男女遭遇【99?】『神龍の花嫁』序章
《絶句》。
漢詩の詩体では、無い方の《絶句》。
言葉に詰まったり忘れたりした時の《絶句》。
つくもバーテンダーは、《絶句》した。
絶句させたのは、我女神。
正しい男の婚約者であり、光之女神。
神龍の花嫁となり、世界を革命する女神。
令和十四日目の出来事だった。
新しい女と、出会ったのは、皐月7日。
物怖じせずよく喋る女の子。
初対面だったが、すぐ打ち解けた。
つくも給仕者の正式名称は、憑喪【つくも】。
憑喪神が、由来となる乙女。
考古学を学ぶ学生でもあり、空手家でもある。
さらには、清楚系女志。
清楚を志す美少女給仕者。
おしゃべりが、好きで黙ってられない性格。
色々な事に興味を持ち実践する行動力もある。
元気あふれる期待の新給仕者。
姫様とお給仕日が、被り一緒に働く先輩後輩。
『おねえさま』と、清楚系で、先輩を慕う後輩。
まったりとした平和な時間と空間。
秘密基地は、人間社会と隔絶していた。
素晴らしき理想社会。
三名でお話しする機会に恵まれた。
宝物を、後輩給仕者に見せて説明する。
光の婚約者。
闇の婚約者。
夢幻王女。
奥方さま。
悪魔とヨメ。
et cetera。
綺麗、可愛い、と最初は、素直な感想。
だんだんと笑顔が、曇る。
やがて、顔を上げて睨む。
そして、問い詰めてくる。
「一夫多妻じゃないですか?」
「うきゅぅ(そうだね)」と、嬉しげに頷く。
「何人居るんですか?」
なんにんいるんだろう、と、頭の中で数える。
片手では、足りないが、両手でおさまる範囲。
さて、ここで考える。
一般常識的正義感あふれる少女にどう伝えるか?
アレコレ思い浮かべ脳内シミュレーション。
口を開こう、と、したその時。
横で見て聞いていた女神が、和やかに宣った。
「50人くらい」
(Fin)
あとがき
後日談 / 後日譚。
次の次の日、つまり二日後の令和十六日目。
婚約者同士で話をする。
「つくもちゃんフリーズしてたね」
「あれ?そうだっけ、どうしたんだろ、ね」
一昨日の出来事を振り返る。
思い出す光の婚約者。
『なんにんいるんですか?』
つくも後輩は、現在、居る人数を聞いたのだ。
それを彼女は、別の意味で受け止めた。
『何人要るんですか?』
必要なのは、どれくらい要るのか、と。
そのように解釈したからこその答えだった。
『50人くらい』
それには、主語が、抜けている。
『せかいをせいふくするために』
世界を征服し聖福にする為、必要なお嫁様仲間。
仲間の絆は、大事で大切。
婚約した時に、交わした言葉。
する前にも、した後にも、交わした言葉。
約束した言葉。
結婚とは、婚姻の結果に過ぎない。
婚姻とは、社会的承認を経た持続的な男女関係。
結婚や婚姻の約束が、婚約。
共同作業であり協働して何かをしていく約束。
契りを結んだ日は、四月四日。
内容は、革命による『せかいせいふく』。
全宇宙を、征服し、聖なる幸福な社会の実現。
そして、その革命は、三月二十五日に開始。
四月三十日に、革命宣言は、なされた。
日本橋革命倶楽部。
夢幻【謎の秘密組織】。
真少女革命。
ゑむぷろ【 M Project 】M 計画。
et cetera 。
それらを踏まえた上での『50人くらい』。
それには、絶句するしかない憑喪ちゃん。
知らないのだから、無理もない。
置き去りにして会話を楽しむしかなかった。
そうした二日前の話しを会話し楽しんでいた。
そして、彼女は、突然、立ち上がったまま言った。
「百人!
百人は、要るでしょう。
なんて懐の深い嫁でしょう。
自我自賛[画で無く我]、自分で自分をほめるぅ。
このシアワセ者め」
「アリガタキシアワセ」




