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第1話:使い捨てエンジニア、鋼の魂を再設計する。

数ある作品の中から、本作を見つけていただきありがとうございます!

「勇者警察」のような、心を持つロボットたちが活躍する世界観が大好きで書き始めました。

ブラック企業でボロボロになったエンジニアが、異世界で「自分の造りたいもの」を徹底的に追求して無双する爽快感を楽しんでいただければ幸いです。

まずは第1話、漆黒の相棒『アヴァロン』の目覚めからご覧ください!

「——佐藤、お前はもういらないんだよ」


液晶画面の青白い光に照らされた、上司の冷え切った声。


三日三晩、エナジードリンクを流し込みながら書き上げたコード。

それを、無能な上司が適当に弄ってバグを出した。


その責任をすべて俺に押し付けて、彼らは笑いながら飲みに行った。


深夜のオフィス。心臓が泥のように重い。

俺の人生は何だったんだろうな。


壊れたら捨てられる、ただの部品パーツか。


ふらふらと外に出ると、冷たい夜風が頬を打った。

死ぬ勇気なんてなかった。ただ、どこか遠くへ行きたかった。


だが、駅に向かう交差点で、俺の目に飛び込んできたのは——。


「危ないッ!!」


赤信号。飛び出した小さな影。

ブレーキ音を鳴らしながら突っ込んでくる大型トラック。


体が勝手に動いたのは、エンジニアとしての本能だったのかもしれない。

致命的なエラーを見逃せない、あの悲しい職業病だ。


ドォン、と衝撃が走る。


子供を突き飛ばした反動で、視界がぐるりと回った。

熱い。痛い。……けど、少しだけ晴れやかだった。


(……もし、次があるなら。誰かに利用されるだけの部品じゃなく)

(……自分の設計で、誰かを、何かを守れる存在になりたい……)


意識は、そこで途絶えた。


 ***


「……おい、いつまで油の海で寝てやがる、カイト!」


怒鳴り声と共に、背中に硬い感触。

目を開けると、そこは前世の清潔(だが地獄)なオフィスではなかった。


巨大な重機の腕、飛び交う溶接の火花。

そして、テレビで見たことがあるような、パトカーを改造した「巨大ロボット」の足首が目の前に鎮座していた。


「ぼーっとすんな! 第五工区のボルト締めが終わったら、次は勇者警察の予備パーツの仕分けだ」


「お前みたいな下請けの『モブ』が、主役の足を引っ張るんじゃねえぞ!」


記憶が雪崩のように流れ込んでくる。


ここは、心を持ったロボット刑事が街を守る世界。

そして俺は、その華々しい主役たちを支える……どころか。

そのさらに下の、下請け工場の修理工「カイト」に転生していた。


(……夢じゃない。本当に、転生したのか)


鏡を見れば、そこには二十代前半の、作業服を着た精悍な青年。

この世界の技術体系は独特だ。


「超AI」と呼ばれる、まるで人間のような心を持つ人工知能が主役。

だが、この世界のエンジニアたちは、その「心」をブラックボックスとして扱いすぎていた。


(非効率だ……。この超AIの思考ロジック、無駄な演算が発生している)

(それに、この駆動モーターの配置。せっかくのパワーが熱で逃げているじゃないか)


前世で、ミリ単位の最適化と数万行のコードチェックを強いられてきた俺からすれば。

この世界のロボットは「美しすぎるが、ガバガバ」だった。


その日の夜。

俺は工場の隅にある、スクラップ寸前の「作業用旧型機」の前に立っていた。


会社には「ゴミの処分」と言って引き取った、ボロボロの機体。


「よし……始めるか。俺の、俺による、俺のための設計デザインを」


前世の社畜時代、唯一の癒やしだったロボットアニメへの情熱。

そして、この世界で得た「超AI」の基礎理論。


俺は、工場のジャンクパーツを一つ一つ吟味し、現代日本の精密設計思想で組み直していく。


一週間、寝る間を惜しんで作業した。

それは苦痛ではなかった。


誰かに強制された仕事じゃない。

自分の魂を込める、本当の「モノづくり」だ。


そして——。


「……おはよう、相棒。名前は……そうだな」

「俺の理想(理想郷)から取って、『アヴァロン』にしようか」


コンソールを叩くと、旧型機のモニターに光が灯る。


それは、警察庁が管理する「ブレイブマインド」とは一線を画す。

俺が独自にデバッグし、最適化した「超AI」の目覚めだった。


『……マスター。お呼びでしょうか? すべてのシステムはグリーンです』


感情はあるが、冷静。熱血すぎず、論理的。

俺が求めていた、最高の相棒だ。


そんな時だった。

工場の外で、けたたましいサイレンの音が響いた。


「速報です! 湾岸地区の建設用巨大ロボが暴走!」

「勇者警察のジェイ・ガストが現場に向かっていますが、苦戦を強いられています!」


ラジオから流れる悲鳴のようなニュース。


「……アヴァロン。初仕事だ。俺たちの性能、試してみるか?」


『了解しました、マスター。……あの非効率な警察機体たちに、真の「最適化」というものを見せてやりましょう』


ニヤリ、と俺は口角を上げた。


主役になるつもりはない。俺はただのエンジニアだ。

だが、俺の造った「最高傑作」が負けるところなんて、死んでも見たくない。


スクラップ工場のシャッターが、重々しく開く。

そこから現れたのは、パトランプも金色の装飾もない。


ただただ「合理的で美しい」漆黒の機体だった。


——この夜、後に「伝説の第三勢力」と呼ばれることになる影の主役が、静かに産声を上げた。

お読みいただきありがとうございます!

社畜エンジニアが趣味で世界を救う物語、スタートです。

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