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会議室から見て回る事になりました。食堂が下の階なのでそちらからの方が効率的ではないかと思って首を傾げれば、今日は献立会議らしく一階の小会議室に居るのでそちらに来てくれとの事らしい。因みに、献立決めの日は一日吟味するらしく私の食事以外は休みらしい。……私のご飯も休みで良いのでは?執務室の横に小さいけどキッチン有るの知ってますから自分の分位は作れるけどなぁ。
「一階は10人程が入る小会議室が6部屋、20人程が入る中会議室が4部屋ございます。使用の際は部屋の前に部隊名の立て札を置きます、各部屋の中に使用者全員の名前を記入する冊子があるのでそこに記入する事も義務ですね。まあ、塔に入ると自動でスイ様の執務室にある中央塔管理の冊子に記録されますから再確認ではありますが。仮に誤魔化しを行うような事があれば、即座に別大陸へ転移されるようになっております」
「え、でも皆さん転移出来るんですよね?すぐ戻って来るのでは……」
「そこはきちんと対処していますよ、最重要区域での義務を放棄した訳ですからそのような輩は必要ありませんので、この大陸に二度と立ち入れぬよう魔力が変質する仕掛けを施しています。勿論、悪意を持ったり良からぬ事を企むような者も即、飛ばされますがこれは他大陸の者対策になりますね。まあ、この大陸の者には発動した事はないのであまり気にせずで宜しいかと」
中々にえげつない塔だ。魔力が命みたいな事言ってたし、魔力のない大陸から帰れないんじゃ死ぬしかないよね?いやまあ、危機管理は大事だけどね。発動した事がないなら『統治者』って肩書きはこの大陸の人にとってそれだけ必要不可欠な存在なんだろう。害を為そうと思う人は居ない位、大切なのだきっと。この大陸の者にはって所はまあ、そっとしとこう。私の精神衛生的によろしくなくなるのは嫌だし、うん。
そんな大それた者なんだなぁと他人事のように思ってしまう、私が出来る事とはなんだろう。最悪居るだけで良いみたいだけど、書類仕事だってサイラスさんに全て任せきりなんて嫌だし、リバルデールについて知らないまま暮らすのも無理だもの。ああ、そうするとやっぱり知っていく事が今は一番の仕事なのか。
まあどうにか、なるよね。多分。その内近くの街とか連れて行って社会科見学とかさせてくれるかな? 服屋さんとか雑貨屋さんとか見てみたい。雑貨屋さんって、見てるだけでも面白くて好きなんだよね。
「一番奥の小会議室にフツキや調理場連中がいるはずですので、参りましょう。」
雑貨に思いを馳せて意識を飛ばしてた、いけないいけない。それより会議中に申し訳ないけれど、あれだよね?訪問について話が通ってこの時間にと言われたのなら大丈夫だろう多分。よし手土産はないけど、悪い印象にならないよう努めよう。いざ、行かんっ笑顔プライスレス! こっそり笑顔の練習をしながら入り口から左右に別れた右側通路、突き当たりの会議室へ。
トントン、と軽やかにドアをノックするサイラスさんの横で、調理部隊献立会議中と書かれた立て札になんか演目みたいとちょっと笑えた。
「失礼、スイ様をお連れした」
「どうも初めまして、スイと言います」
サイラスさんに続いて会議室へ入り、軽く頭を下げてから挨拶をすると、左右に座っていた白いコック服の人達が立ち上がって挨拶を返してくれる。名前はまた次の機会にと、サイラスさんが言ってくれたのでちょっとほっとした。私あまり物覚え良くないので、その内名前リストでも作ろう。
握手を求められたのでお安いご用だと引き受けようとしたら、サイラスさんがフツキ隊長は何処にと手を差し出そうとしていた私の前にズイッと入ってきてコックの人達は少ししょんぼりしていた。いや、私も差し出しかけた手の行き場の無さにしょんぼりしているけどもね。
「フツキ隊長なら、始まりの森にメームの群れが来てるってんでミルク搾りに行きました!」
「昨日、スイ様をお連れすると言っていたんだがな」
なんだろう、私からはサイラスさんの背中しか見えないけどコックの人達の顔が青くなったのでサイラスさんどんな顔してるんだろうなと思ったけれど、コックの人達を見る限り聞かない方が幸せなのだろうな。
それより、メームのミルク搾りってなんだか響きが可愛い。モコモコしてそう、完全に私な中でメーム=羊みたいな感じになっているけれども実物ってどんなのだろう?




