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偏在の理想ボーイ幻覚の普通ガール  作者: キャボション
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「大丈夫か?」

「はい、大丈夫です」

俺は小銃弾の飛んできた方向に数発撃つとガとグの唸り声を出し、倒れる音も聞こえた。それを合図に戦闘が始まってしまった。地下通路の横幅およそ10メートル。距離おそらく数キロメートル。広さとしては申し分ない広さだ。敵の数は数十人、装備は典型的なテロリスト。そこまで辛くは無いだろう。こちらには世界最強の特殊部隊の隊員もいるし俺たちだって素人という訳じゃない。

俺の予想は見事に当たった。乃木の先制攻撃に始まり、俺の援護射撃。椎名の爆発物によるサポート。そしてエディの全体的な実力の高さにより、文字通りテロリストたちを蹴散らしていった。だが、テロリストたちは次から次に俺たちを食い止めようとしてきた。

「キリが無いぞ!」

「乃愛ちゃん!どうする?」

「わからん!」

そんな会話をしていると椎名が俺たちに簡易的なガスマスクを渡してきた。

「着けてください!」

俺たちがガスマスクを装着したのを確認すると椎名は赤いばつ印の付いた容器を地面に叩き付けた。容器が壊れると黄色い煙がモクモクと出てきた。ガスマスクを付けていないテロリストたちは煙を吸った順から次々と倒れていった。俺たちはそれを見ながら目的地へと走っていった。

「椎名、あの容器はなんだったんだ?」

「毒ガスです」

「毒ガスだと!条約違反じゃないのか」

エディはやけに大声で椎名に指摘してきた。確かにABC兵器の使用は禁止されている。それに毒ガス兵器はABC兵器の代表選手だ。

「エディさん。極秘機関がそんなことを気にすると思いますか?あくまで私の意見ですが、そんなことを気にしていたら任務は達成出来ません」

エディはハッとしていた。確かに今まで表面の常識で生きていた者が裏面の常識を知ったら驚くのは普通の反応だ。驚かないほうがおかしい。

「そろそろ外しても大丈夫ですよ」

俺たちはガスマスクを外した。外した瞬間、視界が一気に開き、呼吸もしやすくなった。解放感と同時に毒ガス兵器の恐ろしさも感じた。

しばらく進むと頑丈そうな扉が現れた。扉の横には電子ロックが取り付けてあり一筋縄ではいかないというのが分かる。

「私の出番ですね」

「椎名、この電子ロックだったらどのくらいで開けられるんだ?」

「数分あればいけます。久遠さん」

椎名はリュックから小型のパソコンのような装置を取りだし操作し始めた。

「久遠、スパイってことは防弾の傘とか持ってるのか?」

「いや、そんなのは存在しない。基本的に撃たれないからな」

「エディ、乃愛ちゃんが撃たれるわけないじゃん」

「乃木、俺が撃たれない保証なんてどこにも無いぞ」

「私が乃愛ちゃんを守るんだよ」

「いや、逆だ。俺が乃木を守る」

ひとしきり乃木といちゃついていると椎名が俺たちを呼んだ。扉のロックを解除したようだ。

「久遠、せーので開けるぞ」

「分かった。せーの!」

重い扉をこじ開けるとまず目に入ったのは白衣を着た男たちの死体だった。その光景に驚いているとやけに聞き覚えのある声が聞こえてくる。その声の主は俺の脳を久遠乃愛の体に入れたあの医者だった。

「何故こんな事を!」

ある男が医者に拳銃を向けていた。拳銃を持った男の服には黒猫のパッチが付いている。この拳銃男、黒猫部隊の人間だ。

「君たちの要望通り私はアラハバキを作った!どうして!」

男はその質問に答えず、医者を撃とうとした。

「待て!」

俺はそう叫び、男の拳銃を撃ち抜き続けざまに男に向かって撃ったが避けられた。そしてその男は片言の日本語でこう言った。

「オ前、こロす」


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