第11話:月夜の密談と、勇者の苦悩。……俺の技術が、平和を壊す?
【悲報】勇者警察、アヴァロンを「危険機体」に指定か?
501:名無しのポリス好き
おいおい、警察の公式サイトに「未登録の巨大ロボ(アヴァロン)への接触禁止」って出たぞ。
502:名無しのポリス好き
はぁ!? 何度も街を救ってくれただろ!
恩を仇で返すのかよ。
503:名無しのポリス好き
「技術の独占」ってやつか……。
上の連中、あの黒い機体が自分たちより強いのが気に入らないんだな。
***
深夜。人気のない湾岸の埋立地。
潮風が冷たく、遠くでパトライトの赤が小さく明滅している。
「……わざわざこんな時間に、呼び出した理由は?」
俺はアヴァロンを影に潜ませ、リュウジの待つ埠頭へと歩み寄った。
リュウジは愛機のジェイ・ガストの足元で、酷く疲れた顔をして立っていた。
「……すまない、カイト。君を巻き込みたくはなかったんだが」
「話が見えませんね。……ジェイ・ガストの不具合ですか?」
「……いや、機体(彼)は至って健康だ。君が以前、こっそり直してくれたおかげでな。
……問題は、人間の方だ」
リュウジは、一通の極秘命令書を俺に差し出した。
『プロジェクト・アヴェスター:未登録機体アヴァロンの強制接収、および設計者の身柄拘束計画』
「……警察庁の上層部が、君の技術を『国家機密』として管理することに決めた。
表向きは危険視しているが、本音は違う。……君の技術を兵器転用したいんだ」
俺は思わず、乾いた笑いを漏らした。
「兵器転用、ですか。……前世と変わらないな。
俺が静かにモノづくりをしたいだけなのに、連中はいつも『利用価値』でしか俺を見ない」
「……カイト。今夜、第1機動部隊が君の工場を急襲する。
私は……彼らを止めることができない。組織の命令には逆らえないんだ」
リュウジが拳を握りしめる。
その時、ジェイ・ガストの目が悲しげに光った。
『……カイト殿。リュウジは、君を逃がすためにここへ来た。
……たとえ、自分が反逆罪に問われようとも』
「ガスト、余計なことを……!」
「……リュウジさん」
俺は、この青年の真っ直ぐさに少しだけ胸が熱くなった。
「忠告ありがとうございます。……でも、逃げるのはやめました。
……エンジニアには、自分の造ったシステムを守り抜く責任がある」
「カイト、何を……!?」
「警察の上層部が、俺の技術を欲しがっているなら見せてやりますよ。
……管理不可能な『圧倒的な自由』というやつを」
その時、暗闇から無数のサーチライトが俺たちを照らした。
警察の最新鋭迎撃機『ケルベロス』が、3機。
「……ターゲット確認。リュウジ隊長、下がってください。
これより、不法占拠された機体の『回収』を開始します」
無機質なアナウンス。
どうやら、リュウジを囮にして俺を誘い出した連中がいたらしい。
「……アヴァロン。聞こえるか?」
『……いつでも、マスター。
セキュリティ・パッチの適用、完了しています』
俺は指を鳴らし、スマホの画面をスワイプした。
「……お前たちの『管理』なんて、俺のコード1行で無効化してやる。
——『ゼロトラスト・セキュリティ(信頼ゼロの防衛)』、発動!」
アヴァロンが闇の中から飛び出し、凄まじい衝撃波を放った。
それは攻撃ではない。
警察のシステムに「君たちの命令は正当な権限がない」と認識させる、究極のハッキング。
「なっ……ケルベロスの制御が効かない!?
通信が遮断されている……だと!?」
「俺を信じろなんて言わない。
だが、俺のシステムに触れるなら……それ相応の『認証代』を払ってもらうぞ」
アヴァロンの漆黒のボディが、月の光を反射して美しく輝く。
俺はこの夜、決めた。
組織に守られる「モブ」ではなく、組織を黙らせる「唯一無二のエンジニア」として。
この世界の理を、俺の手で書き換えてやる。




