ホムンクルスとゴーレム
「ここ……か?」
俺は思わずつぶやいてしまう。
「……ここで間違いないはずよ?」
エルがそれに応えてくれるが……。
目の前にぽっかりと開いた穴……そう、目の前にはただの穴しかないのだ。
「まさか、この穴の中が『拠点に適した場所』なのか?」
人一人が通るのがやっとという大きさの穴。中に入ればもう少し広いと思うのだが……中に入ってみなければ分からないとはいえ……。
「ないわ~。」
エルがうんざりしたように言う。
「戻って村の方に行きましょ?」
「あ、ウン……でも一応入ってみないか?ひょっとしたら、という事もあるし。」
本気でそう思っていたわけではない。ただ歩き疲れたから休憩したかった。今からあの距離を戻るのなんて勘弁してほしかった。
だけど、素直にそう言えない。男のプライドというのは厄介なものなのだ。
「まぁ……カズトがそういうなら……。」
「あぁ、まず俺が先に入るよ。」
「大丈夫?一応カウンターマジックは発動させておくのよ?」
「あぁ。」
そう答えるが、どうすれば発動するかなんてわからない。ただ、なんとなく、意識だけしておいて、俺はゆっくりと穴の中に潜る。
……真っ暗で何も見えない。
「真っ暗ね。さすがの私も見づらいわ。……『光よ(ライティング)!』」
何も見えずキョロキョロしていると背後からエルの声が聞こえ、程なくして、柔らかな灯が辺りを照らし出す。
「ひぃっ!」
つい悲鳴を上げてしまうが、無理もないと思っていただきたい。
照らされた穴の中、目の前には祭壇らしき朽ちかけた物体と、その周りに倒れている3人の少女?の死体があったのだから。
「っ!カズト、下がってっ!」
エルが警告を発する…。
「えっ!」
しかし、少しだけ遅かった。
エルの警告の意味に気づいたときには、すでに俺の身体は、死体だとばかり思っていた少女に捉えられていたのだ。
「クッ!」
俺が捕まってしまったため、エルも攻撃ができずに、謎の少女たちを睨みつけている。
「……アナタハ、マスター、デスカ?」
少女の一人が顔を近づけてそう聞いてくる。
「可愛い……。」
そんな場合ではないのだが、間近に迫った少女の顔は、超絶美少女であり、思わず見惚れてしまう。
「アナタハ、マスター、デスカ?」
再度問いかけてくるが、俺は少女に見惚れて上の空だった。だから、その問いかけにも、深く考えずに「うん」と頷いてしまう。
「カクニン……イタシマス……。」
少女はそう言うと、おもむろに俺の顔を抑え、そのままキスをする。
挿入された舌が俺の口内を蹂躙する……。
俺はそれに応えようとして………少女の体が離れ、俺の口が行き場を失う……うん、間抜けな体勢になってるの知ってる……。
「カクニン……トウロク……シュウリョウ……ゲンゴトウロク……イニシャライズ……最適化……完了……再起動シマス……。」
少女は何やらブツブツと呟いたかと思うと、突然動かなくなる。
全く動かなくなったのを見て、これは逃げ出すチャンスなのでは?と、俺はソロリソロリと、その場から離れようとしてみる。
ガシッ!
しかし、サイドに控えていた少女に肩を掴まれる。
「マスター、どちらへ?」
「ちょっと、アンタ、カズトを離しなさいよっつ!」
そこにエルが割り込んでくる。
「……あなたは?」
二タブ動き出した少女が、怪訝そうな顔でエルを誰何する。
「私は、カズトの……その……パートナーよっ!」
一瞬口ごもるが、それでもパートナーだと言い切るエルに感動を覚える。
今までの人生で、女の子にこんなこと言ってもらったことがあっただろうか?いや、ないっ!
