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数日後、フランチェスカは婚約者と学園内の食堂で昼食をとっていた。
国王陛下の意向でそう決まったのだ。
卒業までの三ヶ月間はペリーナ嬢との接触は避け、フランチェスカと過ごすようにと。
「ペリーナ嬢のこと……全面的に否定されなくてよかったのではありませんか?」
「ああ。君の家の評判もあるからね、僕が浅慮だった……卒業までの三ヶ月は君を優先するよ」
「それがよろしいかと存じます。生徒会は代替わりしていますが、まだお手伝いされているのでしょう?」
「うん。手が回ってない雑用くらいだけどね」
「でしたら今まで通り、殿下は生徒会室でペリーナ嬢とお会いになれるのですもの」
「そうだな。ペリーナもそれで納得している。君には迷惑がかからないよう振る舞うよ」
フランチェスカは笑顔で殿下を見つめ、小首を傾げた。
「それで、卒業後のペリーナ嬢のお立場はどうなさるおつもりですの?」
「うん、僕としては側妃にと考えているのだが……」
「側妃、ですか」
やはり殿下は気軽に考えていらっしゃる様子。
長い目で見たら、そう気軽な手段ではないはずなのだけれど。
側妃となると、ペリーナ嬢を捨て置くことはできなくなる。
(強制退場以外にも、いくらでもやりようがあるというのに……本当に殿下は人を疑うことをなさらないのねぇ……)
「だって一度公妾や愛妾にしてしまったら、側妃には出来なくなるからね」
「殿下。側妃になさる場合、私が男児を二人産んでからになります。あと……五年ルールに関しては、我が家は白い結婚は容認しておりません」
「うん、婚約条件はちゃんと読んでるからわかっているよ。条件が整ったら奏上しようと思ってる」
「そうですか。であれば、ペリーナ嬢を寵愛なさるのは問題ありませんわ」
「君がそう言ってくれて助かるよ」
殿下は嬉しそうに呟き、フランチェスカに笑顔を向けた。
「ペリーナ嬢の養子先は殿下が決められますか? まだ決まってないのでしたらヒューストン侯爵家の寄子の伯爵家などいかがでしょうか」
「ああ、側妃は伯爵家以上の家格が必要だからか……確かにそういうのは早めがいいな」
「ええ。サンバートン伯爵家でしたら、すでに成人した嫡男がいらっしゃるし、裕福で領地も王都から近くていいと思うのですけれど」
「何故サンバートンを?」
「我が家の寄子であれば、私の庇護下だと周囲が思うでしょう? サンバートン夫人は私の乳母でしたし、ペリーナ嬢を守るには最適かと」
「……なるほど。君が認めていると周知できるということか」
「ええ。心ない攻撃から多少は守られると思いますわ」
「なるほど。……前向きに検討しておこう」
◆
殿下は愚かではないが、私を見誤っているわね。
数週間後、フランチェスカは溜息をつきながら思索に耽っていた。
(サンバートン伯爵家との養子縁組は済んでいると報告はあった。あとはそこで暮らしている間に処置をすればいいだけ)
ペリーナを排除しないのは、私が優しいからではない……あくまでも自分のためだけである。
下手に騒ぎ立てて周囲に侮られるのは避けたい。
彼女にも私が絶対的味方だと思っておいてもらわなければ。
殿下もペリーナ嬢に対しておおらかな私を信頼しきっているし、私が無茶をしない限り揉めることはないはずだ。
(そうね、どうすれば違和感なく子断薬を飲ませられる状況が作れるかしら……)
サンバートン家にペリーナ嬢が住むようになったのは計画通り。
報告書によると、ペリーナ嬢は遠慮がちではあるが馴染んでいるらしい。
夫人の言葉を借りると、王家に関わるならばマナーは学び直しというレベル。
使用人にも親しげで、あまり貴族令嬢らしくはないとある。
「下準備は順調だけれど、どうしましょう」
あの家はヒューストン家に絶対的忠誠を誓っているし、なによりカレンの母であるサンバートン夫人がフランチェスカの乳母なのだ。
カレンと一緒に頻繁に行き来しているから、動きやすく動かしやすい。
(ヒューストン家、サンバートン家に疑いの目を向けさせず、苦い薬を飲むのが妥当となる状況が望ましい……)
「ふふっ、貴族は貴族らしく……ね」




