3
「ホントに、何度来てもつまらない執務室ですわ!」
「あはは……そ、そうですか?」
フルーさんに連れられて転移してきたサイラスさんの執務室は、それはもう清々しい位必要最低限だった。
私の執務室のよりは大きくはないけれど、どのみち立派な黒光りの机にびっしり本やら資料が詰められた本棚が3つ、あとは二人掛けのソファーが一つ。
そして、机の上にある大量の書類にはちょっと引いている。だって、あれその内私がしなきゃいけなくなるやつとかだよね?いや、今は………忘れよう。
「遊び心がないですわ!」
「さ、サイラスさんらしい執務室だと思いますよ」
「本人と一緒で堅苦しい部屋なんですわ、もうちょっと位何かしらあってもいいと思うんですの!私スイ様の執務室は絶対可愛くしたいですわっ!!」
「へ?ああいや、か、可愛くしてもらえるなら嬉しいです。楽しみにしてますね」
ぎゅうぎゅうと抱き締められながら、可愛い物なら歓迎だなぁと大人しくしている。……だってふかふかだし、いい匂いだし!
「そういえばサイラスさんって、いつ休憩とかしてるんですかね?」
「昔は殆ど休憩なんてしていませんでしたわ。ふふ、でもスイ様がお生まれになってからは随分休憩してますわね」
「そうなんですか?いつもピシッとスーツ着てキビキビ動いてて、休憩してるイメージがないんですよねぇ。私が何も出来ないから仕方ないんですけど、せめて早くこの城の中を覚えて、一人で歩き回れる位になって、ちょっとでもちゃんと休憩してもらいたいです」
まあ、私の物覚えの悪さは中々あれなので、サイラスさんには悪いがまだ先だろうと思うけども。
「あら、それは駄目ですわ。サイラスはスイ様と行動している時が休憩しているのと同義なんですもの、置いてきぼりだとあっと言う間に不機嫌になりますわ。この前みたいにちょっとお茶しただけで、それはもうぷんぷんされちゃいますもの」
「へ?」
サイラスさんは私に世話焼いてる時が休憩と同じらしい。…………休憩になっているんだろうか?
しかも、午後はこの大量の書類を捌く訳で。
私が呑気に演習場を走り回っていたりする時に、だ。
うん、何故だかとっても申し訳ない 。
「いやでも、私お世話になりっぱなしで休憩にはなってないんじゃ?」
「うふふふっ、スイ様の傍に居る時のサイラスは、とても楽しそうにしていますわ。スイ様がお生まれになるまでは、常に周囲を射殺さんばかりの眼差しでしたから。それはもう、畏怖されまくりですわ!恐怖政治ですわね!まあ、スイ様以外には相変わらず睨みをきかせてますけれど」
それがまた愉快なんですわところころと笑う様子に、とりあえずサイラスさんは楽しく私の世話をしてくれてるんだなと思う事にして、私も笑っておいた。
後、サイラスさんには、何かお礼をしようと決意した。あの書類の山の処理に私の世話なんて過剰業務過ぎるんだもの。私ならとても耐えられないブラックだ。……………あの書類は、そのうち私がやるんだよな。なんて考えは、見ない振りだ!そう、気付いてませんから!
「さて、この後はどう致しましょうか?」
「あー、そうですね、ええっと………どうしましょうかね」
はて、この後どうしよう。
でもこれ、案を出さないとまたサイラスさんの実家に………みたいな流れになるんじゃなかろうか?
かなり良くお世話してもらっているのに本人の知らない所で実家行くなんてあんまりだろうし、でもあれだ。私行きたい所って言うか、そもそも知らない所しかないわけで………。 うーん。
なんて悩みだしたら、私のお腹がぐぅっと訴えてきた。恥ずかしい。
「うふふっちょっと小腹が空きましたわね!そうですわっフツキに軽食を作ってもらいましょうスイ様」
「あ、はい。お恥ずかしながら、是非お願いします。お昼もしっかり食べたんですけどね」
「スイ様は、意識するしないに関わらずリバルデールの地に、民に、その魔力を与えていらっしゃるのです。魔力は使うと体内が活性化されるのですわ、私達も多く使った日は普段より食べますから、おかしい事ではありませんよ。むしろ、スイ様はそれでも少ないと思ってましたの!ですからきっと少しずつ、この地や身体に、慣れてきたという事だとおもいますわ」
なんという事だ。
お昼ですら、ちょっと食べ過ぎかなぁなんて気分で生まれて一番食べたのに……これからもっと食べるようになるの?
いやでも、フルーさんが少ない位だって言うんだからきっと、そんなぶくぶく太らない筈だと無理矢理に納得させた。運動は、ちゃんとしようと誓って。
「フツキ、何か軽食を作って下さいな。私もスイ様もお腹が減りましたの!」
「えーと、その、あはは、は…………」
下の階だから、転移じゃなく歩きで移動したのはいいけれど、調理室の中では皆さん忙しそうに動き回っているのも何のその、フルーさんは言い放っています。
扉を開くなり言ったので、私はフルーさんの後ろからそっと顔を出して、笑うしかなかった。
一瞬皆さん此方を見てから、また作業に戻ったのでヒヤヒヤする。邪魔してごめんなさいと言おうとしたら、調理室の奥からちょっと待ってろと声が飛んできて、フルーさんは慣れているのか早くしてねと腕組みしてます。それによりお胸がより強調されてて、美人で巨乳は凄いなぁと改めて認識し直した。
「待たせたな。スイ様も要るんだって?」
「そうですわ。今日は魔力を纏わせる訓練をしているから、余計に消費が多いんですの」
「ああ、成る程な。それなら少し量を増やしていくか……、夕食も品数を増やしてもいい頃合いか………あ、隣の休憩室で待ってろ。直ぐ作る。スイ様、食べたい品はあるか?」
「え?!あっその、フツキさんに、お、お任せで!フツキさんのご飯は全部美味しいから、決められないんですっ!」
食べたいものが咄嗟に出なくてあたふた言葉にすれば、フツキさんにもフルーさんにも頭を撫でられた。何故だろう?




