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魔女の呪いで男を手懐けられるようになってしまった俺  作者: ウミガメ
第4章 魔女の館と想いの錯綜
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地下1階 (1)

「……イッテェ」


最初に感じた感触は『冷たい』だ。

固い、石の上で寝ていた。


―――気を失ってばかり、だな。


先ほどの出来事を思い出す。

突然、大広間の床が抜け落ちて。


―――それから?


「みんなは……」


辺りには誰の姿もなく、1人残されていた。

後ろを振り向くと、そこは鉄の柵で前面を覆われた牢屋の中、だということが分かった。


「閉じ込められている……のか? そうだ!」


左腕についた腕輪を見ると、そこには真ん中に赤い石が埋め込まれていた。


「よかった……ちゃんとある」


それから胸にしまった魔女のペンダントを探る。

こちらも無事にあるようだ。

ペンダントを顔の前に掲げ、睨む。


「おい、どういうつもりだよ」



―――しかし応答はない。


冷たい牢屋のなかは静寂のまま。


どうやら本当に答える気はないらしい。

俺は諦めて、周りを調べることにした。


牢屋の扉を触ると、抵抗もなく動く感触があった。

ガラガラと音を立てて扉が開く。


「なんだ、開いてる……」


拍子抜けして牢屋の外に出ると、そこは狭い廊下だった。

廊下の突き当りには、先ほどとは違う、真っ赤な扉があった。


そういえば、落とされた―――という点で、ここはこの建物の地下なのだろう。

冷たい石づくりの床と壁、それからこの真っ赤な扉。


「なんだか不気味だなぁ……」


扉に手をかけようとして、先ほどの出来事、そして魔女の言葉を思い出す。

(この城の中には様々なワクワクする罠やおもちゃがたくさんあるからね☆ 楽しんでね☆)


「ワクワクって……絶対ヤバいだろ」


これまでの魔女の言動からいって、ろくでもない仕掛けがあるに違いない。


―――用心していくしかない。


真っ赤な扉に手を掛け、ノブを右に回すとガチャリ、と音がした。


―――扉を開く。


その瞬間、すっと冷たい風が全身を撫でた。

開いた扉の先、直ぐに視界に入ってきたものは―――灰色の大きな壁、だった。


「な、んだ……ここは」


目の前に広がる壁はゆうに自身の身長の3―――いや、4倍以上の高さがありそうだった。

その壁がずっと横にも広がっていて、人が2人並べばぎちぎちになるような狭い通路が続いていた。


「……少し歩いてみよう」


扉を出た地点から、道は左右に続いていたため、まず右に進んでみた。

天井の高さから考えると、先ほどの狭い牢屋とは違う、恐ろしいほど巨大な空間かもしれない。


こんなものを魔女は用意して、一体何が目的なのだろうか。


そんなことを考えていると、右、中央、左と3方向に道が分かれていた。

俺は迷った挙句、そのうちのまた右を選んで進むと、そこは行き止まりだった。


「これは……もしかして迷路、か」


どうやら、ここは地下にある大きなフロア―――巨大迷宮のようだ。

みんなも同じように別の牢屋に入り、違う地点からこの迷路に入っているのだろうか。


とすれば、魔女は話し合う余地を与えず、参加者5人全員を分断したいのかもしれない。

また全員で会うことはできないだろうか。


―――いや。


この秘密を守るためには、俺は誰よりも早く魔女に会わなければならない。

そのためには、みんなの石を奪い、一番先に4階までたどり着かなければならない。


―――まずは上に行こう。


とりあえず上がれば、先ほど居た大広間まで戻れるかもしれない。


「せめて、上る階段がどの方角かわかれば……」


しかし目の前の壁は高く、様子を確認するにも、よじ登れるレベルの高さではない。

空でも飛べれば話は別だが―――


―――と、その時、後ろで何かが『ゴゴゴ……』と音を立てて揺れる音が聞こえた。


「……なんだ?」


嫌な予感がして、後ろを振り向く。


―――何が起きているのか、一瞬気付かなかった。


後ろにあった灰色の壁が、気づけばズンズンと近づいてきていた。

それは着実に近づき、はっとした時には目の前に迫っていた。


「……え?」


その瞬間、考える間もなく走り出していた。


―――嘘だろ!?


あの灰色の巨大な壁は一瞬で目の前に迫っていた。

おそらく物凄いスピードだろう。

後ろを振り向いて確認したいが、おそらくその余裕はない。


―――もしも。


―――もしも、この状況で、行き止まりに当たったらどうなる?


行き止まりで成す術なく、目の前の壁が迫ってきたら。


自分の身体が ”押し潰される” 想像が頭に浮かぶ。


―――痛い?


ゴゴゴ……


後ろで壁の迫る音がする。


―――頭は割れる?


ゴゴゴゴゴ……


―――それとも、感じる前に意識を失う?


ゴゴゴゴゴゴ……


―――そんな都合の良いはずがない。





”グシャッ”





自分の身体が潰されるような感覚が過った瞬間―――天地が、ひっくり返った。



―――躓いた?




ゴゴゴ……




(こんなところで死ぬのか?)



自分の手のひらには、冷たい地面の温度があった。



―――思わず、目を瞑った。















ガッ―――と音がして、壁の迫る音が止む。




「……え?」



目を開き後ろを振り返ると、モフモフの毛が目に入った。

そう―――そこには、迫りくる壁を両手で抑えるラルフの姿があった。


「ラルフ!?」



―――どうして?


―――こんなタイミングで、俺のところに?



「……ケモノは、鼻が、効く、んで……なァ!!!」


そのまま、ラルフは壁を勢い良く押す。

直ぐに手を放すと、反対方向に向かって走り出した。


そして俺の左手を掴んだ―――かと思うと、フワッと宙に浮く感触があった。


―――担がれた!?


ラルフは俺を担いだまま走り出す。

全身の毛が、ラルフのドスドスという足音と共にユサユサと揺れる。


―――そういえば、前にもこんな事があったような。


「ラルフ……ありがとう」


俺が声をかけると、必死なラルフの顔が、チラリとこちらを向く。

そしてすぐに前を見ると、身体を曲げ左に方向転換した。


「オメェを守る……って、そう、言っただろ」


そう言って、俺の方は見ずに小さく微笑んだ。


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