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婚姻から五年経った今、アラミスはフランチェスカとそれなりに親密である。
新たに誕生した男児は、髪も目の色も……背中のアザまでアラミスと同じだった。
意外にもアラミスは子煩悩で、マルグレーテと生まれたばかりのクリストファーを可愛がっている。
一方で、未だペリーナを大切にしている。
我が子と過ごす時間、国王から引き継いだ政務は年々増えてきている。
それでも週に一度はサンバートン伯爵家に顔を出している様子。
それについてフランチェスカと話し合ったことは一度もなかったが。
ペリーナの方は相変わらず、アラミスからの愛を疑いもせず受け取っていると報告を受けている。
サンバートン家の離れに住まいを与えられ、時折訪れる『恋人』を待っているのだ。
王妃が言ったように、まさに愛人のような立ち位置である。
(次の子が男の子だったとしても、アラミス様が予定していた五年では側妃奏上への条件は整わないわ)
二人目の男児が誕生するまで、すぐに身籠ったとしても──最短でもあと二年ほどは掛かるのではないかしら。
あと二年とすると、同じ年齢のペリーナは二十五歳。
フランチェスカに二人目の男児がなかなか授からなければ、もっと待つことになる。
今から更に五年、フランチェスカが身籠らないか、二人目の男児を産まない限り条件が整わない。
過去には例外として政治的な思惑で他国の姫を迎え入れた記録はあるけれど、ペリーナは国内貴族の養女なので特例には当てはまらない。
(今手放せば、サンバートン伯爵令嬢としてどこかに嫁げるかもしれないのに……アラミス様はそうしないでしょうね)
貴族令嬢が年を取れば、結婚相手の条件はどんどん厳しくなっていく。
二十歳を過ぎれば尚更である。
いずれは後添いの縁談しか来なくなるのは目に見えているのに、呑気なことだ。
(ああ、でも王太子のお手付きなのは知れ渡っているから……若い貴族との婚姻は難しいかもね)
下手につついて面倒なことになるのは嫌なので、あの二人はこのままゆっくり袋小路まで歩いていけばいい。
◆
クリストファーが二歳になろうかという時期、フランチェスカは三度目の懐妊となった。
王太子妃として文句の付け所がない振る舞いをし、使用人にも無体なことを言わないフランチェスカを悪く言う者はいない。
少なくとも、表立って何か言われるようなヘマはしていない。
側近に遅くまで仕事をさせる時期にはその夫人や婚約者へ『ちょっとした贈り物』を欠かさず、周囲にいる人間は公平に大切に扱った。
もちろん、その周囲にいるのは善意の者だけではないのも承知のうえである。
敵対派閥から送り込まれた侍女もいたし、国王からの監視を請け負っている侍従もいる。
そんな者たちにも分け隔てなく接する。
婚姻から七年が経過したが、アラミスと喧嘩をしたこともない。
尤も、それはフランチェスカがアラミス個人にさほど関心がなかったからでもあったが。
長男のクリストファーには、フランチェスカ自身が師事した教師陣を配している。
才色兼備、温厚で慈悲深いフランチェスカの希望に国王夫妻も夫も異を唱えることはなかった。
音楽教師は王妃の師事した音楽家を。
武道に関しては国王が推した教師にお願いしてあり、両陛下の顔も立てている。
アラミスは、君がいいと思うようにしたらいいと一見理解あるようなことを言ったが、実際はフランチェスカに丸投げである。
(こちらの思惑どおりよ。アラミス様を育てた教師はちょっと遠慮したいもの)
クリストファーはもうじき二歳だが、陛下のつけた老練の騎士が体力作りと称して庭を駆け回らせている。
剣を持たせるのはまだまだ先です、と言う老練の騎士の言葉にフランチェスカも賛成だ。
教育も身体も、まずは土台作りからだ。
同じ理論で育てられたマルグレーテは五歳になった今、体幹も安定し、どんどん知識を吸収していっている。
(子どもたちは王族らしく育てなくてはね)
危険物を取り払った中庭で、マルグレーテとクリストファーが追いかけっこをしているのを眺め、フランチェスカは隣に座る王妃とにっこり微笑みあった。




