわ」


「……」


「それくらい、あなたの力は危険なの」


俺は黙った。


最近。


自分でも少し分かってきた。


【整理整頓】は。


ただ物を綺麗にするスキルじゃない。


構造そのものを。


変えられる。


でも。


どこまで変えていいのか。


まだ分からない。


「レン」


エリスが優しく言う。


「怖い?」


「……少し」


「私もよ」


「エリスも?」


「あなたの力が、じゃない」


エリスが俺を見る。


「あなたが一人で全部背負おうとすることが怖いの」


「……」


その言葉に。


胸が少し熱くなった。


「ありがとう」


「どういたしまして」


そのとき。


王都の鐘が鳴った。


――ゴーン。


一回。


二回。


三回。


街の空気が変わる。


「何?」


リナが聞く。


エリスの顔が険しくなる。


「緊急警報よ」


「何があった?」


「分からない」


直後。


王都中に魔法による放送が響いた。


『王都民へ通達』


『北方魔力観測所にて異常を確認』


『原因不明の魔力濃度上昇を確認』


『王国軍は――』


放送が途切れる。


エリスが青ざめた。


「北方……」


「何か知ってる?」


「王国最大の魔力観測所がある」


「それが?」


「そこが壊れたら」


エリスは俺を見る。


「王都の結界が維持できなくなる」


「……」


俺のスキルが反応した。


【遠隔異常を検知】


【対象:北方魔力観測所】


【状態:異常】


【外部干渉:あり】


「また……」


黒い糸。


あの敵と同じだ。


「俺、行く」


「待って」


エリスが俺の腕を掴む。


「王都に着いたばかりなのよ?」


「でも、壊されてる」


「分かってる」


「だったら――」


「私も行く」


エリスが言った。


「……え?」


「王国軍だけじゃ間に合わないかもしれない」


「でも危険だよ」


「あなた一人よりマシでしょう?」


「……」


「それに」


エリスは少し笑った。


「私、自分のことも調べたいから」


俺は頷いた。


「分かった」


その瞬間。


空が暗くなった。


王都の上空。


巨大な黒い亀裂が開いている。


「……あれ」


リナが呟く。


黒い亀裂から。


何かが落ちてくる。


――ドンッ!


王都の中央広場に。


巨大な黒い結晶が突き刺さった。


人々の悲鳴。


魔力の爆発。


そして。


俺のスキルが表示した。


【緊急警告】


【世界外部からの侵入を確認】


【侵入地点:王都セレスタ】


【危険度:測定不能】


【管理者候補へ通達】


【敵性整理者が――】


表示が一瞬乱れる。


そして。


最後の一行だけが残った。


【あなたを探しています】


俺は空を見上げた。


遠く。


城の屋根の上に。


黒いローブが見えた。


あの男だ。


男もこちらを見ている。


そして。


口元だけで笑った。


「……見つけた」


次の瞬間。


エリスが突然、胸を押さえた。


「……っ」


「エリス?」


「痛い……」


彼女の身体から。


青白い光が溢れ始める。


「エリス!」


俺が駆け寄る。


【警告】


【封印構造が不安定化】


【解除率:3%】


「……封印が」


俺は息を呑んだ。


王都に現れた黒い結晶。


敵性整理者。


そして。


エリスの封印。


全部が。


同時に動き始めていた。

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