「ぱーとなー・・・・・・相棒?番?……了承……失礼しました奥様。お名前をドウゾ。」
少女がエルに向かって首を垂れる。
「えっ、あ~……エルフィーネよ。エルフィーネ=ラスティア。」
「エルフィーネ様。了承しました。マスターの奥様として第二位の権限を解放いたします。つきましては、奥様にも、マスターの登録の許可を願います。」
「あ、ウン、いいわよ?」
「では……」
少女はエルの許可を取ると、徐に俺の顔に手を伸ばし、動かないように固定される。逃れようとするも、両脇を二人の少女に抑え込まれていて動けない。そしてs目の前の少女が顔を近づけ……再びキスされてしまった。
少女の舌が俺の口内を蹂躙する。
エルとは、また違う舌遣いに、俺の理性は吹き飛び、その少女に襲い掛かりたい衝動に駆られる……が、両脇を少女たちに抑え込まれているため、身動きが取れずにいた。
少女による俺の口内への蹂躙が続く。
「ハッ、あんた何しているのよっ!」
突然の事に呆けていたエルが、ハッと我にかえり、俺と少女の間に割り込んでくるが、その時はすでに少女は俺から離れていた。
「登録完了。これよりカズト様をマスターとシテ最上第一権限を譲渡いたします。何なりとご命令を。」
そう言って俺の前に跪く少女三人。いったい何がどうなっているのだろう?
◇
「この娘たちはホムンクルスね。」
祭壇に設置してあった拳大の魔晶石を調べながらエルがそう口にする。
「はい。私は、ここのダンジョンを管理をするために創られた、メインパーソナライズオペレーターエーアイのMAIです。そして、そちらにいるのが、ガーディアンアシストのMEIとパーソナルアテンダントのMIIです。」
少女たちの中心にいたMAIがそう紹介すると、両脇にいた二人の少女がぺこりとお辞儀をする。
MAI……マイの話によれば、MEI……メイの役割は戦闘関連、主にこの場所を守る守護者的な役割を担っているという。わかりやすくするためなのか、メイの姿はバトルドレスに身を包んだ女剣士となっている。
それに対して、MII……ミィの役割は、マスター…つまり俺の、日常のお世話係という位置づけらしい。まぁ、メイドみたいなものか……というよりメイドさんだな。
マイやメイと同じ顔をしたミィは、長い髪を大きなリボンでポニーテールに結わえ、ミニスカートのメイド服に身を包んでいた。
そしてそれらを含め、ダンジョンを総合的に管理、アシストをするのがマイということらしい。そんな彼女の姿は、なぜか和風の巫女さん姿。緋袴がよく似せたミニスカートになっているあたり、何者かの作為を感じるのだが……ってか、ここダンジョンだったのか。
と、そんなことより……
「なぁ、ホムンクルスって……アレか?」
俺の知識にあるホムンクルスは、人工的に作られた魔道生命体というものだけど……。
「アレってのが何を指すのかわからなけど、ホムンクルスは魔法……正確に言えば錬金術で生み出された人形よ。」
「人形?ゴーレムみたいなものか?」
バキッ!
俺がつぶやいた途端、メイの足元にひびが入る。その手にはいつのまにか大剣が握られており、その剣先が地面にめり込んでいる。先程の音は、地面にめり込むときのものだったらしい。
「マスター。訂正を。私たちを下賤なゴーレムと一緒にされては困ります。」
マイが笑顔でそう言う……笑顔だけどとても怖い。
「わ、悪い。俺は何も知らないんだよ。よかったら教えてくれないかな?二度と間違えないためにもさ。」
ガクブルしながらなんとかそう言ってみる。そんな俺を、「バカね」というように呆れた目で見ているエル。
そんなところで見てないで助けてくれよぉ。
俺の無言の訴えが届いたのか、エルがそばに来て背後から抱きしめてくれる……うん、少し落ち着いたよ。
「ではマスターのために少しお時間を頂きます。」
そう言ってマイによる、ゴーレムとホムンクルスについての講座が開かれることになったのだった。
ホムンクルスは文官で、ゴーレムは脳筋の武官、作者は分けています。
他には、ホムンクルスはコストも時間もかかるけど、ゴーレムはコスパがいいとか。
このあたり、人によって考え方が色々あるのでしょうねぇ。
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