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凡才剣士は死に戻りで最強に至る  作者: 結城 からく


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第1話 前編

 半壊した王都の街並みを、巨大な漆黒の竜が闊歩する。

 放たれた炎が城を一瞬で消し飛ばした。

 逃げ惑う人々は絶望に満ちた様子で叫ぶ。


「魔神が来たぞ!」


「死にたくねぇよぉ!」


「もう終わりだぁ! 世界は滅ぶんだ!」


 人々が少しでも竜から離れようとする中、その流れに逆らうように歩く男がいた。

 魔剣を握るその男は剣士リチャードだった。

 リチャードは竜を見上げると、気軽な声音で呟く。


「さて、やりますか」


 竜と接触した時計塔が倒壊した。

 降り注ぐ瓦礫に対し、リチャードは目視することなくゆらゆらと避けていく。

 一見すると不規則な挙動は、まるで瓦礫の命中しない位置を正確に把握しているかのようだった。


「よっ、ほっ、それっ」


 リチャードが助走をつけて跳躍し、竜の尻尾によじ登った。

 そこから背中へと一気に駆け上がっていく。

 翼が巻き起こす暴風を受けても、よろめきつつ疾走し続けた。


「うおおっとっと……」


 リチャードの動きは決して俊敏ではない。

 しかし絶妙なバランスを保つことで、転落することなく竜の顔付近まで上がっていた。

 もうすぐ肩に到達する位置でリチャードは再び跳躍する。

 ほぼ同時に竜が振り返り、大木のような腕が彼に襲いかかる。

 リチャードは素早く身体を翻し、爪と爪の僅かな隙間を潜り抜けてみせた。

 一歩間違えれば即死していたであろう回避を成功させても、彼に緊迫感はなかった。


「ふぅ、危ねぇ……」


 リチャードは暴風を背に受けて加速し、勢いを乗せた刺突を放った。

 魔剣の刺突は、竜の眼球に突き刺さる。

 刹那、刃から魔力が噴出し、竜の頭部を内部から破壊した。

 竜が断末魔の叫びを上げた後、地鳴りを轟かせながら倒れて絶命する。


 土煙にせき込みつつ、リチャードは竜の死骸から飛び降りる。

 彼は己の偉業を確認し、満足そうに頷いた。


「これで一勝と二億三千六百万七千十二敗だな。まあ、早めにいけた方か」

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